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いくえみ綾
『POPS』
集英社文庫
<コミック版>全2巻
“たらし”で有名な三島と付き合うことになった薬子。“二人の恋は今から”というとき、三島が忘れられない女・硝子と続いている事実が発覚。それでも、自分の「好き」という気持ちを貫く薬子……ふたりの揺れ動く心はもちろん、取り巻く人々の気持ちの動きも胸に突き刺さる!!
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いくえみ綾profile
1964年10月2日、北海道生まれ。1979年『マギー』で別冊マーガレットよりデビュー。このとき、ナント中学3年生!! 以降、数々の名作を発表。2000年に発表した『バラ色の明日』で第46回小学館漫画賞を受賞。ちなみに“いくえみ綾”というのは、くらもちふさこ先生の作品に出てくる登場人物の名前を組み合わせたものなんだとか!!

少女まんがアーカイブ 何十年たっても忘れられないあのセリフ、あの場面。
そんな永遠の名作を、作者のインタビューや担当者の裏話などとともに紹介するコラムです。
ハッピーなだけじゃない。恋する苦しさや切なさ。そして恋するふたりの周りにいる人々の心の動きまで……リアルな恋愛描写で同世代の女子のハートをギュンギュン締め付けた2作品を紹介!!
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「忘れられない女がいる」と一度は三島にフラれながらも「それでもいい」と再度告白。「情けない」「悔しい」でも「好き」。正直に吐き出される薬子の想いが胸を刺す。いくえみ作品ならではの“言葉の魅力”も思う存分発揮。モノローグやセリフのひとつひとつが印象的。
読者からの共感を初めて強く意識し制作。
そして「思うつぼ(笑)」な結果を呼んだ名作『POPS』
女たらしの三島(みしま)。そんな彼に惹かれていく薬子(くすこ)。彼の親友である湖太(こた)に「泣くのはおまえだからな」と忠告されても、三島に“忘れられない女”がいようとも、自分の前から姿を消そうとも……薬子はひたむきに彼を想い続ける。

“惹かれてはいけないとわかっていても惹かれてしまう”止まらない想い。
“あんたの「好き」より、あたしの「好き」のほうがもっと大きい”胸の痛み。
“あたしを見つけないで。気づかないふりしてて”友達なんかに戻れない強い想い。
作品に描かれる、リアルな恋の切なさに「わかる!わかる!」と多くの女子が共感。
ページをめくるたびに、深いため息をつき、胸を焦がした人も多いハズだ。

「この作品までは“自分の好きなものを”っていう意識のもとに描くことが多かったんですけど。この頃から“みんなに共感してもらえるものを”って、初めて強く意識して描くようになったんですよね」

ストーリーはもちろん、リアルな共感を呼んだのがキャラクター達だろう。主人公の「好き」「嫌い」だけで終わらず、友達想いが故にキツイ言葉を投げかけてしまう湖太や「ずるい」とわかりつつ三島を切り離せない硝子(しょうこ)……登場人物ひとりひとりの感情が丁寧に描かれている。そのため、読み返すたびに自分の心情にあわせて共感する人やシーンが変わっていく。いくえみ作品ならではの魅力はこの頃から健在!

「作品を描くときは、いつもストーリーよりもキャラクター先行なんですよ。まず“こういう人を描きたい”っていうのをカタチにして。“この人がこんなことをしてこんな感じになる”って、ストーリーが出来上がって行くんです」

今作で、まず最初に設定されたのが三島だ。

「高校1年生のときに好きな男の子がいて。その人はヤンキーだったんだけど、ちょっと他の人と違うなって思える部分があったんですよ。成績はそんなによくないんだけど頭がよかったりして。その彼のことがなんとなく印象に残っていて。彼をモデルに“三島”が出来上がっていったんです

実は「自分の思い出の人がモデルになるのは珍しいパターン」なんだとか。

キレイで目立つ存在でありながら奥手。気が強くも健気で不器用な薬子は?
「当時、中山美穂のドラマがはやっていて。彼女の髪型がかわいいなぁと思っていたんですよ。その髪型を真似て描いてみたら……いつのまにか薬子ができあがっていた(笑)」

読者からの共感を強く意識していたため「振り返ってみると、ネームへの力の入り具合が今よりも強かった」。その結果「思うつぼ(笑)」な共感を呼んだ『POPS』。
恋する切なさは今でも色あせない!

いくえみ綾
『彼の手も声も』
集英社文庫
<コミック版>全2巻
親友の明代の紹介で、健ちゃんと知り合った奈緒。次第に彼に惹かれていくが、同時に明代も彼に恋していることを知ってしまう。初めての恋の痛みに戸惑う奈緒。自分の心に渦巻く“嫉妬”に悩まされる明代……ふたりの友情と恋愛の着地点は!? 恋の切なさを絶妙に描いた青春ラブストーリー。
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1988年はこんな時代でした!!
●事件、出来事……青函トンネル開通。東京ドーム完成。ソウルオリンピック
●世相、話題……大竹しのぶと明石屋さんま結婚。教師びんびん物語。渋カジ
●ヒット曲……『抱きしめてTONIGHT』(田原俊彦)『パラダイス銀河』(光GENJI)『乾杯』(長渕剛)
●ヒット商品……ドラゴンクエストIII。シャネル。フローレンス・セイコ。ノルウェイの森
●流行語……ユンケルンバでガンバルンバ。しょうゆ顔、ソース顔。5時から男

今後、登場予定の作品
■小花美穂
『こどものおもちゃ』
ほか多数

バックナンバー
■紡木たく『ホットロード』(1)
■紡木たく『ホットロード』(2)
■紡木たく『みんなで卒業をうたおう』
■紡木たく『瞬きもせず』

■くらもちふさこ『おしゃべり階段』『いつもポケットにショパン』
■くらもちふさこ『東京のカサノバ』
■くらもちふさこ『天然コケッコー』(1)
■くらもちふさこ『天然コケッコー』(2)

■いくえみ綾『POPS』『彼の手も声も』
■いくえみ綾『I LOVE HER』
■いくえみ綾『バラ色の明日』(1)
■いくえみ綾『バラ色の明日』(2)

■池野恋『ときめきトゥナイト』(1)
■池野恋『ときめきトゥナイト』(2)

■一条ゆかり『有閑倶楽部』(1)
■一条ゆかり『有閑倶楽部』(2)
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■一条ゆかり『デザイナー』
■一条ゆかり『砂の城』

■岩館真理子『えんじぇる』
■岩館真理子『遠い星をかぞえて』『子供はなんでも知っている』
■岩館真理子『黄昏』

■亜月裕『伊賀野カバ丸』(1)
■亜月裕『伊賀野カバ丸』(2)
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■尾崎南『絶愛-1989-』
■尾崎南『BRONZE-ブロンズ-ZETSUAI since 1989』(1)
■尾崎南『BRONZE-ブロンズ-ZETSUAI since 1989』(2)

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■槇村さとる『愛のアランフェス』(2)
■槇村さとる『ダンシング・ゼネレーション』『N★Y(ニューヨーク)バード』
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名作がいっぱい!集英社コミック文庫

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効果的に使われる背景とモノローグやセリフが作品全体を詩的な印象に。「『I LOVE HER』でも、近所の高校や通学路をモデルにして描いたり。この作品から、取材をちゃんとするようになったんですよ(笑)」
『彼の手も声も』の
教室の空気や匂いまでもが漂う校舎の風景は
母校への取材から生まれた。
絵を描くことが大好きな内気な女の子、奈緒(なお)。彼女は親友の明代(あきよ)が所属する陸上部の先輩・健(けん)ちゃんに恋をする。しかし、明代もまた健ちゃんに恋をしていた……。

“友情も恋も失いたくない”迷う心や“友達の幸せを素直に喜べない”正直な気持ち。同じ人を好きになったことで交錯するふたりの“恋心”。人を好きになることで初めて覚える「不安」や「胸の痛み」がズキュンと胸に突き刺さる!! ひとりの女の子が恋を知ることで少しずつ大人になっていく……切なさや寂しさが絶妙に描かれている作品でもある。

「この作品は『POPS』のすぐ後に始まった連載なんですけど。『POPS』までの作品って、ビックリするくらい背景を描いていないんですよ(笑)。投稿者さんからの“背景はどうやって描くんですか?”なんて質問にも“私のまんがに背景はありません”と堂々と答えていたりして。今思うと、よくもそんな恥ずかしいことがいえるなって感じなんですけど」

そんないくえみさんが「“背景を描く楽しさ”に目覚めた」のがこの作品(笑)。

「自分が通っていた母校に取材に行きまして。パシャパシャッと校舎の写真を撮っては背景の材料を集めたんです。描いていくうちに“こうするとうまく描ける”っていうコツがだんだんわかってきて。どんどん背景を描くのが楽しくなっていったんですよね

また、その切り取り方がうまい!! 描かれた背景からは、机の感触、教室に差し込む光、階段に座ったときのヒンヤリとした感触、そして教室に漂う空気までもが読み手に届いてくる。「ああ、学校ってこうだった」と、自分の母校でもないのにむしょうに懐かしく甘酸っぱい気持ちに襲われるのだ。

「陸上部に走り高飛びで有名な選手がいたので。その選手の練習風景を撮影させてもらったりもしましたね」

その行動は、まるで主人公・奈緒のよう(笑)。奈緒といえば、幼くて内気で控えめで……こういう性格の女の子が主人公になるのは、いくえみ作品では珍しい?

「そうなんですよね。なんでこういう子を主人公にしてしまったのか……今では全く思い出せないんですけど(笑)」

思いのほか「動かしにくかった」主人公。実はこのまんが“産みの苦しみ”を味わった作品でもあるんだとか。

「『POPS』に引き続き“共感するものを”っていう気持ちで描いていたんだけど。それが苦しくなってしまったんですよね。そんな状態なもんだから、ネームをあげても担当さんからは“まあ、これでいいです”的な反応しか返ってこなかったりして。自信はなくなるわ、悔しいわ、情けないわで……作業中にうわっと泣き出したい気持ちになったことも。当時は、友人が手伝いに来てくれていたので。彼女の前では恥ずかしいから、トイレにこもってシクシク泣いたこともあるんですよ(笑)」

その結果「読者の意見を気にしすぎるのはもうやめよう」と思うようになったといういくえみさん。

「この連載が終わった直後に『10年も20年も』っていう読み切りの作品を描いたんですけど。“読み切りだし、自分の好きなものを描こう”と肩の力を抜いて描いたんです。そこで、初めて“本当に描きたいもの”が見えてきたんですよね

ある意味『彼の手も声も』は、いくえみさんにとって最後の王道ラブストーリー!?

これを機に、作品は次第に恋愛フォーカスから人間フォーカスへと変わって行く。

*毎週木曜日更新予定 次回は9月6日 いくえみ綾『I LOVE HER』

★以下の作品について、感想、当時の思い出などを募集しています。

いくえみ綾『POPS』『彼の手も声も』『I LOVE HER』『バラ色の明日』

また、上記の作品以外にも、取り上げてほしい懐かしい作品がありましたら、
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