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雑貨屋店番日記 根本きこ
vol.9「電気スタンド、シェード」
電球は白熱灯のクリア球。印字の具合が気に入っているのは、ジェネラル・エレクトリック社の電球。以前、NYでたくさん買ってきたのだが、いよいよもって在庫が切れそうだ。消耗品が底をつく恐怖。誰か、近々NYへ行くことないかしら? 店では電気はかかせない。灯りはその空間をよりよく見せてくれる、にくい演出家だ。にくいなぁ。自分の顔も、蛍光灯の灯りの下より白熱灯のほうが、何倍もよく映る。たまに、出先の化粧室の鏡の中に映る自分に、ぎょっとするのは、日頃見慣れてない灯りのせいなのか、手入れを怠っているせいか、とにかく冷や汗もの。そんなふうに、無駄に寿命を縮めないためにも、電球の選択は事欠かない。電傘、シェードは、とにかくぼろいものが好き。街はずれの作業場で長年使っていたような、錆と煤でやられてしまっていればいるほどいい。ワンカップが似合いそうなシェード。黒ぶち眼鏡が似合いそうな電傘。高度成長期の日本を照らし続けたスタンド・・・。このまま妄想の世界に入り込んでしまったら、読んでいる方が踵を返してしまいそうなのでこの辺で。そんな使い込んだ電傘をどこで見つけるかと言いますと、錆び錆びの琺瑯の傘はなんと始めからここについていたもの。ここは元お寿司屋さん。それも50年続いた老舗だったそう。繁盛期には24時間営業だった、というのだから、その頃の活気といったら逗子でも名を馳せていたに違いない。弟子入りの板前さんもたくさん住み込んでいたとか。そんな様子を一途に見つめていたこの電傘。何度も何度も新しい電球を迎え、その都度その灯りを調光したに違いない。まさしく電傘翁。親しみを込めて「おじいちゃん」と呼ぼう。その他の電傘は、葉山の桜花園(*)で買ったガラスのものや、前出のNYは電気屋街の路上で拾ったもの、サイゴンの骨董通りでねぎったもの、等々。どれも好き。壊れても直して使う。わたしはこの作業も好き。電気コードをナイフで切って、中の電線を細く撚(よ)って、碍子やスイッチなどにつなぐ。ラジオペンチ片手に没頭だ。すべての工程を終え、いざコンセントに差し込む瞬間・・・。ああ、至福。ぽわっとついた電球は成功の賜物だ。たまに感電もするけれど、くじけず再びtry。電気は豊かさの象徴、とかつては呼ばれていた。現代は、むしろ環境を考えて、たまには電気を消してろうそくを灯そう、というかけ声もかかる。もちろん賛成。生活に工夫をしながら、これからも電気と末永くつきあっていきたい。
*桜花園:葉山にある古材屋さん。材木の他にも古道具も扱う。月曜定休。

根本きこ
フードコーディネーター





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