産んでまもなく、わたしはいちにち1回は店の様子を見に、赤ん坊をスリングにいれてcoyaに来ていた。こんなふうに毎日coyaに行くなら、何かcoyaで出来ることはないかな? とカウンターで珈琲をすすりながら頭をひねっていたところ、徐々に増えつつあった子連れのお客さんの姿が目に飛び込んできた。
昼間のオープン、それにわたしの出産を機に、赤ちゃん連れや妊婦さんだったりと、以前とはちょっと違う客層が増えてきた。そもそもそのときは、雑貨屋を作るつもりはなく、そんな赤ちゃん連れの方のために、coyaの奥を開放したらいいのではないか、と思った。そのスペースでは、おむつ替えや授乳が出来る。わたしに子供が産まれなかったら、こんな場所は到底作ることはなかっただろう、と思う。
経験された方はわかると思うが、なかなか人前での授乳は気が引ける。今ではすっかり慣れたけれど、産んでまもない頃はとてもやりづらかった。隠すあまりおかしな体勢で授乳して、後からむちうちみたいになることもしばしば。なにはともあれ赤ん坊にとって、おっぱい=ごはん。かかすことの出来ない生命の綱、みたいなもの。外出先のレストランで、ひとつしかないトイレでの授乳。いつ次の人が入ってくるかわからない。心持ちそわそわとしながらあげるおっぱいの味ってどうかな? と渋る。そんな肩身が狭い思いは結構つらかった。だからって、外食を我慢するのもつらい。日常からほんの少し抜け出して、ゆっくりとお茶が飲みたいなぁ、と思うお母さんたちは多いのではないだろうか。それによほどのことがない限り、赤ちゃんが泣きやまない、ということは少ない。お腹が空いた、おむつが濡れた、のぐずりにうまく対応すれば、赤ちゃんの機嫌が損なうことはまずない。赤ちゃんスペースといっても、ソファとカゴがあるだけの部屋。スタッフの休憩にも使うので、かしこまって「ベビースペース作りました!」とは言いづらいけれど、ないよりはいいかなぁ、と思った。coyaに於いてのわたしの仕事は、ベビースペースに案内する雑貨屋の店番。ややこしいが、そんなとこ。ベビースペースの隣で雑貨屋を作ったら、そこで日がな赤ん坊をあやしながら店番出来る。いいアイデアが思いついた! と主人に話し、それからが早かった。壁に漆喰を塗り、ドアをつけ、棚と作業台を作った。場所が出来たら次は置くもの探し。常々「いいなぁ」と思っていた、若手の作家さんにコンタクトをとったり、旅先で買ってきたものを引っ張り出したりして、なんとか形にはなってきた。うちの赤ん坊、そのとき5ヶ月。抱っこしながら雑貨屋オープンの日を迎えた。もうひとりの店番、つるちゃんも8ヶ月の赤ちゃんのお母さん。「どお? つるちゃん店番出来そう?」と聞いたら「出来るよー」と頼もしい返事。こうして始まった雑貨屋なのです。かなりのんびりとやっています。お近くにいらした際にはどうぞゆるみに来て下さいね。
根本きこ
フードコーディネーター |



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