梅の前を素通りできない。
それも、地元産で安かったら最低5kgは買ってしまう。
毎年こうやって後先考えずに大量買いするものだから、梅によって重くなった買い物袋のひもが肩にくい込んで痛いため、普段なら歩ける距離なのにバスに乗るはめになるのだ。
毎年同じ。今年はとくに葉山産の梅が安かった。出回る時期も早かった。梅干しを作ったことがある方はご存知かと思うが、梅のへたを取り除いてから塩で漬け、4〜5日後に梅から水分が出てきて塩と馴染み、「梅酢」が出来上がる。梅酢があがってくる、という言い方をするが、今年はほんとうにあがってくるのが早かった。
赤紫蘇を求め、市場のおばちゃんに畑のようすを聞いてみたところ、「まだだねぇ。何? ジュース作るの?」と聞かれたので、「いいえ、もう梅酢があがってきちゃったの」と答えたら、そのおばちゃんはほんとうに困ったように「そっか、もうあがってきちゃったんだぁ。」と哀れむような視線をわたしに注いだ。
なんだかわたしはすごく自分がかわいそうな気がして、「また来ます!」と逃げるようにその場を去った。
今年の梅干しは赤くしなくたっていいか! と思う瞬間だったけれど、やっぱりわたしは赤い紫蘇の香りがする梅干しが好き。じっと、紫蘇の成長を待つことにしよう。
梅干しの他に、青梅のカリカリ漬け、梅ジュース、梅酒を仕込んだ。梅酒はホワイトリカーは使わず、米焼酎と黒糖焼酎で漬けた。どちらも砂糖は三温糖。米は3年以上ねかせたほうがおいしいらしい。黒糖はさとうきびが原料なのでラム酒風味の梅酒に仕上がる。夜な夜な子どもが寝た後、たんたんと梅の実の下ごしらえをする幸せ。
梅の極上の芳香に包まれながら、あらゆる瓶が梅で満たされる。この季節ならではの大切な仕事。
根本きこ
フードコーディネーター |



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