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雑貨屋店番日記 根本きこ
vol.22「水牛の角のカトラリー」
fromヴェトナム。黒くエナメルのような光沢が、いっけん漆? と見間違うが、実は水牛の角なのでした。違いは光を通して見ると分かる。うっすらと透ける感じが、まるで色の濃いサングラス。このカトラリーの印象はなかなか大人っぽい。
ヴェトナムで、ちょっと田舎に行けば水牛に逢える。田んぼのあぜ道を、のーんびりのしのし歩く姿は、ほんとうにのどかな昔から変わらないであろう風景。すげ笠をかぶった農民たちの傍らで、ゆっくり草をはみながら、身体につきまとううっとうしい蠅を尻尾で払いながら、そうして牛は、たまにその巨体を力任せにぶるるっと震わせる。そんなのんびり牛さんの角を頂いてカトラリーをつくった。一にも二にも大切に使ってください。角は丈夫そうだけど、実は熱に弱い。熱湯で洗ったり、ぐらぐらの湯の中でかき回したりすると駄目なのです。たちまち変形します。やっぱり自然のものだから、強い衝撃にはもろいのです。それを承知して使ってください。
スプレッターはディップやジャムを塗るのに便利。スプーンはヨーグルト、プリン、杏仁豆腐、アイスクリームなどの大好物に、他にもドレッシングを混ぜたり、子ども用のスプーンにしてもいいかと想います。口当たりが滑らかなので、きっと子どもにも気に入ってもらえるはず。レンゲも同じように各種大好物や、定番の冷や奴に。この水牛の質感は、和食、洋食、中華、エスニックなんでも合います。形がオーソドックスなので、使いやすさはもちろん、飽きもこない。角の使った部分によって、色が濃かったり薄かったりするのもなんだか特別な感じがしてしまうのだなぁ。このカトラリーを買っていくお客さまの年齢層は実に幅広い。それぞれの食卓でどんなふうに使われるのだろう、と想像するのが、店番のたのしみなのですよ。プラチナグレイのシルクシャツが上品なミセスは、きっとエルメスかジノリとかの食器を合わせるのかしら? レイヤー(重ね着)でガーリーなかご持った女の子。彼女はアスティエとかアラビアとかに合わせるのかしら? 絣のワンピースが似合う素朴な女性は読谷村や出西窯などなどの民芸の器に合わせるのかしら? そんな空想を巡らせては、勝手に大きく膨らませ、「いいねぇ」と唸るのだった。

根本きこ
フードコーディネーター




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