当時、アニメを見ていた子供が今は立派な大人に!!
仕事現場で「見てました」ってよく声をかけられるんです。
原作はもちろん、TVアニメとしても大ヒットを記録した『ママレード・ボーイ』。当時はアニメといえば魔法ものやアクションものが中心。実は“派手な展開がない恋愛まんが”がアニメ化されるのはもちろん、ヒットすること自体、異例中の異例の出来事だったのだ!!
「“自分が作ったものをもとに他の人が作ったもの”を見るのはとても興味深かったですね。まんがでは、複雑な環境に戸惑う光希(みき)をコメディタッチで描くことが多かったんだけど、アニメではやたらシリアスに描かれていたり(笑)。また、アニメではとにかくキスシーンが多かったり(笑)。原作とは異なる部分も多々あったけど、私自身はスゴク楽しみながら見ていました」
アニメをきっかけに「原作を手に取ってくれる人が多かったのも嬉しかった」と吉住さん。
「すごく幅広い層の方からお手紙をいただくようにもなったんです。なかでも“子供と一緒にアニメを見て、大ファンになりました”なんて主婦の方が多かったですね。“学生時代を思い出して胸がキュンとしました”とか“遊(ゆう)くんがカッコよくて大好きです”なんてお手紙をくださったり。若い子よりも主婦の皆さんのほうが純粋だったりして(笑)」
アニメがきっかけで吉住先生の作品のファンになり、今も定期的にファンレターを送ってくるファンの方もいるんだとか!!
「お手紙をもらうたびに、当時は幼稚園だったお子さんが小学生になり、小学生だったお子さんが中学生になり、そして今では大学生になっていたりするから驚きますよね(笑)。親戚でもないのに、まるでその家族の成長を見守っているような気持ちになる……そんな、なかなかないつながりを与えるきっかけをくれたという意味でも、アニメには感謝してます」
連載開始から16年。「当時は、例えばアニメを制作していただくスタッフであったり、仕事で会う方のほとんどが私のことを知らなかったんだけど、最近、新しく知り合う20〜30代の方の中に、私のことを知ってくれている人が多いのが嬉しい」と吉住さんはいう。
「その方々がいうのが“『ママレード・ボーイ』のアニメを見てました”という一言なんですよ。その言葉をきくたびに“アニメの力はすごいな”って痛感する。本当、ありがたいことですよね」
自分が楽しんで描くことが
一番大事なことだと思っています。
多くの人が自分の作品を読んでいる。そう思うと「その期待に応えなくては」というプレッシャーがかかりそうなもの。連載中、そんな想いに悩まされることはなかったんですか?とたずねると「それは、なかったですね」という回答が。
「毎月、とにかく描き上げることでいっぱいいっぱいだったので。
そんなことを考える余裕がなかったっていうのが正直な気持ちですね(笑)」
また「読者のみなさんに楽しんで読んでもらうのはとても大事なことだけれど、今も昔もわりと私はそこらへんは自分勝手で(笑)。
自分が楽しんで描くことを一番大事にしているんですよ」と吉住先生は笑う。
「例えば、締め切りが辛いとか、イメージ通りに描けないとか……まんが制作も楽しいことばかりではないので(笑)。だからこそ“楽しむためにはどうしたらいいか”ということを優先的に考えるんですよ。例えば、自分が描いていて楽しい気持ちになれるようなキャラクターを出すようにしたりね。
描いている自分が楽しくなくちゃいい作品にならないとも思いますし。また、わりと私自身、好みが平凡なほうだと思うんですよね。大多数の女の子と“面白い”と思う感覚が似通っていると思うので。“読者に受けるのはどうしたらいいか”頭を抱えずとも、自分がいいと思うものを描けば読者のみんなもいいと思ってくれるというか。
昔はそんな平凡な自分がつまらないと思っていたんだけど(笑)、今はそれをプラスにとらえるようになりました」
実は「
シリアスなシーンよりもおバカなシーンを描くのが好き」という吉住さん。今作のなかでも、描いていて楽しかったのは「光希をめぐって遊と銀太(ぎんた)がテニスの試合をする」コメディタッチなシーンだとか。
「シリアスなシーンもコメディタッチなシーンも、ネームを考えているときはともに気持ちが盛り上がるんですけど、シリアスなシーンはいざ描きだすと……不思議と暗い気持ちになってしまうんですよねぇ(笑)。逆に、バカバカしいことを描いているときはテンションがあがって楽しめるんですよ(笑)」
普段から「自分の作品はどれも子供のように大事。なかなか比べることはできない」とおっしゃっている吉住さん。しかし、この作品に関しては特別な思いがあるという。
「『ママレード・ボーイ』はイラスト集や完全版はじめ、アニメに付随してCDや玩具まで出してもらったっていうのも大きいですし。そして何より、この作品をきっかけに幅広い層のたくさんの人が私の作品を読んでくれるようになったのが嬉しかった。そういう意味では、私のなかで一番特別な作品であると思うんです」
(取材・文/石井美輪)
*毎週木曜日更新予定
次回は10月16日 吉住渉『ミントな僕ら』