 |
 |
 |
 |
 |
 |
何十年たっても忘れられないあのセリフ、あの場面。
そんな永遠の名作を、作者のインタビューや担当者の裏話などとともに紹介するコラムです。 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
“恋愛まんがの女王”と言う名を決定的にしたのが、この『正しい恋愛のススメ』。高校生の出張ホスト、エネルギッシュで欲望に忠実な年上の女性、さらにはその娘との三角関係……と刺激たっぷりの展開で、一条ワールドが全開! これを読まずに、恋愛は語れない!? |
 |
 |
 |
 |

最後に博明が、美穂ちゃんと玲子さんのどちらとくっつくか。一条さんはどうやって決めたのだろう?「美穂はどんな男でも幸せにできる最強の女。博明は美穂ちゃんとくっついたほうが救われると思ったんです。玲子さんはナイーブすぎるんです。だから作家としてもやっていけるんだけど、博明も女々しいから、博明と玲子さんがくっつくと共倒れになっちゃうのよ。
私の場合は、自分の中に美穂ちゃんと玲子さんと、ふたつあるわけです。女々しい部分もあるけど、自分でそれを支えてしまう。だから男が必要ないのかもしれない。チッだわ(笑)」 |
吉祥寺の駅前で公衆電話をかけていたとき、
出張ホストという設定を思いついたの(笑)。
前回の『恋のめまい 愛の傷』で、「私にとって、セクシーとは危ういもの。だからまんがも、つい危険な設定になってしまう」と語っていた一条先生。スリリングという意味では、この『正しい恋愛のススメ』もかなりポイントが高い。
主人公は出張ホストのアルバイトをしている男子高校生・博明(ひろあき)。しかも彼は同級生の美穂(みほ)とつきあいながら、出張ホストで知り合った37歳の脚本家・玲子(れいこ)との恋に溺れることに。その上美穂と玲子は、じつは母娘だった……という、あぶない関係が満載なのだ!
「当時、新連載のネタを考えていたんだけれど、なかなか思いつかなくて困った、困ったと思っていたんです。で、当時は携帯電話がなかったので、あるとき吉祥寺の駅前で公衆電話をかけてたら、出張ソープのお姉さんとか、マッサージ嬢のチラシとかがいっぱい貼ってあったんですね。
電話をしながらそれをボーッと見ていたら、私の友達の漫画家の絵が使われていたりして、『絶対これ、お金払ってないな』とか思ったりしてるうちに、ハッとひらめいたの。これだけ女の出張があるなら、男の出張もあっていいじゃないかって。
実際、当時はそんなものはなかったんだけど、その後、できたらしいのよね、男の出張ホスト。それを聞いて、やったわ、と。ちょっと裏社会に貢献したわと思いました(笑)」
仕事のときの私が玲子さんで、
プライベートの私が美穂ちゃんなんです。
普段は気合の入った女子が物語を引っ張ることの多い一条作品だけに、男の子が主人公というのも珍しい設定。それも日々をただ適当に生きている軽〜くてユル〜イ高校生。
それが出張ホストのバイトを始め、様々な女性と出会うことで、大人の男へと成長していく。その姿はドキドキするほど色っぽかったりするのだけれど、彼をそんな風にいい男にしたのは、やっぱり玲子さんとの恋なのだ。
仕事にも男にも貪欲で、自分の欲望に忠実に人生を謳歌している彼女は、同性から見てもカッコイイ女性。これって何だか一条先生自身の姿とダブるところがあるような!?
「昔から、さんざん言われてきたのよ。『あの作品のあのヒロインは自分をモデルにしているんでしょう?』って。自分ではそんなつもりはないんだけどね。でもだったら、1回くらい本当に自分をモデルに描いてみようと思ったの。それがこの作品なんです。
そして玲子さんだけじゃなくて、じつは娘の美穂ちゃんも私がモデルなんですよ。自分を分析して、仕事のときの自分と、プライベートのときの自分と、ふたつに分けて描いたんですね。それが玲子さんと美穂ちゃんの母娘。仕事のときの私が玲子さんで、プライベートのときの私が美穂ちゃん。ふたりを合体させると私になるんです。
美穂ちゃんはつねに前向きで無敵。玲子さんのほうが、娘の美穂ちゃんより弱いんですよ。私も仕事のときのほうがナイーブになっていると思う。守るものがあると、どうしても人は神経質になるから。だから仕事は誠実に、私生活は犯罪さえ犯さなければOKという、私のポリシーとピッタリなの(笑)。
ただ唯一、自分の性格にないところは、玲子さんは若い男の子を育てようという意欲があるでしょう。でも、私は一切ないの。面倒だし、そこまで男に根性出せないし。ちゃんと育ったのが欲しいと。そこだけが大きく違います。そういう意味で、この中では、博明の同級生の護国寺(ごこくじ)くんがいちばん好き! 博明も悪くないけど、育てるのはイヤ。何でもスマートに完璧にこなしてくれる護国寺くんがやっぱり理想だわ」
自分が恋愛にのめり込めない体質だから、
きっと自分の夢を描いたんだと思う。
それにしても、タブーだらけ&不純極まりない関係から始まった博明と玲子の恋が、次第に純愛に浄化されていくという展開は本当にロマンチック。最後にふたりが愛し合う場面はせつなくて、思わず涙があふれてきてしまう。
こんな素敵な恋愛模様を描いたものは、当時、一条先生が恋愛モードだったからに違いない、と思ったら、意外にも「それはまったくない。むしろこの作品では、自分が恋愛にのめり込めないぶん、自分の夢を描いたんだと思う」との答えが!! マジッスか!?
「だって私、『さぁ、仕事だ!』ってなった途端、ピーンと仕事モードになるし、我を忘れて恋愛でボロボロになってる友達から相談なんか受けたりすると、何か愚かに感じてしまうの。もうちょっと頭を冷やせよと。
でも、自分がどれだけバカな女になっているかわからなくなるほど、恋愛の力ってすごいわけじゃない? それをさんざん見てるうちに、逆にいつもどんなときもクールにシビアに考えてしまう自分が嫌だなぁと。恋に溺れる友達が羨ましくなってきたんです。
それは私が酔っ払いを見て、羨ましいと思う感情によく似ているんだけどね(笑)。私は酔う前に気分が悪くなってしまうのよ。でも、酔ってとんでもないバカをやる人とかを見ると、人間ここまで堕ちることができるのかと羨ましくて。“堕ちる”っていう言葉、大好きなのよ(笑)」
クールとナイーブが同居する巨匠の内面。相反するふたつの側面がせめぎあっているからこそ、その想像力はいつまでも若々しく、枯れることがないのだろう。
では最後に、デビューから40年を振り返って、ひとことお願いします!
「山あり、谷ありでしたね。たいへんなこともあったけれど、私、逆境にあうと燃えるんです。ある意味、萌ちゃん?(笑)。
それにしてもデビュー40周年で、こんなにもてはやされるとはまったく思ってなかった。デビューしたときには、2〜3年、もてばいいと思ってたから。
少女まんがの世界では私なんて不良だったし、アウトサイダーだったからね。それが今や少女まんがの王道ってどういうこと!? う〜ん、人生ってわからないものだわね(笑)」
(取材・文/佐藤裕美)
*毎週木曜日更新予定
次回は2月26日 矢沢あい『風になれ!』
★以下の作品について、感想、当時の思い出などを募集しています。
| ■ |
一条ゆかり『女ともだち』『恋のめまい 愛の傷』『正しい恋愛のススメ』
|
また、上記の作品以外にも、取り上げてほしい懐かしい作品がありましたら、
作品名と感想をお書き込みください。 |