「レストラン カー・ウント・カー」 その他
ハプスブルグ家の饗宴を楽しむ
日本で唯一の本格的オーストリア料理
2008年10月17日
溜池から程近い路地の中に、オーストリア国旗が翻るお店があります。それが、この「カー・ウント・カー」。若干32歳の神田真吾シェフは、日本人として初めて、オーストリア国家公認キュッヘンマイスターの称号を得ました。この試験、かのフランスのMOFよりむずかしいといわれ、試験期間は約半年。素材の仕入れや食材の知識はもちろん、レストランの経営学までの幅広い知識が必要です。しかも、何歳でトライしてもいいのですが、一生に一度しか受験できないという超難関です。

ハプスブルグ家といえば、かのマリー・アントワネットもこちらの出であります。従って、フランス料理の源流を見るお料理の数々を楽しむことができるのです。オーストリア料理と聞いて、すぐピンと来る人はまだ少ないでしょう。私も初めてこちらに伺ったときにはどんなものが出てくるのか興味津々でした。

さて、今回は、1Fのレストランフロアではなく、地下にあるワインセラー付の個室を予約。6名くらいまでのパーティが可能で、サービスには2名が付きっ切りになってくれます。この日のメニュー、まずは、チーズにアーモンドなどをあしらった軽いビスケットが3つ。食前にいただいた「ゲッサー」というさわやかなビールとよく合います。アミューズは、「ゲミューゼ ライプヒェン」という球体状にした野菜を揚げたもの。トマト、ニンジン、玉ねぎを使った鮮やかなオレンジ色のソースといただきます。続いて、「バインシンケン」と「ロウエンシンケン」という、燻製ハムと生ハムです。神田マイスター独自のレシピで、1ヶ月かけて作られており、塊を目の前でカットしてくれます。

前菜は「ロイヒャー リンドフライッシュ」。これは、燻製した牛肉のいちぼをカルパッチョのように薄切りにしたものです。「ズュースセンフソース」というちょっと甘めのマスタードソースでいただきます。中央には山羊のチーズムースが添えられ、とても繊細な仕上がりで、舌の上でとろけます。スープは、「ウィーナーリンドズッペ」。丁寧に作られた典型的コンソメスープの中央に、荒挽き小麦を卵で固め山に見立てた浮き身が浮かんでいます。スープの液色そのものは濃い目ですが、お味はむしろあっさりしながらも深いコクがあります。シェフの腕のみせどころです。最近、フレンチでもめったに、こんなに手がかかったコンソメにお目にかかれなくなりました。

お魚は、「ゲプラーテネ フェルヒェン」という信濃雪鱒のソテーです。ディールと細かいパン粉をお魚の皮に見立てて塗ってあります。細工の細かさに驚嘆です。かぼちゃのピューレが敷かれ、周囲には、かぼちゃのシードオイルを泡だてたソース。典型的オーストリアのシードオイルソースを泡立ているのが神田マイスター流です。

お肉は、「ゲフュルテ ヴァハテルン」。栗をペースト状にしたものを鶉に詰めてローストしたものです。ジロール、トランペット、ネストピルツと3種の茸のソテーが秋らしいです。この鶉、とても大きく、なおかつジューシー。私がこれまでいただいてきた鶉の中で最も美味でした。お皿の中に秋の景色が広がります。

デセールの前に、このお店で、はずすことができない、名物フロマージュをいただくことに。貴腐ワインを染み込ませて熟成させた、希少価値の高いブルーチーズ、「クラッハー・グランド クリュ」。専用の大型ココットで供され、専用ナイフで削ぐようにカットしていきます。なんとも芳醇な味わいです。最後を飾るデセールは、「トプフェンシュマーレン」。トプフェンというチーズのパンケーキです。杏のラグーを添えていただきます。

ちなみに、ワインは、「ユルチッチゾンホフ ソービニヨンブラン 2005」(白)、「アキラ」2005とオリジナルの「アキラ」2003(赤)をいただきました。もちろん、すべてオーストリアのワインです。セラーの中もすべてオーストリアワインのコレクション。まだまだ日本では珍しいものばかりです。

神田さんのお料理は、アミューズがフルートとすると、弦楽器、打楽器が徐々に加わってくるオーケストラのようで、ひとつひとつの繊細なお味が重なりあって、最後に壮大な世界に引き込んでくれる物語のようです。まさに、ハプスブルグ家の伝統そのものです。ちなみに、神田シェフ自身、ハプスブルグ家の貴公子のようなイケメンです。
text: Kumi Kiyomoto
DATA
レストラン カー・ウント・カー
東京都港区赤坂1-4-6
TEL: 03-3582-6622
OPEN:11:30〜15:00(13:00 L.O) /
18:00〜23:00(20:30 L.O)
ランチ¥5,040〜 ディナー¥9,350〜
http://www.zuckerb-kuk.com