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宮脇明子
『ヤヌスの鏡』
集英社文庫
<コミック版>全3巻
極端に厳しい祖母タカによって、抑圧され続けてきた内気な少女・裕美。彼女の中には、やがてユミという名のもうひとりの暴力的な人格が生まれ、次々と犯罪に手をそめていく。人の心に潜む闇を描いた作者の出世作。文庫3巻には、少女時代の裕美の秘密を描いた『ヤヌスの鏡-秘伝-』と、タカばあさんの娘時代を描いた『ヤヌスの鏡-原説-』を収録。必見だ!
試し読みする!!

宮脇明子profile
みやわきあきこ。11月26日生まれ。広島県出身。高校生のとき、応募作品が賞をとり、1976年『なかよし』からデビュー。80年『ナービー(死霊の館)』で週刊セブンティーンで初連載。代表作に『ヤヌスの鏡』、『金と銀のカノン』『ダイエットは殺しの暗号!?』『名探偵保健室のオバさん』『流れ庭師仁和左衛門』など。現在は女性漫画誌『コーラス』『YOU』などで活躍中。

1981年はこんな時代でした!!
●事件・出来事……北炭夕張炭鉱ガス惨事、三和銀行オンライン詐取事件、チャールズ皇太子とダイアナ妃が結婚
●流行……レーザーディスク、ポスト・イット、粗大ゴミ、クリスタル族、ハチの一刺し、んちゃ、窓際のトットちゃん、フルムーン
●ヒット曲……ルビーの指輪(寺尾聡)、セーラー服と機関銃(薬師丸ひろ子)、ギンギラギンにさりげなく(近藤真彦)、お嫁サンバ(郷ひろみ)、ハイスクール・ララバイ(イモ欽トリオ)

今後、登場予定の作品
■小花美穂
『こどものおもちゃ』
ほか多数

バックナンバー
■紡木たく『ホットロード』(1)
■紡木たく『ホットロード』(2)
■紡木たく『みんなで卒業をうたおう』
■紡木たく『瞬きもせず』

■くらもちふさこ『おしゃべり階段』『いつもポケットにショパン』
■くらもちふさこ『東京のカサノバ』
■くらもちふさこ『天然コケッコー』(1)
■くらもちふさこ『天然コケッコー』(2)

■いくえみ綾『POPS』『彼の手も声も』
■いくえみ綾『I LOVE HER』
■いくえみ綾『バラ色の明日』(1)
■いくえみ綾『バラ色の明日』(2)

■池野恋『ときめきトゥナイト』(1)
■池野恋『ときめきトゥナイト』(2)

■一条ゆかり『有閑倶楽部』(1)
■一条ゆかり『有閑倶楽部』(2)
■一条ゆかり『有閑倶楽部』(3)
■一条ゆかり『デザイナー』
■一条ゆかり『砂の城』

■岩館真理子『えんじぇる』
■岩館真理子『遠い星をかぞえて』『子供はなんでも知っている』
■岩館真理子『黄昏』

■亜月裕『伊賀野カバ丸』(1)
■亜月裕『伊賀野カバ丸』(2)
■亜月裕『伊賀野カバ丸』(3)

■尾崎南『絶愛-1989-』
■尾崎南『BRONZE-ブロンズ-ZETSUAI since 1989』(1)
■尾崎南『BRONZE-ブロンズ-ZETSUAI since 1989』(2)

■槇村さとる『愛のアランフェス』(1)
■槇村さとる『愛のアランフェス』(2)
■槇村さとる『ダンシング・ゼネレーション』『N★Y(ニューヨーク)バード』
■槇村さとる『白のファルーカ』(1)
■槇村さとる『白のファルーカ』(2)

■多田かおる『愛してナイト』(1)
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■多田かおる『デボラがライバル』
■多田かおる『イタズラなKiss』(1)
■多田かおる『イタズラなKiss』(2)
■多田かおる『イタズラなKiss』(3)

■宮脇明子『ヤヌスの鏡』(1)
■宮脇明子『ヤヌスの鏡』(2)

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■宮川匡代『ONE−愛になりたい−』(2)

■松苗あけみ『純情クレイジーフルーツ』(1)
■松苗あけみ『純情クレイジーフルーツ』(2)
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■吉住渉『ハンサムな彼女』
■吉住渉『ママレード・ボーイ』(1)
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普段はおとなしい裕美(ひろみ)が、不良少女ユミに変身してしまう――そんな二重人格の少女を描いて一世を風靡した『ヤヌスの鏡』。今読んでも新しいサイコミステリーの先駆的作品だ! この異色作の続編が27年の時を経て、現在発売中の「コーラス7月号」でよみがえった!
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裕美のことが好きな高校の生徒会長の進藤は夜の町でユミに出会い、その秘密を知ってしまう。しかもユミは裕美の存在を知っているが、裕美はユミの存在を知らないという複雑な設定。ちなみにドラマで当時の人気アイドル杉浦幸が裕美とユミの二役を演じて話題に。「突っ込みどころ満載だったので、いつも楽しく見てました(宮脇先生談)」
二重人格についての資料もなかったので、
当時はすべて想像だけで描いてました。
 80年代初め、『週刊セブンティーン』に連載されて大ヒットした『ヤヌスの鏡』。裕美(ひろみ)とユミ、ふたつの顔を持つ二重人格の女子高生をヒロインに、人の心の闇に迫る本格サイコミステリーだ。
 ティーン雑誌に連載されているとは思えない重く暗いテーマに加え、迫力あふれる絵柄で少女たちの心をとらえ、当時ドラマ化もされるほど話題となった作品だ。

そもそも『二重人格の少女を描きたい』言ったのは、口から出任せみたいなものだったんですよね(笑)。ちょうどその頃、スパイ小説に凝っていて、それが二重人格の話だったんです。冷戦時代、アメリカの女優さんを人工的に二重人格にして、片方の人格をスパイに仕立て上げるという怪しげなお話で。それで興味をもったんです。

 タイトルは『何にしよう』って考えていたとき、そういえばギリシャ神話に顔がふたつある神様が出てくるなって思ったんですね。それでギリシャ神話の本で探して、“ヤヌス”という神様の名前にしました」

 とはいえ、今でこそ二重人格やトラウマといったテーマはポビュラーだが、当時は世間一般ではあまり知られていなかった。
 二重人格の原因に関しても、親からの虐待など、極度に抑圧された人間がその苦しみから逃れるため、もうひとつの人格を作り出すということが、今でこそわかってきたが、当時の宮脇さんはそんな知識を何も知らないまま描いていた。

 それなのに今読んでも、まるで精神科医が考えたかのように、ピタリと当てはまる人間関係。異常なまでに厳しい祖母から、「おまえの母親はふしだらだ!」「おまえの父親は鬼だ!」と小さい頃から人格を否定されつづけた結果、裕美からユミという別人格が生まれたという設定を考え出したのだ! その想像力の豊かさと先見の明には驚くばかり。

「ほとんど資料もなかったので、全部想像で描いたんです。でもその割に見当違いじゃなかったなって、あとでホッと安心しました(笑)」

恐ろしい顔が読者に評判だったタカばあさん。
それでどんどん怖くなっていっちゃった(笑)。
 おとなしく内省的な裕美が、暴力的な不良少女ユミに変身する――そんなミステリアスな設定はとてもスリリングだったのと同時に、狂気を感じさせるユミのキョラクターは読者にとって、とても刺激的だった。
「こんな地味な自分じゃなくて、もっと華やかな自分に変身したい!」という、女のコなら誰でも持っている変身願望とリンクしたからに違いない。

「とても不思議なんですよね。当時『週刊セブンティーン』に描かれていた先生方の作品を見ると、恋愛まんがだったり、学園ものだったり。主人公も清純派の女のコだったので、私の作品はものすごく異質で浮いていた。こんな暗い作品で大丈夫なんだろうかって、いつも思ってました(笑)。でも、それに共感してくれる人が多かったということは、潜在的な需要があったということなんでしょう」

 連載が開始した翌年の82年には、俳優の穂積隆信が自分の娘の非行を描いた『積み木くずし』が大ベストセラーになるなど、家庭の闇がちょうど注目され始めた頃。そんな時代の徴候をこの作品はいち早くとらえていたのだ。

 さらに話題となったのがエキセントリックな祖母のタカ。裕美を品行方正にしつけようと日記を盗み見たり、「いやらしい学生たちに天罰がくだるんだ!」と罵声を浴びせたり。どんどん鬼ババと化していく姿は怖いを通り越して、なんだか癖になりそう!?

「本当はタカばあさんはあそこまで怖くなる予定はなかっんたです。でも担当編集のAさんが『おばあさん、評判いいよ。もっと怖くしよう。じゃんじゃん描いて』って(笑)。それでどんどん怖くなっていっちゃったんですよね。

 そういえば当時、アシスタントさんと『ユミは絶対タカばあさん似だよね』ってよく言ってました。ユミはおばあさんのキツい性格を受け継いでるんだと思います」(つづく)

*毎週木曜日更新予定
次回は6月19日 宮脇明子『ヤヌスの鏡』(2)


★以下の作品について、感想、当時の思い出などを募集しています。

宮脇明子『ヤヌスの鏡』

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