天然コケッコー s-woman.net special interviews そよのお父ちゃん役&お母ちゃん役 佐藤浩市&夏川結衣 interview 1「若い共演者たちの姿に、ニヤニヤほのぼのしていました(佐藤)」

過疎の村で暮らすヒロイン・そよ(夏帆)を見守る父親・右田一将役を演じた佐藤浩市さんと、母親・右田以東子役を演じた夏川結衣さん。1時間にわたる対談形式のインタビューから、おふたりのこの作品への想いや、若い共演者への温かいまなざしが伺えました。

――子供たちというか、若い共演者のみなさんの印象は、いかがでしたか?

佐藤 印象って変わっていくものなんですよ。最初から印象がいい子なんて誰も求めてないし、おもしろくもなんともないわけです。それが撮影を重ねるうちに、他の子供たちや大人たち、撮影する場所やいろんな物に影響されながら、顔が変わっていくんですよね。たとえば、夏帆ちゃんが自分の身の丈で、役に自分自身を投影させて役と対話する。その正直な気持ちをフィルムの中で灯してることが、映像にも映るんだろうなあって感じました。それが刹那的なものだということは、いずれ彼らもわかってくるだろうと思うんです。僕たちはすでにわかってるので、映画の中で“そよ”になりきっていた夏帆ちゃんが、作品から離れて現実の彼女に戻ったときに、“あれは刹那的な何かだったんだ”って、気づくんでしょうね。

――夏帆さんに、何かアドバイスをされたりしたんですか?

佐藤 何もないですよ。それは、彼女と山下監督との関係の中で生まれてくるものだと思うし。僕たちはお父さん、お母さん役なので、一緒に食事に行ったときに、ちょこちょこっとしたことは言いましたけどね。具体的に「ああしろこうしろ」って話じゃなくて、自分たちの経験の中から「こういうこともあるし、ああいうこともあるよ」って話して、あとは美味しい焼肉を食べました。でも、それはコミュニケーションであって、アドバイスではないですね。

――夏川さんは、衣装合わせのときにスクール水着にホットパンツ姿の夏帆さんを見て、「若さと清々しさと危うさが、まぶしかった」と完成披露試写会の舞台挨拶でおっしゃってましたよね。撮影のときは、お母さんの目線でご覧になっていて、いかがでしたか?

夏川 私が撮影に入ったときは、夏帆ちゃんの撮影が先行していたので、すでに衣装合わせをしたときとは顔が違ったし、最後の日なんて、なんの不安もない顔つきでしたね。

――撮影中のエピソードで印象に残ってることは、どんなことですか?

夏川 私は島根ロケしか参加してないんですけど、とにかく最近ではあんなにじっくり撮る監督は珍しいってぐらい、山下監督はじっくりお撮りになる方ですね。時間がゆっくり流れていくんですけど、それが全然腹が立たないというか(笑)、無駄に時間が流れているのではなく、充実してるような気がして居心地が良かったです。

――監督の役の捉(とら)え方と佐藤さんの捉え方が少し違っていた、と伺いましたが。

佐藤 監督とは年代が違いますからね。僕は、他の仲がいい監督とも役の捉え方が違うことはありますよ。そういうもんなんです。役をどこから見るか? というアングルが違うわけだから、お互いにどうすり合わせていくか、ということです。役の捉え方が違うことが問題なんじゃなくて、捉え方の違いを埋めていけるような歩幅をお互いに持っているかどうか? なので、そこは監督の捉え方とうまくすり合わせていきました。

――山下監督のこだわりを感じたところは、どんなところでしょう?

佐藤 助監督経験が無いことがいいとか悪いとかじゃなくて、資質として彼は映画の監督なんですね。まだ若くて、映画を5、6本しか撮ってないかもしれないけど、もう立派に映画監督なんだなっていうのが、芝居に対する愛情や、現場で我々を見る中に感じられたので、お任せできる部分もありました。
たとえば、僕たち夫婦がどういうモチベーションで日常生活をしているか、そこで彼女の見逃し方や、僕が彼女に対してどれくらい頼ってるか、っていうのは、ある年齢を経て感じられるものと、想像の中の部分では違うので、それをお互いにすり合わせるんです。“なるほど、監督は、そっちがやりたいのか!”って。

夏川 私も、たとえば、お父さんと美都子さんが一緒にいるところを見ちゃった後の食卓で、監督はどういうふうに演じるのを望んでらっしゃるのか聞きました。今、浩市さんもおっしゃったけど、それで“あっ、そっちがやりたいのね”って思えば、それに自分が乗れるかどうか、ですよね。もし“私はそれはできないわ”って思うなら、話し合いを求めるし。でも、今回は基本的にお任せしました。

――演じたキャラクターに共感できる部分はありましたか?

佐藤 僕は東京しか知らない人間だし、生活感としてはまったくかけ離れてる部分があるじゃないですか。だからキャラクターとはまた違うんですけど、ちょっとだけ早く現場に入って、現場の空気感などから、“この風景を見ながら、生きてきた人なんだ”って意識していきました。撮影現場の空気や食べ物を自分に刷り込ませることで、僕自身と役がうまく描けたと思います。

――撮影現場で若い役者さん達を見ていて、いかがでしたか?

佐藤 おもしろさと、確実に自分たちもここを通ったよなっていうことを、ちゃんと復習させてくれました。初々しさとか、自分の若い頃を投影するわけじゃないけれども、何かニヤニヤほのぼのしちゃうっていうのは、ありましたね。

――夏川さんも、若い役者さんたちを見ていて「考えさせられることがあった」と舞台挨拶でおっしゃっていましたが……。

夏川 あんまり自分の中学生時代を振り返ったりはしたくないんですけど(笑)、彼女が監督と話し合いながらやってるのを見て、“はぁ〜、考えさせられるなあ”って思いました。私も夏帆ちゃんみたいに、こういうふうにやれば良かったのかなあ、とか。

佐藤 厳しい監督が多かったからね(笑)。

夏川 そうなんですよ(笑)。私も最初の作品で、あんなに優しくコミュニケーションを取ってくれる監督に当たりたかったって、うらやましい気持ちです。それと、彼女は私が通ってきた道は通らずに行くけれど、どちらがいいかというのは、これから先、何をやっていくのかと、自分が何をやりたいと思うか? ってことですよね。何が正しいとか間違ってるとかじゃなくて、そのときのことで結論は出ないんです。夏帆ちゃんを見ていて、漠然といろいろ考えさせられましたね。

佐藤 ふっふっふ。そうなんだよね。まさに彼女が言ったとおりで、売れるとか売れないとか、正解だとか結果がどうなのかとか、何が正しいのかはわからないんです。それは彼らにも話したと思うんだけど、「遠回りするのを後悔してはいけないし、その中で拾える正解があるかもしれない。決して近道はないよ」ってことなんですね。自分で上手いことこうすればよかったと思うことがあったとしても、違うやり方をしたからといって、間違いではない。いろんな勘違いや間違いをしながら、ただともかく前を向いて歩くことができれば、いずれはいい形になるんじゃないかと思うし。

――夏帆さんや岡田くんに、直接そんなことをおっしゃったんですか?

佐藤 メシ食いながら、そんな話をしたかなあ。酒飲んでたから覚えてないや(笑)。

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