• ショッピング
  • プレゼント
  • 占い
  • モデル
  • 試し読み
  • 会員登録
 

サイト内検索

サイト内検索の使い方

Powered by Google


金原ひとみ(かねはら ひとみ)
1983年東京都生まれ。身体改造に魅了されたルイたちの姿を描いたデビュー作『蛇にピアス』で第27回すばる文学賞、第130回芥川賞を受賞。他の著書に『アッシュベイビー』がある。
金原ひとみ スペシャルインタビュー
1 それは「錯文」から始まった
2 名のない主人公は金原ひとみ?
3 誰もが抱えるAMEBICな世界
4 初めての乗馬
金原ひとみ『AMEBIC』

大好評発売中

金原ひとみ・著
集英社・刊
定価:1260円(税込)

パソコンの画面に残された、支離滅裂な「錯文」。これを書いたのは私なのか、それとも私ではない私なのか。その「分かたれた感覚」を、私は「彼」に伝えようとするのだけれど……。『蛇にピアス』『アッシュベイビー』につづく話題作!

詳細はこちら
金原ひとみ作品リスト
蛇にピアス
アッシュベイビー

金原ひとみスペシャルインタビュー『AMEBIC』

3 誰もが抱えるAMEBICな世界

主人公から見たら“気持ち悪い”、彼の婚約者。反対に、日常の世界で生きている“普通で健康的”な人たちから見たら、アミービックな世界のほうが気持ち悪いと言えるだろう。けれどもまた、アミービックな世界とは、誰もが内面に抱え持っているのではないだろうか。

「主人公が『タオルが動く』と言っているんですけど、これは錯視とか幻視といって、人によっては、動くものが砂だったり、石だったり、全てだったりするらしく、全く同じ表現ではないけど、何か共通する感覚がそこに感じられますよね。『AMEBIC』は個人的、内面的な話なんだけど、つきつめていくと、本質的な部分にいきつく。誰もが持っているアミービックな世界だろうと思うんです。私の書いた表現が、読む方のどこかに触れる部分があればいいな、と思っています」

「分裂感覚は、皮膚感覚でもあるんです。先日、文芸評論家の三浦雅士さんと対談させていただいたのですが、三浦さんに、私は『皮膚で考え、脳で感じている』のではないかと言われました。これは私にとっては、とてもわかりやすい表現でした。『AMEBIC』は、考えぬかれた小説ではなく、感じたものを、より正確に書こうとした小説です。その皮膚感覚は、『蛇にピアス』『アッシュベイビー』から続いている感じがあります。3作に共通している部分も、いくつも見つけることができますね」

「三浦さんのお話では、人間って、何十兆という細胞でできていて、それを皮膚が包みこんでいる。それぞれの細胞は個別に生きていて、なんとかギリギリのところでひとつのものにまとめあげられているんだそうです。それを聞いて、生き物って無理して作られたものなんだ、一歩間違えれば崩壊してしまうのは当然なんだ、と思いました。私はよく、皮膚があるのかないのかわからないような、破れた皮膚の中から“自分”がとけ出してドロドロとアメーバ状に崩れていくような感覚があるんです。それは、私だけが感じる特別なことではなく、誰にでも言えることなんだと思いました」

「自分の中で“政治”が行われている、という感覚です。たくさんの細胞があって、それぞれの細胞が反乱を起こすこともある。それをどう統括し、政治を進めていくのか。もしも信頼のおけない人物が統括していれば、他の誰かにのっとられるかもしれない。今まで統括していた“自分”が、のっとられる! という不安感……主人公はそんな危機感を感じているんです」

“自分”とはいったい、何なのだろうか。“生きる”とは、どんな意味があるのだろうか。『AMEBIC』は、そんなことを真正面から考えさせられる作品だ。

「今の時代では、そういうことをあまり直視できなくなっているかもしれませんが、主人公は、考えざるをえない状況に追い込まれます。それがいかに重要か。そこだけを直視するのが、どれだけ切実で、どれだけ辛いか。そこを見てしまったら、自分はどうなるのか。いつまで見ないふりを続けていられるのか……。自分自身も、この作品をどれだけ読み解けているのか、まだわかりません。把握しきれていない部分もあります。読む方がこの世界を感じて、自分なりに分析することで、ドロドロのアミーバに色がつけられ、形が与えられていく。もっと理解されていく。読者の思考によって形成されていく、そういう小説ではないかと思っています」

インタビュー・文/石川敦子
写真/田巻照敏

今回のインタビューへのご意見・ご感想をぜひお寄せください。

コメントを読む&投稿する
インタビュー一覧へ