かとう のりこ
1973年、三重県生まれ。'92年に歌手デビュー。以後、テレビドラマやバラエティ番組、 CMなどで活躍。'00年、仕事を一時中断して語学留学のため、フランスへ。2年間の留学を終え、帰国後、仕事復帰。'03年には舞台「新版・忠臣蔵外伝『喧嘩安兵衛』」に出演するなど、活躍の場を広げている。フランス滞在中から自宅録音で放送していたインターネットラジオを、現在も引き続き担当中。http://noriko-kato.i-radio.fm/


be文庫最新刊

加藤紀子・著
ISBN:4-08-650037-X
「フランス語を話せるようになりたい!」その気持ちひとつで、タレントとしての仕事を休んで、日本を飛び出した――。加藤紀子が、2年間の滞在中に体験したさまざまな出来事を、今までの留学本にはなかったリアルな言葉で綴ります。
加藤さんのパリでの一人暮らし。「人気タレントさんだもの、さぞかし、生活費の予算は多かったんじゃない?」と思った人、ハズレです。家賃は7万円前後、食費もまったく一般の学生と同じ程度。余計なものを買うお金など、まったくなかったそう。華やかでバンバン買い物しそうな「芸能人」なのに、実はすっごく普通の金銭感覚を持つ加藤さんなのである。

「お客さんが日本から来た時など、たまに豪華な食事をすることがありましたが、ほとんど自炊で乗り切りました。炊飯器もね、買おうかどうしようかと悩んだんですけど、鍋でご飯を炊けばいいじゃん、と思いなおして買わずに済ませたんですよ。やればできるもんです。電気代ももったいなくて、料理の手際がすごーく良くなっちゃった!」

ただし、CDだけは好きなだけ買ったそう。

「フランス人は倹約家であっても、自分にとって大事なものには、お金を使うんです。私の場合、それはCDでした。だってそもそも、大好きなフレンチポップがきっかけで留学したんですから」

CD以外の「大きな買い物」は、2年間でたったの3つ。パリに着いてすぐに「これから頑張ろう!」という思いを込めて手に入れた、一番大好きなフランス映画「ロシュフォールの恋人たち」のポスター。お気に入りのスニーカーのブランド「コンバース」で、悩みに悩んで買った一足。帰国直前に、よく頑張った自分にプレゼントした、フランス広告界の巨匠イラストレーター、サヴィニャックのポスター。どれも加藤さんにとって、何物にもかえがたい大切な宝物となった。

「何十年も前のサヴィニャックのポスターは、日本で買うととっても値段が高いのですが、パリでもそうはお目にかかれないものなんです。だから、画廊にしょっちゅう通って探していました。そうしたら、帰国間際にやっと出合えて。6万円でした。それでも安くないと思ったけれど、日本で買ったらもっとするし、何よりすごく気に入ったんです。だから思い切って、ぴったり合わせる額まで注文して、買っちゃいました。ロシュフォールとサヴィニャック、2枚のポスターは、今も玄関に並べて飾ってます」

出かける時と帰る時。フランスでの経験を思い出させる、この思い出のポスターたちは、きっと加藤さんのパワーの源なのだろう。

「私もいろんな経験を積んで、自分の心のドアを開けるべき相手を見分けられるようになりました。たぶん、これなら、フランス以外の国へ行っても大丈夫だと思うくらい!」

しなやかな感性に、強さが加わった加藤さん。可憐な美しい花は、より深い色彩の花となった。その花が鮮やかに咲くのは、きっともうすぐだ。

インタビュー&文/中沢明子
カメラ/木村直軌

close