ひとつ屋根の下に好きな人がいる。
ドキドキの環境が読者の妄想をかきたてた!!
ある日突然、主人公・光希(みき)は両親から「離婚する」と告げられる。しかも「ハワイ旅行で知り合った夫婦と意気投合して、お互いパートナーを交換して再婚する」という驚きの宣言まで!! しかも、相手の夫婦にはひとつ年上の遊(ゆう)というイケメンの息子が。同じひとつ屋根の下で暮らすことになった二組の家族。ただでさえ複雑な環境なのに、光希と遊は次第に惹かれあうように……しかし、そこにはある大きな障害が待ち受けていた!!
まんが史上に残る大ヒット作となった『ママレード・ボーイ』。この作品の大きな魅力となったのが“離婚した二組の夫婦がパートナーを変えて再婚。そして、互いの子供が恋に落ちる”という斬新な設定だろう!!
「この作品は“離婚したけれどもまだ仲良しでいる家族”という話を描きたいという想いからふくらんでいったストーリーなんですよ。最初は、光希なり遊なりに弟や妹がいたらいいなとか、片方に全員引き取られるのもいいなとか、もっと凝った人間関係を考えていたんですけど。ちょっと複雑すぎて読むほうは疲れるかなと(笑)。最終的にはシンプルな関係に戻してみました。といっても、充分に複雑なんですけどね(笑)」
その設定だけでもワクワクさせられたが、それだけでなく“もしかしたら、光希と遊は血のつながった兄弟かもしれない”という展開も!! 想定外なストーリー進行に読者はドキドキさせられっぱなしだった。
「やっぱり、パートナーを交換して結婚するっていうのは難しいものがあるので。その無理を減らすためにも実は4人は昔からの知り合いだったということにしようと。そこからそのときにできた子供であるふたりは実は……という展開もアリだなと」
女子的にドキドキポイントがかなり高かったのが“好きな人とひとつ屋根の下で暮らす”というシチュエーション。両親'Sには内緒の恋のため、クローゼットの中で光希と遊がこっそりキスをする、なんてシーンに萌えた人も多いはず。
「みんなこういう設定に萌えるんだなって実感したのは読者からのお手紙ですね。当時はよく“うちも光希と全く同じ状況なんです!”ってお手紙を何通ももらったんですよ。読み進めると、それが可愛らしくも真っ赤な嘘であることがわかるんですけど(笑)。でもそこから、みんなの“手紙のなかだけでも光希気分を味わいたい”って願望が伝わってきて。“私の作品がちゃんとみんなをドキドキさせることができているんだな”って、そんな手紙を読むたびに嬉しくなったのを覚えてますね」
普通に生活していても
常に頭の片隅でまんがのことを考えている。
今までになかった面白すぎる展開。吉住さんはどのようにしてそんなストーリーを生み出しているのだろうか!?
「一番最初にストーリーの設定を考えて、人物配置を考えて、この人達だったらこの後どのように動いて行くんだろうって、まんがの世界をふくらませていくんですけど。どうやら、私は最初のその
設定に凝るのが好きみたいなんですよ」
確かに、吉住さんの作品は今作を初め『ミントな僕ら』のように男女の双子の男の子が女装して学校に編入してきたり……斬新な設定のものが多い!! その設定は何かにインスピレーションを受けることもあれば、突然ポッと浮かぶこともあるんだとか。
「こうやって毎日普通に生活していても、どこか頭の片隅で常にまんがのことを考えているんですよね。なので、突然、頭に
いい案が浮かぶことも。そのときはすぐにメモするんですよ。設定はもちろん、かわいい言葉を見つけたら“タイトルに使えるかも”と思ってメモるし。“こんなキャラクターがいたら面白いかも”と思ったらまたメモる(笑)。そこにはどんなものが書かれているのか? とても皆さんにお見せできるような内容じゃないので。それは秘密です(笑)」
『ママレード・ボーイ』という印象的なタイトルもそんなメモから生まれたものなのだろうか。
「このタイトルはですね……実は、当初この作品は
男の子が主人公になる予定だったんですよ。つまり光希が女の子でなく男の子になる予定だったわけです。そこで“ちょっとあまちゃんな男の子”というイメージで『ママレード・ボーイ』にしたんです。しかし、そのあとで、主人公を女の子にすることになって。でも、そのときには私の中でタイトルイメージがすでに固まってしまっていたので。後付けで、遊をあらわす言葉として“甘くて苦い男の子”という意味に無理やり変更したんです(笑)。」
(取材・文/石井美輪)
*毎週木曜日更新予定
次回は10月9日 吉住渉『ママレード・ボーイ』(2)