

白血病と闘いながらも、他人を思いやる無垢の愛をもつ少女・ギデオン。悲惨な体験から人生に絶望し、ひとり頑なに生きるホームレスのアール。クリスマスを迎えようとしている街で、ギデオンの病は進み、男は死さえも考える。そして、ふたりは出会い、赤い手袋が奇跡を呼ぶ。無垢の愛が人を救う、その愛が信じる心を甦らせ新たな救いが生まれる。アメリカでベストセラーとなり、TVドラマ化されたカレン・キングズベリーの物語は、人間愛や信じる心を思い出させ、ひとときの癒しを与えてくれる物語。クリスマス・プレゼントにもおすすめの1冊です。
「仕事中は冷血漢に徹する癖がある」という小沢さんも、翻訳中に何度も涙がこみ上げたそうですね。
「ええ。娘にも読ませましたが、彼女も『グッときた』と。でも、この本はいわゆる“泣かせます本”ではないんです。子殺し、親殺し、いじめが頻発し、アールのような絶望感が広がる時代に、希望を見出せるとしたらなんだろう? ギデオンのように強く信じられる気持ちってなに? と考えさせる本です。信じるとは、相手の中に眠っているよさを信じる、自分を信じる、ということ。信じるという言葉自体が消えつつある、なにを信じていいかわからない今、ぜひ読んでいただきたいですね」
8歳のギデオンはボランティアに参加します。この本のバックボーンにはキリスト教がありますね。
「多かれ少なかれ欧米文学のバックボーンにはキリスト教があって、クリスマスにまつわるものはとくにそうです。この本の、クリスマスに人のためになにかしようというボランティアは、キリスト教そのものですし。日本では、宗教から離れてクリスマスの習慣だけが根づいています。でも私は、訳していてぜんぜん抵抗がなかった」
アールという人物もとても気になりますね。彼の絶望感、頑なさはどこから生まれたの? とか。
「すごく納得できるんですよね、ストーリーに。なぜアールが絶望しているのか? それがなかなか明かされない。カレンさん、そのあたりはうまいな、と」
リストラなどで切り捨てられる人、引きこもってしまう人が急増している時代、アールの心情が分かる、という人たちもいると思います。一方、ギデオンは信じられないくらい純粋無垢で奥深い愛を持っていますね。
「奥が深いと思ったのは、家庭のあり方、子供の育て方。宗教は抜きにしても、家族が助け合い思いやることが、今の日本では少なくなっていますから、日本人にも参考になることは多いでしょう。また、貧しくてもお金をかけず、工夫してクリスマス飾りを作るなどの部分は、胸がつまります。クリスマスに限らず、本当に愛し合っている夫婦や家族なら、誰だってやることじゃないか、と。孤独なアールにも、実は愛情深い家庭がありますし。やはり、底にあるのは家族愛でしょう」
この本に「クリスマスの奇跡は信じる人に起きる」という言葉がありますが、小沢さんはこの言葉を信じますか? 信じてみよう、と思われますか?
「信じたいですねぇ。宝くじが当たりますように、などという非現実的なことは信じたくありませんが。ギデオンは、自分の病気が治ることではなく、アールが信ずる心をとり戻しますように、と祈ります。欲も得もない本当の純粋さ、無形のものだから奇跡は起こるのでしょう。人は変えられない、といいますが、人の気持ちが変わることこそ奇跡ではないかしら。めったにないから奇跡なのでは。ギデオンとアールに起こる奇跡が巡ってハッピーエンドになるわけですが、原点は信じる心ですよね」
インタビュー・文/林 公子