金原ひとみ(かねはら ひとみ)
1983年東京都生まれ。身体改造に魅了されたルイたちの姿を描いたデビュー作『蛇にピアス』で第27回すばる文学賞、第130回芥川賞を受賞。他の著書に『アッシュベイビー』がある。
金原ひとみ スペシャルインタビュー
1 それは「錯文」から始まった
2 名のない主人公は金原ひとみ?
3 誰もが抱えるAMEBICな世界
4 初めての乗馬
金原ひとみ『AMEBIC』

大好評発売中

金原ひとみ・著
集英社・刊
定価:1260円(税込)

パソコンの画面に残された、支離滅裂な「錯文」。これを書いたのは私なのか、それとも私ではない私なのか。その「分かたれた感覚」を、私は「彼」に伝えようとするのだけれど……。『蛇にピアス』『アッシュベイビー』につづく話題作!

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金原ひとみ作品リスト
蛇にピアス
アッシュベイビー

金原ひとみスペシャルインタビュー『AMEBIC』

4 初めての乗馬

金原さんの作品のテーマは普遍的だが、また一方、そのファッションや感性には、やはり20代の若さを感じる。同世代から見たら、「私たちの世代の代表」という気持ちがあるだろう。

「自分では、特に世代的なものは意識していないんですけど……若い感じで書こうとも思っていませんし。でも、今、活動している作家の中では若いほうなので、やっぱり感覚的なところは違うのかもしれないですね。その点で、“若い世代”と言われたり、同世代の方に共感してもらえる部分もあるのかもしれません」

以前からの友達もほとんど変わっていないそうだが、中には、まだ金原さんが「芥川賞作家」だということを知らない人もいるとか。

「このあいだ、久々に連絡をとった友達なんですけど、全然知らなかったみたいで、『へえー』って言ってました。芥川賞自体、よく知らない友達もいますしね。生活は執筆中心に大きく変わりましたけど、自分の価値観は変わっていないと思います。パソコンに向かって文章を書く、というのは、どこでやっても変わらない行動ですよね。私はそこが軸になっているんです。他のことはそれを中心に回っているので、生活が変わっても、軸は変わらない。書き続けることによって、変わらない中心を持っている感じです」

そんな金原さんの、キャミソールからのぞく細い腕と白い肌にはびっくりするほど。『AMEBIC』に、体重が40キロに満たない主人公が献血を断られるシーンがあるが、思わず「献血できますか?」と聞いてしまう。

「できないんですよ(笑)。仕事もデスクワークで夜型なので、肌は白くなりますし。鍛えたからだに憧れはあるんですけど、運動もしないですねぇ。あっ、でもこの間、初めて乗馬をしました。前から、一度やってみたかったんです。すごく楽しかった。馬が欲しくなる人の気持ちがわかりました。かわいいんですよ、顔が。でも、疲れましたね。終わった後、食事に行って煙草をすおうと思ったら、手が口元まで上がらないんです。腕がふるふるして。翌日も、一日使いものになりませんでした」

デビュー作『蛇にピアス』は、6月に英語版としてアメリカ、イギリスで出版。イタリア、韓国、台湾、香港、タイでもすでに発売されている他、スペイン、フランス、ドイツ、ロシア、中国など22か国から出版依頼が相次いでいる。3月には香港文学フェスティバルで、インタビュー形式の講演も行った。

「いろいろな国で出版されるのは、とてもうれしいですね。装丁も日本版とは違ったり。読めないので、パラパラ見るだけなんですけど。香港は、ちょうど『AMEBIC』の直しをしているときだったので、原稿を持っていったんですが、結局、1ページも読まず(笑)。飛行機の中でも映画を見てました。でも、原稿がせっぱつまっているときだったので、逆に気分転換になりました」

海外での反応もまた楽しみだ。着実に成長を続ける金原さん。デビュー作、そして第2作に感じられた大きなテーマが『AMEBIC』ではどんな方向に展開しているか、ぜひみなさんの目で読み解いてほしい。

インタビュー・文/石川敦子
写真/田巻照敏

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