

大好評発売中
金原ひとみ・著
集英社・刊
定価:1260円(税込)
パソコンの画面に残された、支離滅裂な「錯文」。これを書いたのは私なのか、それとも私ではない私なのか。その「分かたれた感覚」を、私は「彼」に伝えようとするのだけれど……。『蛇にピアス』『アッシュベイビー』につづく話題作!

金原さんの作品のテーマは普遍的だが、また一方、そのファッションや感性には、やはり20代の若さを感じる。同世代から見たら、「私たちの世代の代表」という気持ちがあるだろう。
「自分では、特に世代的なものは意識していないんですけど……若い感じで書こうとも思っていませんし。でも、今、活動している作家の中では若いほうなので、やっぱり感覚的なところは違うのかもしれないですね。その点で、“若い世代”と言われたり、同世代の方に共感してもらえる部分もあるのかもしれません」
以前からの友達もほとんど変わっていないそうだが、中には、まだ金原さんが「芥川賞作家」だということを知らない人もいるとか。
「このあいだ、久々に連絡をとった友達なんですけど、全然知らなかったみたいで、『へえー』って言ってました。芥川賞自体、よく知らない友達もいますしね。生活は執筆中心に大きく変わりましたけど、自分の価値観は変わっていないと思います。パソコンに向かって文章を書く、というのは、どこでやっても変わらない行動ですよね。私はそこが軸になっているんです。他のことはそれを中心に回っているので、生活が変わっても、軸は変わらない。書き続けることによって、変わらない中心を持っている感じです」
そんな金原さんの、キャミソールからのぞく細い腕と白い肌にはびっくりするほど。『AMEBIC』に、体重が40キロに満たない主人公が献血を断られるシーンがあるが、思わず「献血できますか?」と聞いてしまう。
「できないんですよ(笑)。仕事もデスクワークで夜型なので、肌は白くなりますし。鍛えたからだに憧れはあるんですけど、運動もしないですねぇ。あっ、でもこの間、初めて乗馬をしました。前から、一度やってみたかったんです。すごく楽しかった。馬が欲しくなる人の気持ちがわかりました。かわいいんですよ、顔が。でも、疲れましたね。終わった後、食事に行って煙草をすおうと思ったら、手が口元まで上がらないんです。腕がふるふるして。翌日も、一日使いものになりませんでした」
デビュー作『蛇にピアス』は、6月に英語版としてアメリカ、イギリスで出版。イタリア、韓国、台湾、香港、タイでもすでに発売されている他、スペイン、フランス、ドイツ、ロシア、中国など22か国から出版依頼が相次いでいる。3月には香港文学フェスティバルで、インタビュー形式の講演も行った。
「いろいろな国で出版されるのは、とてもうれしいですね。装丁も日本版とは違ったり。読めないので、パラパラ見るだけなんですけど。香港は、ちょうど『AMEBIC』の直しをしているときだったので、原稿を持っていったんですが、結局、1ページも読まず(笑)。飛行機の中でも映画を見てました。でも、原稿がせっぱつまっているときだったので、逆に気分転換になりました」
海外での反応もまた楽しみだ。着実に成長を続ける金原さん。デビュー作、そして第2作に感じられた大きなテーマが『AMEBIC』ではどんな方向に展開しているか、ぜひみなさんの目で読み解いてほしい。
インタビュー・文/石川敦子