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一条ゆかり
『恋のめまい 愛の傷』
集英社文庫
<コミック版>全1巻
パリで出会った婚約者の亮とともに、久しぶりに帰国した更紗。しかし空港でふたりを出迎えたのは、3年前に愛し合いながらも、無理やり仲を引き裂かれた年下の恋人・琳だった。亮と琳が兄弟だとは知らなかった更紗は、ふたりの間で激しく揺れ動く……。
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一条ゆかりprofile
1949年9月19日生まれ。岡山県出身。第1回「りぼん」新人漫画賞で準入選し、68年に、『雪のセレナーデ』でデビュー。『デザイナー』『砂の城』『有閑倶楽部』などヒット作多数。07年、『プライド』で、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。08年にはデビュー40周年を記念して、自身の半生を綴ったエッセイ『正しい欲望のススメ』(集英社)を上梓。

1994年はこんな時代でした!!
●事件・出来事 大江健三郎がノーベル賞受賞、村山政権誕生、松本サリン事件、ビートたけしがバイク事故で重傷、就職氷河期
●流行 プレイステーション、ドンタコス、エビアン、ゴーマニズム、同情するなら金をくれ、イチロー効果、マジソン群の橋
●ヒット曲 イノセントワールド(Mr.CHILDREN)、ロマンスの神様(広瀬香美)、恋しさとせつなさと心強さと(篠原涼子)

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何十年たっても忘れられないあのセリフ、あの場面。
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16歳の少年と旅先のアバンチュール……のつもりが、お互いの肉体に溺れ、本気で愛し合うようになったふたり。そんなエロティックで大人な恋愛まんがで読者を圧倒した『恋のめまい 愛の傷』。恋愛からすっかり遠ざかってる人も、これを読み返せば、すぐに恋がしたくなる!?
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高校生の頃は無邪気でやんちゃだった琳。しかし更紗に捨てられた後は女性不信になり、すっかり暗く、冷めた人間になっていた……。先生にとって、琳はセクシーな男なのだろうか?「それは微妙(笑)。更紗に対して、子どもっぽくひがみまくっているから、それをセクシーというのは難しいなぁ。でも、日の当たらない感じは好きですね。私、日の当たらないものにはセクシーさを感じるもので」。
本当の恋愛は心と身体がセットになっているもの。
『りぼん』では描けない大人の恋愛を描きたかった。
 一条ゆかりといえば、なんといっても恋愛まんがのオーソリティ! 中でも、エロティックで刺激的な大人の恋愛を描いた『恋のめまい 愛の傷』は、台湾でドラマ化されるなど、多くのファンに支持されている作品だ。

「『恋のめまい 愛の傷』は『デザイナー』を描いたときに似てるんです。『デザイナー』のときは、『りぼん』でかわいい少女まんがばかり描いていて、でも、『私が描きたいのはこんな作品じゃない。もっと大人の作品を描きたい』と思って描いたのが『デザイナー』でした。

『恋のめまい 愛の傷』のときは、とくかくちゃんとした大人の恋愛を描きたいと思っていたんですね。主人公の成長がどうの、仕事がどうのっていう話じゃなくて、とにかくどっぷり恋愛。で、心と身体がセットになって、初めて本当の“恋愛”と言えると思うんだけど、『りぼん』は子どもの雑誌だから、やっぱり描けないことが多かったんです。

 そのうっぷんを25年間もためていて(笑)、それで『コーラス』が創刊するときに『何を描いてもいいよ』と言われたので、真っ先に大人の恋愛を描こうと。それまでまったく描けなかった“セクシー”というところを描きたいと思ったわけです。
 だからタイトルもそのまま“恋愛”をふたつに分けて、『恋のめまい 愛の傷』と。これが私の恋愛のイメージそのものなの。恋をしたら冗談みたいにくらくらとめまいがするし、人を愛することと傷つくことはセットだと思ってるし。そう、恋愛って、意外といいことないのよ(笑)」

真面目で穏やかな兄の亮と、影があって
セクシーな弟の琳。あなたはどっちが好き?
 一条先生が言うように、物語の登場人物たちは、みんな人を愛したばかりに苦しみ、人生を狂わせていく。ヒロインは女子大生の更紗(さらさ)。旅先のパリで、ひょんなことから年下の高校生・琳(りん)と一夜を共にしてしまうが、身体の相性の良さからお互いのめり込み、旅先のアバンチュールのはずが本気の恋へと発展していく。

 しかし琳の母親からの願いで、更紗は黙って身を引き、再びパリへ。3年後、パリで知り合った日本人ビジネスマンの亮(りょう)と婚約して帰国した更紗だったが、なんと婚約者・亮の弟は、かつての恋人・琳だった。彼女はまだ琳への思いを残している自分に気がついて愕然とする……!

「更紗と琳のように、セックスから始まる恋もあると思うし、『ああ、もうこの男はイヤだわ』って思っているのに、エッチしたらとてもよくて、『やっぱり別れられないわ』とかってあると思うし。そういうのも恋愛のひとつだと思うの。つまり心と身体の両方があって、そのふたつに折り合いがついて恋愛になるんだと思うんです。この作品ではそれを描きたかった。

 もうひとつは理想のハズバンドと理想の彼氏はこんなに違うということも描きたかったの。真面目で穏やかな兄の亮と、影があってセクシーな弟の琳。あなたはどっちが好き? っと。あなたが結婚を望むなら、お兄ちゃんにしなさい。恋を望むなら弟にしなさいという選択肢を見せたかったんです」

私にとって、セクシーというのは危険なもの
だからスリリングな設定になっちゃうのよね。
 やさしく包まれるような亮との愛か、肉体も心も溶けて混ざりあうような琳との恋か。恋愛の酸いも甘いも知っている一条先生だからこそ描ける作品なのだが、じつは一条先生自身は、「男性にエロスを感じることはほとんどない」というから信じられない!?

「私にとってセックスそのものは運動に近いんだと思うの。最近、体動かしてないなぁみたいな(笑)。だからセックスはちょうど時計の分解掃除をして、リセットしてくれるような感じ。その相手が好きな人だったらなおヨシ、というプラスアルファがつくけれど、別にものすごく好きじゃなくてもいいか、という感じなんです。

 ただ“危険なもの”にはセクシーを感じますね。たとえば20代の頃、ふたりの男性とつきあっていたことが何度かありました。たいてい本命のほうが年下で、もうひとりはそれより10歳くらい上で。本命の彼氏には他に男がいることなんて言わないけれど、年上の彼氏には年下の彼のことも全部話してて、たまに3人でご飯食べたりするんです。

 その危うさには“セクシー”を感じましたね。だから私にとって、セクシーというのは、やっぱり危険なものなのよね。そういうスリリングな経験は、やっぱりまんがに生かされているかも。

 昔からロック魂があったから、『してはいけません』っていうことをするのが大好きだったの。まんがでもいかに危険な関係を作るか、というのが楽しくて。だから近親相姦が多くなったり、『恋のめまい 愛の傷』みたいな兄弟で同じ女の子とつきあったり……という設定になっちゃうのよね(笑)」

 なんとも奥深〜い一条先生の恋愛論。最近、仕事ばかりでお疲れの人。恋の潤いが足りないと感じている人。この作品を読んで、恋愛モードを一気に注入しちゃおう!!

(取材・文/佐藤裕美)

*毎週木曜日更新予定
次回は2月12日 一条ゆかりpartII『正しい恋愛のススメ』




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