

大橋さんのエッセイの魅力は、実はその文章にあるという人も少なくない。起承転結のようなセオリーを気にせず、ありのままを綴っているところが潔い。大橋さん独自の言葉も飛び出す。『日々が大切』でもたとえば「手さげ袋が大好き」という項で、大橋さんは、コム デ ギャルソンのバッグを“約四角い”と表現している。
「なんとなく四角だから。私自身はごく自然に、正しいと思って書いているんです(笑)。で、違うよと言われれば、ああ、そうですかといって直すけど……。言葉遣いには自信がありませんから。文章を初めて書いたのは、『平凡パンチ』の『表紙の言葉』だったと思います。依頼されたとき、どうしてこんな絵に説明をつけなきゃいけないの? と思いました。とんがってましたから。で、絵の説明ではなく、そのときに思ったことを書いたんです。そしたら、編集長がリライトして出しちゃったんですね。びっくりして、上司の編集局長さんに、“これ私が書いたものと全然違うんですけど”と言ったら、“これは作者の言葉だからリライトするなんてとんでもない”と言ってくださった。それからもエッセイを依頼されることが多くなりましたが、一所懸命書いて出しても、ぜんぜん違うものになって印刷されていたりしたこともありました。結局今もおつき合いさせていただいているのは、私の“めちゃくちゃ”を許してくださるところなんです(笑)」
大橋さんは、その『平凡パンチ』連載中に出産。乳飲み子を抱えて、打ち合わせに出向いたこともあった。
「でも『平凡パンチ』は男性週刊誌ですから、作品にお母さんっぽさが少しでも覗いてはいけないと思っていました。子供と存分に触れ合ってはいても、自分の中のどこかで母らしさを拒絶していたかもしれない。……子育てについて、ちゃんとしてなかったかなという気がどこかでちょっとだけありますね。でも、一所懸命やってきたから、きっとそれはマイナスではなく、プラスに働いたって今は思っています」
絵も文章も、もっとうまくなりたい、そう思うことが大橋さんの原動力。そのあり方は、今も昔もずっと変わらない。
「『平凡パンチ』の後に、PINK HOUSEのポスターやDMの絵を描き始めました。最初はうまく描けなくて毎回が闘いでした。それが、描けるようになったとき、もう辞めなきゃいけないと思った。うまく描けないと思ってるほうが結果的にはよくて、『大体描けるよね』と思い始めるともうだめ。全然、力がなくなっている。『平凡パンチ』も最後の方の何号かはよくないと思うんです。だからね、『LEE』は、最後まで下手だなーって思えたから、逆によかったのかもしれない」
『日々が大切』として1冊の本にして読んでみると、実は大橋さんは、お茶目な失敗もいっぱいしていて、それをとっても正直に書いている。
「そうそう。古い型の洋服を直してみたけど、やっぱり着られなかったり(笑)。それはそれしか書きようがないから。作家ではないから、膨らませて書くこともできないんです。でもそれが私の『日々』。平凡だけど、だからいいこともあったなぁって思うんです」
インタビュー・文/おおくにあきこ