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槇村さとる
『ダンシング・ゼネレーション』
集英社文庫
<コミック版>全2巻
ニューヨークで活躍する天才ダンサー神崎に才能を見出され、踊る楽しさに目覚めていく愛子。数々の挫折を克服し、やがて一流のダンサーとして成長していく。ダンス仲間・羽佐間慎(はざましん)との恋を育みながらも、神崎との特別な結びつきを感じてしまう愛子の恋の行方も気になる!?
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槇村さとるprofile
1956年、東京都生まれ。73年、『別冊マーガレット』でデビュー。79年、『愛のアランフェス』でブレイク。以降、ダンスやフィギュアに題材をとった作品を多く残す。90年からは『ヤングユー』に舞台を移し活動。働く女性の自立と葛藤をリアルに描き、女性の圧倒的な支持を得た。現在は『ユー』にて『Real Clothes』を連載中。代表作に『おいしい関係』『イマジン』『Do Da Dancin'』など。

1981年はこんな時代でした!!
●事件・出来事……北炭夕張炭鉱ガス惨事、三和銀行オンライン詐取事件、チャールズ皇太子とダイアナ妃が結婚
●流行……レーザーディスク、ポスト・イット、粗大ゴミ、クリスタル族、ハチの一刺し、んちゃ、窓際のトットちゃん、フルムーン
●ヒット曲……ルビーの指輪(寺尾聡)、セーラー服と機関銃(薬師丸ひろ子)、ギンギラギンにさりげなく(近藤真彦)、お嫁サンバ(郷ひろみ)、ハイスクール・ララバイ(イモ欽トリオ)

少女まんがアーカイブ 何十年たっても忘れられないあのセリフ、あの場面。
そんな永遠の名作を、作者のインタビューや担当者の裏話などとともに紹介するコラムです。
ブロードウェイ・ミュージカルが日本の劇団で公演されたり、映画『フラッシュ・ダンス』が大ヒットするなど、ジャズダンス全盛時代だった80年代。憧れの地・ニューヨークで活躍する日本人ダンサーを描いたこの作品を読んで、読者は胸を熱くした!
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ニューヨークが最高にカッコよかった時代。ニューヨーク・ダンスカンパニーの神崎によって、磨かれていく愛子。そしてその中で育まれる、友情、そして恋。「自分でダンスをやってなかったら、単純に外から見たポーズや演技の流れを描くことはできても、踊る楽しさは描けなかったと思います」
私の中に、『踊るって、こういうことなんだ!』という
実感があったから、ダンスまんがが描けたと思います。
 現在、雑誌『office YOU』で連載中の『Do Da Dancin'』をはじめ、数々の“ダンスもの”を描いている槇村さんだが、初めてダンスを描いたのがこの作品。

 高校生の愛子(あいこ)が天才ダンサー・神崎(かんざき)に才能を見出だされ、踊りの世界に目覚めていく『ダンシング・ゼネレーション』。そして、その続編となる『N★Y(ニューヨーク)バード』では、ニューヨークでプロとして活動を始めた愛子が、様々な困難を乗り越えて、一流のダンサーになっていくまでを描いている。

「当時はジャズダンスというのが日本に上陸してきて、すごく流行ってたんです。それでスポーツものの延長ということで描いてみることにしました」と槇村さんも言うように、当時、日本ではミュージカル公演がブームになるなど、ダンス熱がヒートアップ。この作品を読んで、「カッコイイ!」「私も踊りたい!」とダンスを習い始めた人もいたに違いない。

 じつは槇村さん自身は、ブーム以前からダンスが好きで習っていたのだそう。
「小さい頃から、ずっと踊りをやりたくて、20歳くらいのときにモダンバレエを習ったのが最初ですね。そしてこの作品を描いていた20代の頃はずっとジャズダンスを習ってました。やっぱり自分がダンスをやっていたから、この作品が描けたと思います。『踊るって、こういうことなんだ!』という実感がなかったら描けなかったと思います

 そんな言葉の通り、全編にわたってほとばしるのは、踊りへの情熱とあふれるエネルギー。躍動感あふれるダンスシーンを見ていると、気持ちがリフレッシュされて、なんだか若返りそう!?

踊るって、何かカチッと固まったものではなくて、もっと湯気が立つような流動的なもの。じつは今もクラシックバレエを習っているんですよ。といっても、ちっちゃな教室ですから、愛子たちとはぜんぜんレベルは違うんですけど、それでもみんなで踊っていると、なんとも言えない恍惚感がある。

 だから仕事で身体がガチガチになって、前頭葉もコチコチになって、もう死にそうになっていても、スタジオに行って踊るとぜんぜん変わるんです。ハアハア言って、本当にしんどいんですけど、頭のスイッチを切ってくれるので、肉体が解放される感じ。身も心も生き返りますね」

槇村さとる
『N★Y(ニューヨーク)バード』
集英社文庫
<コミック版>全2巻
ニューヨークのトップ・ダンサー集団『ニューヨーク・ガンパニー』の団員として活躍する愛子。しかし神崎のもとでは、結局、自分はただの操り人形でしかないと退団を決意。自らブロードウェイの厳しい生存競争の中に身を投じていく。そして愛子が最後に選ぶのは慎か神崎か!? 興味津々。
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1982年はこんな時代でした!!
●事件・出来事……日航機の羽田沖墜落、ホテル・ニュージャパン火災、テレホンカード使用開始
●流行……CDプレイヤー、カロリーメイト、無印良品、おっとっと、逆噴射、心身症、ネクラ、ルンルン、E.T.、芸術は爆発だ!
●ヒット曲……赤いスイートピー(松田聖子)、待つわ(あみん)、ハイティーン・ブギ(近藤真彦)、めだかの兄妹(わらべ)

今後、登場予定の作品
■小花美穂
『こどものおもちゃ』
ほか多数

バックナンバー
■紡木たく『ホットロード』(1)
■紡木たく『ホットロード』(2)
■紡木たく『みんなで卒業をうたおう』
■紡木たく『瞬きもせず』

■くらもちふさこ『おしゃべり階段』『いつもポケットにショパン』
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■いくえみ綾『I LOVE HER』
■いくえみ綾『バラ色の明日』(1)
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■岩館真理子『遠い星をかぞえて』『子供はなんでも知っている』
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名作がいっぱい!集英社コミック文庫

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いつも暖かく見守ってくれる慎ちゃん。一方、自分を絶望に突き落としながらも、神崎のダンサーとしての魅力に抗うことができない愛子。ふたりの間で激しく揺れ動く。「あぶないところのない慎ちゃんより、クールでミステリアスな神崎の方が、描いていて楽しかったし、私は好きでしたね」
かなりいい線いってる感じなのに、恋バナが生まれない。
恋愛まんがにならないって「プロとしてどうよ」と悩みました。
 普通の高校生から、ニューヨークへ旅立つヒロインの萩原愛子(はぎわらあいこ)。明るく元気な性格だが、「相変わらずヘタレで、亜季美(『愛のアランフェス』の主人公・あきみ)のバリエーションでしかない。いつもパニクっててたいへんそう(笑)」と槇村さん。
 そしてそんな愛子同様、槇村さんも当時こんな悩みを抱えていた。

この後、しばらく続く苦しみなんですけど、どうしても“恋愛まんが”にならないんです。主人公が自分の好きな道を進んでいって、その中で恋愛もあればいいなって思って描いてるんですよ。でも、いつもそれがうまくいかない。いろいろな状況を整えてあげて、ふたりきりにしてるのに、お互い指1本触りもしない(笑)。

 こんなに男の子も女の子も出てきていて、かなりいい線いってる感じなのに、何ひとつ恋バナが生まれないって、プロとしてどうよって思ったわけです。何か大事な話が出てきてないなぁと。それもあって続編の『N★Yバード』を描いたんですけど、結局はうまく描けなかったですね」

 どこか幼さの残る愛子。その愛子と惹かれあっているのに、恋愛関係になれない慎(しん)ちゃん。「いつまでたっても“わんこ(犬)キャラ”で、生身の男臭さが出てこない」のだ。唯一、成熟した大人の男として登場する、天才ダンサーの神崎。
 彼と愛子とは大人の関係になるチャンスがあったのだが、「でも、神崎と愛子がくっつくというのは、当時の『別マ』ではあってはならないことだった」のだとか。

「それは編集部に言われたとか、そういうことじゃなくて、自分の中の『別マ』ということだったと思います。自分で作っちゃってる枠でしかない。で、『そんなんじゃつまんないよ』って思うけど、その枠を自分では破れない。結局はうまく少女まんがの形の中でおさめちゃって、ちょっとホッとするみたいな感じだったかな。

 自分はそろそろ大人の入り口にさしかかっているので、そういう少女まんがの枠と合わなくなってきていたんですね。それで現実の自分と描いている世界がギシギシと音をたてるようになってきていました」

まんがはまんがなんだからと切り離して考えられない。
まんがと自分がものすごく連動しちゃうことに気付きました。
 さらにもうひとつの原因は自分自身。「自分自身は恋愛でじたばたやってるんです。でも、ぜんぜん整理できないから、うまく描くこともできなかった」と槇村さん。

「結局、私の場合、まんがはまんがなんだからと切り離して考えられない。ものすごくまんがと自分が連動しちゃうんだなと。自分の未熟さとか、『こんな風に見せたい』という虚栄心とか、そういうものがもろにまんがに影響しちゃう人間なんだっていうことがわかりました。自分で自分のことを大人だと思ってたけど、ぜんぜん大人じゃなかった。それを知るきっかけになりましたね」

 でも、そうした葛藤は一種のパワーとなって、まんがに映し出されていたのだろう。閃光のように燃え上がるダンサーたちの青春は、読者に鮮烈な印象を残してくれた。

「当時はアンケートは低かったと思うんですけど、あとになって『N★Yバード』が好きでした、って言ってくれる人が意外と多かったんです。私は『描けねぇ〜』ってゲロゲロになってたけど、みんなは何かを感じて、覚えてくれてた。それはとってもうれしかったですね」

*毎週木曜日更新予定
次回は4月10日 槇村さとる『白のファルーカ』(1)


★以下の作品について、感想、当時の思い出などを募集しています。

槇村さとる『愛のアランフェス』『ダンシング・ゼネレーション』『N★Y(ニューヨーク)バード』『白のファルーカ』

また、上記の作品以外にも、取り上げてほしい懐かしい作品がありましたら、
作品名と感想をお書き込みください。
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