

“今、「バスジャック」がブームである。
一昨年の秋から、じわじわとブーム再燃の兆しはあった。
発端は地方テレビ局のカメラマンが、偶然乗り合わせたバスで起こったバスジャックの模様を収めたビデオだ。”
(表題作より)

三崎亜記、最新短編集。どきりとさせられる話、ほろりとくる話、などバラエティー豊かな7編を収録。

小説すばる新人賞受賞の話題作。たんたんと続く日常の中での、見えない戦争に参加する“僕”。
――本は子供の頃からよく読んでいたんですか?
「兄が、学校の図書館の本をぜんぶ読んだと噂されるくらいの読書家だったんで、筒井康隆さんとか星新一さんの文庫本が身近にあったのは確かですね。でも、印象に残っているかっていうと……。そこにあったから読んだ、という感じですね」
――十代の頃に、小説以外に夢中になったものはありますか?
「美術には興味があったので、絵を少しは……。でも、絵はすぐに技術的な限界が表れてしまうところがあって。文章……自分の文章がどうなのかは今でも自分ではわからないんですが、文章の世界だったら自分は生きていけるのかもしれないと思っていました。作家になったから言えることですけど」
――小説を書くようになったのはいつごろですか?
「大学生の頃から漠然と。小説家になりたいというよりも、小説の本を出したいと思っていました。小説を出さなければ、と。何に対してかはわかりませんが、わけのわからない使命感を持っていましたね(笑)。小説をそれほどたくさん読んでいたわけでも、小説を読むことが好きというわけでもなかったんですが」
――『となり町戦争』で第17回小説すばる新人賞を受賞して作家デビューされましたが、受賞以前と以後で変わったことはありますか?
「受賞する前は、小説を書いているということを誰にも言っていなかったんですよ。両親にも恋人にも黙って書き続けていたんです。受賞以前は誰かに読ませようと思って書いたことはなかったんですが、受賞以降は、誰かに読んでもらうために書くようになりましたね。書く上での意識が180度変わってしまったので、自己満足ではいけないと痛切に感じています」
――『となり町戦争』は賞を取って本になっただけではなく、読者の間で話題にもなりました。ご自分ではその反響の大きさをどのようにお感じになりましたか?
「私が小説をそれほど読んでこなかったということもあって、町同士が戦争をするとか、公務員の仕事として戦争をするという設定の小説は、今までにもたくさんあったと思っていたんですよ。それがものすごく斬新な設定、と言われて、“あれ?”って思いました。それと、『となり町戦争』って、悪く言えば、主人公は何もしていないじゃないですか。そういう小説が世間に受け入れられるっていうのが、ちょっと不思議というか、それ自体が不条理な気がしましたね」
――いま取り組んでいるお仕事を教えてください。
「今月発売の『小説すばる』(12月号)から小説の連載が始まりました。『となり町戦争』から始まる「町三部作」……にはしません(笑)。プレッシャーに弱いんです」
取材・文/タカザワケンジ
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