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尾崎南
『絶愛-1989-』
集英社文庫
<コミック版>全3巻
人気アーティスト・南條晃司が幼い頃に出会った鋭い瞳と褐色の肌を持つ少女・イズミ。偶然出会ったサッカー少年・泉拓人こそ、晃司が“少女”だと思いこんでいたイズミの正体だった。男だとわかっていながらも、拓人にひかれる気持ちをおさえられない晃司。しかし、晃司との出会いは拓人が抱える壮絶な過去の傷を蘇らせることにもなり、拓人は晃司を拒絶する。傷つけあいながらも離れることができない2人の姿から、性別を超えた愛の形を提示したセンセーショナルな少女まんが作品。
試し読みする!!

尾崎南profile
2月27日、神奈川県生まれ。1989年に『3days』でマーガレットにてデビュー。同年に『絶愛-1989-』の連載を始める。その後91年より『BRONZE ZETSUAI since 1989』を連載開始。『BRONZE ZETSUAI since 1989』は14巻まで刊行されている。それまでの少女まんがとは一線を画したストーリーと洗練された画風は多くの熱狂的なファンを持つ。

1989年はこんな時代でした!!
●事件・出来事……昭和天皇が崩御、昭和から平成に。消費税スタート(当時の税率は3%)。東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件で宮崎勤逮捕。天安門事件、ベルリンの壁崩壊。宇野内閣69日間の短命に終わる。
●話題、ヒット商品……中森明菜が自殺未遂。テトリス。ノルウェイの森。ランバダブーム。『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』放送開始。
●ヒット曲……Diamonds(プリンセスプリンセス)。とんぼ(長渕剛)。淋しい熱帯魚(Wink)。大迷惑(ユニコーン)。
●流行語……24時間タタカエマスカ。セクシャル・ハラスメント。オバタリアン。「NO」と言える日本。

今後、登場予定の作品
■小花美穂
『こどものおもちゃ』
ほか多数

バックナンバー
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■岩館真理子『遠い星をかぞえて』『子供はなんでも知っている』
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■亜月裕『伊賀野カバ丸』(1)
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■尾崎南『絶愛-1989-』
■尾崎南『BRONZE-ブロンズ-ZETSUAI since 1989』(1)
■尾崎南『BRONZE-ブロンズ-ZETSUAI since 1989』(2)

■槇村さとる『愛のアランフェス』(1)
■槇村さとる『愛のアランフェス』(2)
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■多田かおる『デボラがライバル』
■多田かおる『イタズラなKiss』(1)
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拓人の笑顔に乙女のようにときめいてしまう晃司。そして思わず抱きしめられてテレるピュアな拓人。こんな描写、他の少女まんがでは絶対に見られない!
「連載について、世間の反応は“『マーガレット』でこんなのが始まるなんて!”という感じだったかもしれないけど、一般の読者の方々の反応は好意的だったと思います。気のせいかもしれませんが(笑)」
「いいんだろうか?」と迷ううち、
猫だましのように開始していた連載。
日本では元号が昭和から平成に移り変わり、ドイツではベルリンの壁が崩壊した1989年。世界的に何かが大きく変わっていったその年、『マーガレット』で少女まんがの概念をガラリと変えてしまうひとつの作品がはじまった。それが尾崎南さんの描く『絶愛』だ。

『絶愛』がそれまでの少女まんがと異なるところ。それはこのまんがの中で愛し合う2人が男どうしであること!

当時ももちろん男どうしの恋愛を描くまんがは存在していた。けれどもそれは王道の少女まんがとは別ジャンルのもので、今で言うBL=ボーイズラブ作品を好む読者がこっそりと楽しむという感覚だったはず。そんな中、『絶愛』が『マーガレット』という雑誌で連載開始されたことは、少女まんが界を揺るがす革命的な事件だった。

当時の『マーガレット』での連載作品というと、メインはやはり学園モノやスポーツモノ。若干設定にひねりのあるものが目立っていたものの、やはりここで男どうしの恋愛を描いたまんがを掲載するとなれば、編集部と尾崎さんの間では相当込み入ったやりとりがあったのでは?

連載開始当時について、尾崎さんはこう振り返る。「当時の担当さんがかなり破天荒な方だったんですよ(笑)。私は直接編集部とやりとりすることなく、担当さんが猫だまし的に始めちゃったんじゃないかと……。知らないんですよホントに!!(笑)」

尾崎さん自身は「連載前の読みきりを描いていたあたりは“(これを描いてしまって)いいんだろうかマジで”と思っていました」と言う。

しかし、担当編集者が巧妙な“猫だまし”的テクニックを駆使して難関をスルーしたのか、それともそもそも『マーガレット』編集部の態勢が非常に柔軟な姿勢を持っているのか、『絶愛』は無事に『マーガレット』誌上で1990年まで連載され、読者である少女たちに衝撃と感動を与えることになったのだ。

知らないから夢を見られる。
それが男どうしを描くきっかけに。
『絶愛』のメインとなる登場人物は、人気アーティストにして元暴走族という経歴を持つオレ様系男・南條晃司(なんじょうこうじ)。晃司が想いを寄せることになるのが、天才的なサッカーの才能を持ちながら、過去に母親が起こした事件のため、ひっそりと生きる純粋な少年・泉拓人(いずみたくと)

女たらしだったはずの晃司がどうしようもなく拓人にひかれ、彼から拒絶されながらも思いをおさえられずにいる姿は、他の少女まんがで恋に苦悩する登場人物とはひと味違っていた。

自分は芸能人だが、相手は一般人という障害。拓人の抱える過去という障害。そして何より自分たちは男どうしだという障害――。そんな障害を乗り越えて愛を貫こうとする晃司の姿。

『絶愛』が、ただ男どうしの恋愛を描いただけのまんがなら、知らない世界を見てみたいという読者の好奇心を満たしただけで終わっただろう。しかし、実際手にとった人たちはもっと別の部分でこの作品にひきつけられた。だからこそ『絶愛』は今も語り継がれる名作になっている。

そもそもなぜ男どうしの恋愛を描こうとしたのか。根本的な疑問を尾崎さんにぶつけてみた。

「男どうしが好きで描きたいというよりも、単に男女の恋愛には絶望していただけですね。若かったのに(笑)。私は女なので、男の人の本心はわからない。だから恋愛において夢が見れたんじゃないでしょうか。男女の関係は、自分でわかっているから夢が見れないんですね」

少女まんがを読んで、夢を見たい。少女まんがを読む人たちの一番の動機。それを満たす要素が『絶愛』にはきちんと存在していた。

少女まんがには欠かせない“夢”の部分。それがこの作品では、女性である読者が現実で決して体験することのできないものだった。そこにひかれてこの作品のファンになった人たちも多かったのではないか。

*毎週木曜日更新予定 次回は2月28日
尾崎南『BRONZE-ブロンズ-』(1)


★以下の作品について、感想、当時の思い出などを募集しています。

尾崎南『絶愛-1989-』『BRONZE-ブロンズ-』

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