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柊あおい
『星の瞳のシルエット』
集英社文庫
<コミック版>全6巻
子供のころ、“星のかけら”をくれた男の子を、今も心の中で思い続ける香澄。親友の真理子が片想いする久住くんのことが少し気になるものの、自分の気持ちは隠して真理子の恋を応援することに。それでも膨らんでいく恋心は止められない! そして“星のかけら”をくれた男の子の正体も明らかになっていく。両思いなことはわかっているのに、簡単には結ばれないもどかしさを、香澄の中学3年から高校3年まで描き続けた超大作恋愛ストーリー。
試し読みする!!

柊あおいprofile
1962年11月22日栃木県出身。1984年「りぼんオリジナル夏の号」掲載の『コバルト・ブルーのひとしずく』でデビュー。『星の瞳のシルエット』、『銀色のハーモニー』という長期連載を手がける。1986年に執筆した『耳をすませば』はスタジオジブリによりアニメ映画化された。身近な舞台設定と素朴な登場人物で描かれるやさしい世界観が魅力。

1985年はこんな時代でした!!
●事件、出来事……新幹線大宮〜上野間開通、科学万博つくば'85開催、電電公社(現NTT)と日本専売公社(現JT)が民営化、男女雇用機会均等法成立、日航機墜落事故
●話題……『8時だよ!全員集合』放送終了、『ニュースステーション』(司会:久米宏)放送開始、『夕やけニャンニャン』放送開始、『スーパーマリオブラザース』発売
●ヒット曲……セーラー服を脱がさないで(おニャン子クラブ)、Romanticが止まらない(C-C-B)、タッチ(岩崎良美)、俺ら東京さ行ぐだ(吉幾三)

今後、登場予定の作品
■小花美穂
『こどものおもちゃ』
ほか多数

バックナンバー
■紡木たく『ホットロード』(1)
■紡木たく『ホットロード』(2)
■紡木たく『みんなで卒業をうたおう』
■紡木たく『瞬きもせず』

■くらもちふさこ『おしゃべり階段』『いつもポケットにショパン』
■くらもちふさこ『東京のカサノバ』
■くらもちふさこ『天然コケッコー』(1)
■くらもちふさこ『天然コケッコー』(2)

■いくえみ綾『POPS』『彼の手も声も』
■いくえみ綾『I LOVE HER』
■いくえみ綾『バラ色の明日』(1)
■いくえみ綾『バラ色の明日』(2)

■池野恋『ときめきトゥナイト』(1)
■池野恋『ときめきトゥナイト』(2)

■一条ゆかり『有閑倶楽部』(1)
■一条ゆかり『有閑倶楽部』(2)
■一条ゆかり『有閑倶楽部』(3)
■一条ゆかり『デザイナー』
■一条ゆかり『砂の城』

■岩館真理子『えんじぇる』
■岩館真理子『遠い星をかぞえて』『子供はなんでも知っている』
■岩館真理子『黄昏』

■亜月裕『伊賀野カバ丸』(1)
■亜月裕『伊賀野カバ丸』(2)
■亜月裕『伊賀野カバ丸』(3)

■尾崎南『絶愛-1989-』
■尾崎南『BRONZE-ブロンズ-ZETSUAI since 1989』(1)
■尾崎南『BRONZE-ブロンズ-ZETSUAI since 1989』(2)

■槇村さとる『愛のアランフェス』(1)
■槇村さとる『愛のアランフェス』(2)
■槇村さとる『ダンシング・ゼネレーション』『N★Y(ニューヨーク)バード』
■槇村さとる『白のファルーカ』(1)
■槇村さとる『白のファルーカ』(2)

■多田かおる『愛してナイト』(1)
■多田かおる『愛してナイト』(2)
■多田かおる『デボラがライバル』
■多田かおる『イタズラなKiss』(1)
■多田かおる『イタズラなKiss』(2)
■多田かおる『イタズラなKiss』(3)

■宮脇明子『ヤヌスの鏡』(1)
■宮脇明子『ヤヌスの鏡』(2)

■柊あおい『星の瞳のシルエット』
■柊あおい『耳をすませば』
■柊あおい『銀色のハーモニー』

■宮川匡代『ONE−愛になりたい−』(1)
■宮川匡代『ONE−愛になりたい−』(2)

■松苗あけみ『純情クレイジーフルーツ』(1)
■松苗あけみ『純情クレイジーフルーツ』(2)
■松苗あけみ『純情クレイジーフルーツ』(3)
■松苗あけみ『続・純情クレイジーフルーツ』

■吉住渉『ハンサムな彼女』
■吉住渉『ママレード・ボーイ』(1)
■吉住渉『ママレード・ボーイ』(2)
■吉住渉『ミントな僕ら』

■本田恵子『月の夜 星の朝』(1)
■本田恵子『月の夜 星の朝』(2)
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幼い頃出会って今も思い続けている初恋の男の子。奇跡の再会をしたけど、彼は親友の思い人だった。お互いに思い合っているにもかかわらず、すれ違い続ける香澄と久住くんの恋に、みんなヤキモキしっぱなし!
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香澄と久住が幼い頃にはじめて出会ったすすき野原。行き違っていた2人が「自分の気持ちに素直になろう」と決意したのは、やはりすすき野原での再会がきっかけでした!
「このシーンのことは印象に残っています。ここですすき野原を出したので、ラストでも出さなきゃと思ったんです」(柊さん)と、ラストではまた別の形ですすき野原が登場。
『料理のできる男の子っていいな〜』が
ヒーロー・久住くん誕生のきっかけ。
 バブル全盛の1985年、芸能界ではおニャン子クラブがデビューし、ごく普通の女の子が一夜でアイドルになってしまう“まんがみたいな出来事”が現実になっていた。同じ1985年にスタートした『星の瞳のシルエット』は、そんな浮かれた時代性とは真逆をいく作品だった。

 好きな男の子がいながらも、同じ相手を好きな親友のため、例え相手と自分が両思いであることがわかっても、ひたすらに恋心を秘め続ける少女が主人公の物語。誰もがあこがれるヒーローを、さえない女の子が射止めてめでたしめでたし……といういわゆる“まんがみたいな出来事”が起きなくても、少女たちを夢中にさせるだけの力がこの作品にはあったのだ。

 主人公の香澄(かすみ)が思いを寄せるヒーローは、同じ中学校に通う同級生で弓道部に所属する久住(くずみ)くん。人柄もよく、彼にあこがれる女子は香澄以外にも多数いるが、久住くんはずば抜けた運動神経を持つわけでも、群を抜いたカリスマ性があるわけでもない。どこの学校でもいそうな「知る人ぞ知る、ひそかに人気のある男の子」で、わかりやすいヒーロー像からはかけ離れている。

「私自身が完璧なヒーローに魅力を感じないんです。そういう男の子は他の人が描いているし。私がいいなと思うのは、自分が描いているような男の子ですね。久住くんのキャラクターは、『やっぱり料理のできる男の子っていいな〜』なんて考えていたところから生まれたんですよ(笑)

 主人公である香澄も、ある程度勉強はできるものの大きな特徴がなく、主人公にしては地味な人物なのかもしれない。それでもやはり香澄は少女まんがのヒロインなのだ。なぜなら、自分に久住くんと関係を深めるチャンスがやってきても、お互い両思いだとほぼ確信できても、香澄は絶対に真理子(まりこ)を裏切らない。

香澄みたいに清廉潔白に生きている人ってほとんどいないと思うんです。どう行動しても自分と親友との間に軋轢は生じるし、そうしたら自分の都合のいい道をとって、欲望に負けちゃうのが当たり前。でも、そこで負けてしまったら読者はついてきてくれないんですよ! だから、自分の欲望に負けないのが、香澄がヒロインである理由かな。他の少女まんがのヒロインと違って、派手ではないかもしれませんが、忍耐はあります」

真理子反対派が読者の大半を占める中、
意外な読者層からの反響も。
 ヒロインとヒーローの仲を邪魔する悪役の存在は、少女まんがで欠かせない役どころ。『星の瞳のシルエット』の場合、悪役は真理子ということになるだろうけれど、果たして真理子が完全な悪者かというと疑問が残る。

 香澄と久住くんの間に「幼いころのすすき野原での出会い」というアドバンテージはあったものの、香澄よりも前から久住くんのことを好きだったのは真理子だ。その真理子が、彼を思い続けるのも、香澄と彼がうまくいくことを快く思わないのも、考えてみれば当たり前のこと。真理子にすれば、香澄こそが悪者になる。

「大人になってみればそう考えられるんでしょうけどね。小学生の読者では理解できなかったらしく、連載当時は『香澄ちゃんをいじめないで!』と真理子を恨むお手紙がたくさん届きましたよ(笑)。でも、彼女は彼女の気持ちのままに生きているだけで、完全に悪い人なんだって描き方はしたくなかったんですよね

 柊さんの秘められたメッセージが届いていたのか、真理子を好きだという読者もわずかながらいたそう。『星の瞳のシルエット』にはもっと意外な読者もいたとか。

「男の子の読者が結構いたんですよ。中学生から高校生、大学生まで。『男子高で回し読みしてます』とか『妹が買っているのを読んでます』とか。男の子からの手紙は女の子みたいに『真理子が嫌い!』とかではなく、冷静に作品分析をしてくれてました(笑)。『星の瞳のシルエット』を題材に論文を書いて送ってくれた東大生の男の子もいましたよ。もっと他にやることがあるはずなのに(笑)」

 男性が読んでも耐えうる内容。それはこの作品が、女の子の夢物語に留まらず、人間の心理をきめ細かく描いているから。「携帯電話がなかった当時のほうが、伝えなきゃいけないことを大事にしていた気がします」と柊さんが言うように、この作品には、人と人が言葉を介して気持をやりとりすることの重要さ、難しさがあふれている。

 絵やストーリーの細かな設定が時代とともに移り変わっていっても、人間の考えることはそうそう簡単に変わらない。時代が巡る慌ただしさの中に忘れがちなこと、久々にこの作品に触れると思い出せそうだ。

*毎週木曜日更新予定
次回は7月10日 柊あおい『耳をすませば』


★以下の作品について、感想、当時の思い出などを募集しています。

柊あおい『星の瞳のシルエット』『耳をすませば』『銀色のハーモニー』

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