
マット・デイモンは、ハリウッドでいちばん活躍してる若手かもしれない。ジョニー・デップ、ブラッド・ピット、キアヌ・リーブスなどのスーパースターたちが、もう40代半ばになってしまった今、彼らの後を継ぐトップランナーと評されている。この3人ほど世界の女性を騒がす甘いルックスではないが、才能は誰もが認めるところ。隣のおにいさんふうなルックスがかえってアドバンテージとなり、ハンサムボーイズには声がかからなかった"とっても変な普通の人"役を独り占めして楽しんでいる感じもする。

『インフォーマント!』(12月5日公開/ワーナー配給)で演じる役もその一種。アメリカのトップ50に入る、とうもろこしや大豆を扱う大企業ADMの重役、マーク・ウィテカーが価格操作を内部告発した実話がもとになっている。勇気あるFBIへの密告者になったこの人物は、実は精神的に問題ありの人物だった。彼の2年間にわたる密告のおかげで証拠が揃いスタートした裁判の結果、ADMに100億円の罰金が、集団訴訟ではさらに400億円を支払う命令がくだされたのに、悪事を告発したヒーローであるはずのマークがいちばん長い刑期を言い渡されるという、世にも不思議な物語に発展していった。人の良さそうな普通の男の、「ええっ!?」っと驚く理解しがたい言動が、スティーブン・ソダーバーグ監督の鋭い人間奇行観察の目を通して、笑える風刺コメディに仕立て上げられている。

──特徴のないごくごく普通のオジさんタイプの役だけに、役作りが難しかったのでは?
「スティーブン(・ソダーバーグ監督)に、目立つことは何もするなと言われた。彼はマーク・ウィテカー本人の写真をもとに、ブヨッとした外見、いつ本当のことを話し、いつ幻想の中にいるのか周りにはわからない虚言癖キャラを作るのが、この物語の鍵だと決めたんだ。それで、特徴のないメタボな普通人になるために、僕は30ポンド(約14kg)体重を増やし、動きや歩き方まで"フツーの感じ"を出す研究をしたんだ」
──30ポンド増やして、また減量することに恐怖を感じませんでしたか?
「増やすのってけっこう簡単なんだよ。ところが減らすのはものすごく大変だった(笑)。11歳の娘(奥さんの前の結婚の子供)が"MATTY-FATTY"(太っちょマット)ってニックネームをつけてくれてね。今でもそう呼ばれてるんだ(笑)」
──太っちょマットになったための笑い話とかはありますか?
「イヤー、実はね、もう撮影も終わってだいぶたった頃に、久しぶりにスーツを着たんだ。やけに食い込んだ感じで、袖丈とか短い。2〜3着トライしたが、どれもキツイ。妻にクリーニングでスーツが縮んでしまったみたいだと言ったら、そんなはずないでしょうって。おかしいなあ、おかしいなあと思案投げ首した結果、ピーンときたんだ。ジョージ(・クルーニー)のいたずらに違いない!ってね。彼なら誰かを送り込んで、スーツを小さいものにかえてしまうくらいやりかねない。絶対ジョージのいたずらだと確信してるよ。いずれこのお礼はするつもりだよ。絶対にね。今度ジョージにあったら僕が仕返し作戦錬ってるから気をつけろって言っておいてね(笑)」

実はすでにジョージ・クルーニーはこの件、聞いてあった。マットのスーツ縮めたの?って。ジョージはワハハと大笑いして、「真実はこうなんだ。マット・ファミリーとドン・チードル一家が、この夏、イタリアの別荘に10日間くらい滞在したんだけど、マットは減量のためにサラダばっかり食べてるんだよ。バカバカしいだろう? イタリアに来て食べないなんてさあ。だから僕の家で働いてる裁縫のできる女性に、マットのスボンの腰回りを毎日少しづつ小さくしてもらったんだよ。サラダしか食べてないのに体重が減らないって彼は焦るだろうからね(笑)。やったのはそれだけだよ。神に誓ってそれ以上はしてない(笑)」
ということだったのでした。
──病的な嘘つきの役ですが、あなたは嘘というものをどう見てますか?
「親しい人に嘘をつかれたら破壊的な影響を受けるね。僕は人を疑うより信じるほうを選んでいるから。スティーブンは、生きることには嘘が必要であると、冷静だけどね。実は、僕はマーク・ウィテカーという人物を嫌いじゃないんだ。彼の知人はみんな、嫌いにはなれなかったと言っている。虚言癖は精神的な症状だから、治療でコントロールできる。彼は現在ある会社の重役として現役に戻って仕事をしてる。底抜けにポジティブな人で、そのへんが僕がひかれるところなんだ」
──深刻な嘘をつかれた経験は?
「仕事面ではあるよ。ハリウッドだからさ(笑)。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97年)のときに、ある監督が裏であの手この手で僕をクビにしようとしてたんだ。でも、あれはベン(・アフレック)とふたりで書いた脚本で、僕が主役をやることが製作の条件だった。その監督は、僕を切り離すことが法律的にできないと知って手を引いたんだ。で、電話をしてきて"この映画の監督はできなくなった。きみと一緒なら無理してでもやりたかったよ"だって。これっていかにもハリウッドらしいだろう?」
と笑ったマット。『〜ハンティング』から12年。今では、いい脚本はまずマット・デイモンのところにいくといわれるくらい、パワフルなスターになった。プロデューサーとしても活躍してるし、そのうち必ず素晴らしい監督デビューをすると確信してる。

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