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岩館真理子
『黄昏』
集英社文庫
<コミック版>全1巻
小さな幸せに満足しながら老後を過ごす両親。そんな親を「小さく」て「みすぼらしい」と、バカにしている大学生の息子・拓郎。やがて両親との別れはあっけなくやってくる……。「親」と「子」の永遠に埋められない溝を対比的に描き出した珠玉の短編。
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岩館真理子profile
北海道生まれ。
1973年、『落第します』で、週刊マーガレットよりデビュー。92年『うちのママが言うことには』で第16回講談社漫画賞を受賞。繊細な感性から紡ぎ出されるシュールな世界観は、幅広いファンに支持されている。現在は雑誌・YOUを中心に活躍中。

1993年はこんな時代でした!!
●事件・出来事 細川連立内閣発足、北海道南西沖地震で奥尻島に被害、皇太子結婚、Jリーグ開幕
●流行 ナタ・デ・ココ、ブルセラ、インターネット、コギャル、ポケベル、聞いてないよォ、不良債権、リストラ、ヘアヌード
●ヒット曲 島唄(THE BOOM)、ロマンスの神様(広瀬香美)、エロティカ・セブン(サザンオールスターズ)、愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない(B'z)

今後、登場予定の作品
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週刊マーガレットから、ぶ〜け、ヤングユーと活躍の場を移してきた岩館さん。『黄昏』はまさに大人の心に響く極上の短編に仕上がっている。
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コタツに入って、金魚を飼う相談をする老いた両親。本当にかわいらしい老夫婦なのだが、「またくだらない話をしている」と、その素朴さを逆にうとましく思う大学生の拓郎。やせたお父さんと太めのお母さんという組み合わせは、岩館さんのお得意パターン!?
悲しいほど親は親であり、子は子である。
そんな強い思いを表現したかったんです
 岩館さんといえば、やはり短編の名手。『黄昏』も家族をテーマに描かれた珠玉の名作だ。

「自分の親をモデルにしたわけではありませんが、親への思いを描きたかったこと。それから短編を描きたくて、この作品を描こうと思いました」。

 小さな幸せに満足しながら、慎ましやかに生きる老いた両親。そんな親を「小さく」て「みすぼらしい」と、蔑みの目で見ている大学生の息子・拓郎(たくろう)の視点を通して描くことで、「親」と「子」の永遠に埋められない溝を対比的に描き出す。

「最近は友達親子だったり、アンチエイジングな母親がもてはやされたり、見た目や形ばかりを取り沙汰される傾向にありますが、私にとっては、親は悲しいほど親であり、子は子であるという思いが強いので、それを表現したかったのかもしれません」と岩館さん。“親の心、子知らず”いう言葉の通り、親の愛情をよそに、誰もが拓郎と同じように、親に対して残酷な気持ちを抱いたことがあるはず。そしてたいていはその後悔を伝えることもなく別れがやってきて、気がつけば、自分は親になっている……。

 その連鎖はたぶんずっと続くもので、結局、人はその哀しみを抱えて生きていくしかないのだ。拓郎の両親が大事に飼っている2匹の金魚のように、子どもは金魚鉢の中で、永遠に生き続けることができないのだから。

 そんなせつない真実を金魚や砂浜といった美しいモチーフを使いながら、幻想的に描きだしてしまうところが岩館さんの感性の鋭さなのだろう。

「感情をストレートに素直に描くことがあまり得意でなく、避けてきたところもあり、この作品で、そのカラを少し破りたいともくろんでいたのですが、やはり弱いなぁと思いました」と言うが、わずか33ページに凝縮された世界のインパクトは強烈で、人生の刹那をしみじみと感じてしまう作品だ。

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両親がかわいがっていた金魚・オードリーとグレース。美しい2匹の姿が両親の穏やかで幸せな日々の象徴として、ストーリーの要所要所に幻想的に描き出される。「アシスタントさんは『金魚を描くのが楽しい』と言ってましたね」
これからも大人でも、子どもでも読めること、
そして心を込めて描くことを大切にしたい
『黄昏』のあとがきの中で、長編が苦手な理由として「主人公とうまくつきあうことができない」とその理由を挙げている。つきあいが長くなると、主人公との距離感がつかめなくなって、コントロールできなくなってしまうのだそう。

「その結果、連載ものはおおむね後半あたりにネガティブな方向に動いていってしまう癖があるような気がします。それがいけないとは思わないのですが、もう少し程よいところで終えたほうが良かったのでは……と後悔することが多々ありました」。

 というわけで、過去の作品に対する自身の評価は低い。

「人の心を動かすには“熱”のようなものが必要なのだと思います。若い頃の作品には、まだしもそれがあったような気がしますが、でも、今となっては気恥ずかしいばかりで、作品を読み返せば自爆してしまいかねません(笑)。過去の作品を否定するのは、昔の作品を好きだった方に申し訳ないのですが、作品に関しては、前だけを見て行くしかないと思っています」。

 つまり気恥ずかしさは、岩館さんが進化し続けている証拠でもあるのだ。

 繊細で緻密な絵に関しても、「正直言って、私はまんが家さんの中で、いちばん絵が下手だと思っています。あと何年、この仕事が続けられるかわかりませんが、もう少しうまくなる努力は続けたいと思っています」と岩館さん。

「これからも大人でも、子どもでも読めること。そして心を込めて描くことを大切に、作品を作っていきたいと思っています」。

 飽くなき向上心と創造力で、これからも私たちを夢の世界へ連れて行ってくれることだろう。

*毎週木曜日更新予定 次回は1月17日
亜月裕『伊賀野カバ丸』


★以下の作品について、感想、当時の思い出などを募集しています。

岩館真理子『えんじぇる』『遠い星をかぞえて』『子供はなんでも知っている』『黄昏』

また、上記の作品以外にも、取り上げてほしい懐かしい作品がありましたら、
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