マメのモデルは実家で飼っていた雑種犬のチャロ。
現在の愛犬もまた登場犬のモデルに。
今作には主人公のマメタロウを始め、マメの恋人である紀州犬のはなこさん、ハスキー犬の源(げん)さん、ヨークシャテリアのセバスチャン、プードルの六花(ろっか)ちゃんにダックスフンドの空(そら)ちゃん……愛らしいナイスキャラな犬達がたくさん登場する。
「マメのモデルは実家で飼っていたチャロなんです。チャロはマメと同じで、ペットショップで買った雑種犬なんですよ。最近では、ペットショップで雑種犬なんてすっかり見かけなくなりましたけど(笑)」
幼いころから、動物が大好きで「『ムツゴロウ王国』のTV番組も大好きだった」と言うきらさん。“マメタロウ”という名前は『ムツゴロウ王国』に実際にいた犬の名前から拝借したんだとか!!
「空ちゃんのモデルは、現在、飼っているダックスフンドの姫なんです。作品の中で、空ちゃんが皮膚病になるエピソードがあるんですけど、あれは、実際に姫が皮膚病にかかってしまったことがきっかけで生まれたエピソードなんですよ。
まんがのネタは、自分のまわりにあるものや出来事から生まれることもあれば、取材に行った先で拾ってくることも。この作品は、北海道の犬ぞり大会やフリスビー大会、そしてスイス……いろんなところに取材旅行させてもらったので、その取材先で実際に経験したことが作品につながるケースが多かったですね。
全てを想像で描くこともできるんだろうけど、私の場合は、取材や経験があったほうが描きやすいというか。自信を持って描けるんですよね(笑)。例えば、ある仕事のプロに話を聞くとしますよね。そこで“どの仕事でも同じだと思いますよ〜”なんて一言を聞くと“じゃあ、いかようにも広げていいわけですね!”と安心する、みたいな(笑)。実際に話を聞いたり目にしたほうが、迷いなく描ける気がするんですよね」
『まっすぐにいこう。』のなかに自分の描きたいことを描ける。
そう思ったら、悶々とした気持ちがスッキリ晴れたんです。
約8年という長期連載中「一度も辞めたいと思ったことはないんですよ」ときらさん。
「
描いている間は“辛い”とか“苦しい”と思うこともなかったんですよ。デビューからそのまま連載がスタートして、
『まっすぐにいこう。』以外の作品を描いたことがないだけに、比較対象が存在しなかったから。何が起きても“これが当たり前なんだろうな”で片付いてしまうというか。これが今だったらそうはいかないでしょうね(笑)。きっと途中で違う作品が描きたくなってしまうと思う。
あ!! でも
一度だけ、悶々とした時期がありました!! あれは確か連載当初だったと思うんですけど。学園恋愛モノしか描けない自分がイヤになってしまったんですよね。そうはいっても、当時はまだ高校生活しか知らないから、それ以外のことを描けっていわれても描けなかったと思うんですけど(笑)。そんなジレンマと負けん気から
“恋愛以外のまんがも私は描けるんだぞ!!”っていうのを示したくなってしまったんですよね」
そこで、きらさんが描いたのが、都会で飼われたハスキー犬の源さんが北海道にもらわれていくストーリー。これは、当時問題になっていた“流行として飼われたハスキー犬が捨てられて野犬になっている”というニュースから生まれたエピソードだった。
「社会的なことに感銘を受けるお年頃だったんですかね。犬好きとして“これは私がなんとかしなきゃ!!”って思ってしまったんですよね(笑)。でも、このエピソードを描いたおかげで
“『まっすぐにいこう。』のなかでも、自分の描きたいことが描けるんだな”って思えるようになって。悶々としていた気持ちがスッキリ晴れたんですよ」
そこから、現代のペット事情が抱える問題であったり、誰もが抱えているであろう人間関係の悩みに迫るものであったり、スイスで出会ったマリちゃんが実はゲイであるというエピソードの裏にはゲイ差別に対するきらさんの思いが隠れていたり……
“学園恋愛モノ”という一言ではまとまらない強いメッセージ性を感じる作品に変化していく。それは読者の心を大きく揺り動かし、ときに考えさせられ、ときに涙を誘われた!!
「もちろん、それは当時の私が感じていたことであり、興味を持って描いていたことに間違いないんですけれど……ただ、いかんせん20代の頃に描いているので、
今読むと、説教くさくて恥ずかしいっ。若いくせにえらそうに〜って思ってしまうんですよ(笑)。今の私だったら、こんな直球投げたりしないっ。伝えたいメッセージはあくまで娯楽の下に隠し、サブリミナル効果じゃないけれど、“読み終わった後になんとなく残る”くらいのバランスで描く方がいいと思います」
『まっすぐにいこう。』は現在も『コーラス』で不定期に連載を継続中。続きを楽しみに待ち続けているファンはとても多い。
(取材・文/石井美輪)