私が働くことになった牧場。
その名前はミステリーランチ! |
「動物が好きなんです。なんでもしますから、牧場で働かせてください!」
そう言って、私はカナダの小さな牧場の居候になった。
牧場の名前はミステリーランチ。
「ミステリー? プッ!(笑い)変な名前……。いったい何がミステリーだというの?」
きょろきょろと周りを見渡すが、太陽の光を受けた草木がサラサラと風に踊り、陽だまりのなかで動物たちが春の芽草を食んでいるのどかな牧場風景が目に入るだけだった。 |
辞書によるとミステリーとは不思議、霊妙、怪奇。どうしたって火曜サスペンスという感じ。カナダで言えばXファイルの危機感せまる音楽がバックミュージックのように流れるイメージだ。
どこかに死体が埋まっていたりして? そんなはずもないのに、なんだか好奇心ばかりが脳裏で遊んでしまう。
私の居候を快く引き受けてくれたのは、小学校の教師を定年退職した後、老後の趣味として競走馬の生産・育成を始めたダイアナお婆ちゃんだった。
ダイアナお婆ちゃんは、居候になった私に、少しばかりだが給料をくれると言ってくれた。それは願ってもないことだった。 |
しかし、
「牧場の経験ができるだけでも大きな財産を心のなかに得る思いです。ですから、給料はこの牧場での経験との引き換えで結構です」
と私は、つたない英語で丁重に断った。以後、そう言ったことに関して一度も後悔をしたことがない。
ダイアナお婆ちゃんも、私の意を汲んでくれて、
「それじゃ、給料はルーム・アンド・ボード(部屋と賄い)と経験、それから、英語を教えてあげるわ」と言ってくれた。 |