城戸崎愛
Profile
城戸崎 愛(きどさき あい)
1925年神戸生まれ。東京家政学院卒。結婚後、東京會舘クッキングスクールや、夫の赴任で滞在したパリで通ったル・コルドン・ブルーで料理を学ぶ。帰国後、料理研究家として活動をスタート。NHK「きょうの料理」出演や雑誌の料理ページなどで、おいしく心温まる料理やお菓子を紹介しつづけている。著書に『ノンノお菓子Perfectノート』『もう せん切りイヤになっちゃった』(ともに集英社)『城戸崎愛の料理のきほんミニ事典』(日本放送出版協会)など、多数。
第1回 何が何でも、命は大切にしなきゃいけないんです
第2回 大切な人たちの存在を、形にして残したかった
『戦火とドーナツと愛』
戦火とドーナツと愛 城戸崎 愛/
由井りょう子 著

集英社 刊
定価:680円
ISBN:4-08-650070-1
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戦争はイヤだ! あんな悲しい思いはもう二度とごめんだ! 雑誌やテレビでおなじみの「ラブおばさん」が、戦争とともに過ごさなければならなかった10代を振り返りながら、「命の尊さ」を伝えたいと、熱い思いで書き上げた一冊。
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城戸崎愛 作品リスト
『戦火とドーナツと愛』著書 城戸崎愛 スペシャルインタビュー
第1回 何が何でも、命は大切にしなきゃいけないんです
ノンノやモアなど、集英社女性誌の料理ページを創刊時から担当、料理研究家の第一人者として、79歳の現在もテレビや雑誌で活躍中の城戸崎愛さんのエッセイ『戦火とドーナツと愛』が刊行された。今まで何十冊と書いてきた、「手料理の素晴らしさ、大切さ」を伝える「レシピ本」とは違い、今回は、ご本人の「戦争体験記」が中心になっている。
日本が太平洋戦争に敗れて59年、なぜ今「戦争体験記」なのだろう?

「今から2年半ほど前だったかしら、妙に胸騒ぎがし始めて。周囲の人に、『二言目には、なんだかイヤな予感がするわ、って言いますね』と言われていたほど。そうしたら、イラク戦争が始まってしまった。あの胸騒ぎは、戦争体験者だからこそのものだったんでしょうか。
でも、私たちの世代は、自分の戦争体験に目をつぶって語ることをせず、心に封印していました。また『戦後』の慌しさ、そして急激に裕福になった生活を送る中で、当時20〜30代の私たちは、次代の子供たちに『戦争はダメだ、命は何にもまして尊いんだ』ときちんと教える責任を果たさなかったように思うんです。そのツケが、そのさらに下の世代に出て、命を粗末にする、こんな日本、こんな世界になってしまった。そしてまた同じことが繰り返されようとしているのではないか、と……。
そこで、ずっと封印してきた自分の『戦争体験』をまとめることで、若い皆さんに『とにかく戦争はイヤだ、命を大切にしてほしい』と伝えたいと、日記をつけていなかった自分にすごく悔みながらも強く思い立ちました」


だけど、この本、よくある「戦争体験記」とは雰囲気が違う。もちろん、愛する人を戦場に送り出すことの「悲しさ」、東京大空襲などによる「恐ろしさ」、物資の不足などによる「つらさ」や「困難」は書かれているけれど、「私たちはこんなに大変だったんですよ」という、特有の「説教くささ」がまったくと言っていいほど感じられない。今まで「一般市民の戦争体験本」をあれこれ読んできた人は、もしかすると面食らってしまうかも。

「若かったせいもあるけれど、とにかく、めげなかったから。『明るく生きてたのよ』と言ったら、『その言葉はいけません』って人に言われちゃったんだけど(笑)。だけど、当時は『大本営発表』しかなくって、本当のことなんて、私たちは何にも見せられてなかった、知りたいって言えなかった、聞かされてなかった。まさに『見ざる、言わざる、聞かざる』で、世間に疑問を持つなんてこと、思いもしなかったんです。その中で頑張るしかなかったんです。まぁ、今風にいえば洗脳されていたわけですけれど。だから、お国が勝つことを信じて、物がない毎日をどうやれば少しでも気持ちよく過ごすことができるか、あれこれ工夫して知恵を働かせたんです。タイトルにもしましたけど、製粉会社に勤めていた父の関係で小麦粉も割と手に入りやすく、ドーナツだって揚げましたよ(笑)」



例えば、女性ならば切っても切れない毎月の「生理」の悩みをどう解決していたのか。戦時中とはいえ、10代の女の子の「おしゃれ心」をどうやって満たしていたのか。東京大空襲の焼け跡で、どうやって料理をし、どんな料理ができたのか……。そう、これは「ひとりの女性が体験した太平洋戦争」の話であるのと同時に、「ひとりの女性が戦争中でもめげずにけなげに生きた」記録でもあるのだ。

争いのニュースを聞かない日はない今だからこそ、戦争のない日本に住んでいられるからこそ、ぜひ手にとって、いまの自分の生活に重ね合わせて読んでほしい。きっと、「ああ、こうやって生きていられる幸せを、感謝してもっと大切にしなきゃいけないな」と感じるはずだ。

「この本は、もうすぐ80歳の私と、50代のライター、由井りょう子さんとの共著になってます。当時10代の女学生だった私の表面的な記憶に、由井さんが私の知らなかった『事実』を徹底的に調べて加えてくれました。戦争を知っている世代と、戦争を知らない世代がお互いを理解しようと歩み寄った結果です。読んでいて、もしかすると重たく感じる部分もあるかもしれません。実感がわかないかもしれません。でも、『とにかく戦争はイヤだ、命を大切にしなきゃダメなんだ』ってことが伝わったら嬉しいですけれど」

撮影/織田桂子
インタビュー・文/s-woman.net編集部


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