

「女による女のためのR−18文学賞」でデビューした新進気鋭の作家・吉川トリコさんによる、思春期(高校生・大学生)の少女たちをテーマにした短編集が発売された。大人と子供の間のほんのひととき、ダサくて退屈で、それでもキラキラ輝いていた、かけがえのない日々が描かれている。
一生処女でいようね!と誓った腐女子(男性同士の恋愛を妄想して楽しむ女子のこと)たちのサークル「処女同盟」。「彼氏ができたから」という、仲間たちの突然の脱退宣言によりひとりぼっちになった途端、「自分は処女のまま一生を終えるのではないか」という不安に苛まれ……。表題作『「処女同盟」第三号』は、声を出して笑いながらも、妙に共感してしまうところがありました。
「高校生のころ、私もやはりこのお話の主人公たちのように漫画が大好きで、二次元の男の子たちに夢中になっていました。私の場合、やおいには走らず超マジに恋愛モードで、ある意味、やおい少女よりやばい子だったんですが……(笑)。
高校を卒業してから、元同級生たちがなんだか妙に色気づきはじめて、ずっと男の子に興味のなかった子まで“コンパコンパ”とか言い出して、“えー! ちょっと待って!”と置いてきぼりをくらったような気持ちでいました。その経験がこの作品には活きているかもしれません。
それからいわゆる腐女子と呼ばれているやおい少女たちと知り合う機会もあって、彼女たちはなんというのか、とても乙女なんです。カフェやファミレスに行くと、まっすぐはじっこの席に向かって“オタクは隅のほうにいなきゃね”とかいう(笑)。慎み深いというのか、身の程をわきまえているというのか、すごくすてきでかわいいなあと思って。いつかやおい少女を主人公にしたお話を書いてみたいと思っていました」
高校最後の学園祭。過去を振り返れば、実際には何も起こらないと悟ってはいるのだけれど、それでも“何か素敵なことが起きるんじゃないか”と期待してしまう女子高生たちを描いた「夢見るころはすぎない」。吉川さんご自身は、どんな高校生でしたか? 今でも高校生に戻りたい!と思いますか?
「漫画に夢中で、『エヴァンゲリオン』を毎週録画して観ていたような子でしたが、まわりのみんなには、目立ちたがり屋のお調子者だと思われていたんじゃないかなあ。そのくせ “自分は他のやつらとはちがう”と思い込んでいるような、ほんとバカな女子高生(笑)。
はたから見れば楽しそうに学校生活を送っている生徒として見られていたかもしれないけれど、私もいつも“何か”が起こるのを待ちわびていました。
高校生に戻りたい! とは積極的には思わないけれど、もし戻してもらえるなら、今度こそ楽しみたいな、と思います。次回はもうちょっと、恋愛方面に力を入れたいです(笑)」
乙女の憧れであるクラシカルホテルへ念願の卒業旅行に出かける大学生の女の子2人を描いた「一泊二日」。この「一泊二日」に出てくるホテルは、実際に吉川さんも訪れたことがあるそうですね。
「エッセイストの甲斐みのりさん主宰の『Loule』という雑貨ブランドが、日光の金谷ホテルをプロデュースすると聞いて、友だちと“行ってみたいねえ!”なんて話してたのがきっかけです。そのときはまさかほんとに泊まりにいけるなんて思っていなかったので、予約を入れる段になってドキドキしました。うそみたいー、ゆめみたいー、と。いまだにゆめみたいな旅だったと思います。
日光金谷ホテルはほんとにすてきなところなので、この本を読んだ方にもぜひ訪れていただきたいな、と思います」
このお話では、思春期の女子特有の微妙な友情感覚が描かれていますね。友達の持ち物を何でも真似してみたり、それをされると心の中でちょっとウザイと思ってしまったり……。
「思春期のころってほんとに不思議で、仲のいい子とおそろいでなにかを持つことに甘い喜びを感じる反面、それがいきすぎてしまって、なんでもかんでも真似されると急にうっとうしいものに感じてしまうようになる。どちらかを肯定したり否定したりという書き方はしないようにしました。
あの頃の女友達との付き合いは、今よりずっとべったりしていて、濃密でした。それがいいか悪いかは別として、もう二度とあんなふうに誰かとすごすことはないのだなあと思うと、なんだかしんみりしてしまいますね」
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