金原ひとみ
Profile
金原ひとみ
1983年東京生まれ。小学校6年生のとき、父(翻訳家・児童文学研究家の金原瑞人氏)の仕事の都合で、米・サンフランシスコに1年滞在。その間に村上龍、山田詠美などの作品と出合い、それをきっかけとして、中学生のころから小説の執筆を始める。デビュー作『蛇にピアス』で第27回すばる文学賞、第130回芥川賞を受賞。『アッシュベイビー』は、芥川賞受賞第1作になる。
「アッシュベイビー」表紙アッシュベイビー
金原ひとみ
集英社・刊
定価:1,050円(税込)
ISBN:4-08-774701-8

新・芥川賞作家が受賞第1作のモチーフに選んだのは、幼児性愛、自傷行為、レズ…。『蛇にピアス』を凌ぐ、読むほどに「痛み」と「深み」を増していく「愛」の世界。
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作品リスト
第1回
第2回
第3回
金原ひとみスペシャルインタビュー芥川賞受賞第一作「アッシュベイビー」
タイトル
金原さんにとって、小説を書くことも、恋をすることも、「知りたい」という欲求が大きな原動力のひとつのようだ。

「でも、『アッシュベイビー』の中でアヤが知りたいこと、求めていることは、村野さんの情報ではなくて、彼が与えてくれる“死”というものなんです。村野さんは、いつ私を殺してくれるのか。周りのことは全然見えてなくて、それしか考えていない。でも、その気持ちは決してネガティブなものではないんです。アヤは、基本的に何もこだわりを持たない人間。生きること、死ぬことにも固執していない。私もそういうところは似ています。ふとしたときに『あぁ、今なら死んでもいいかな』と思ったり、『今なら生きてもいいかな』と思ったりする。でもアヤは、村野さんという人を愛することによって、初めて自分がどこに固執するのか、気づいたと思います」

「恋愛と死。恋愛と生。……とても強く結びついていると思うんです。本当に愛する人に殺してもらえたら、それはとても価値のある死に方なんじゃないか。誰かが自分の生を左右するということは、その誰かが自分の人生にそれだけ深く関わるということですよね。相手の運命とセックスする、というような感じ。きっと、セックスよりずっと強い結びつきを感じられるんじゃないか。だからアヤは、好きでもない男に抱かれることは何とも思わないけど、殺されるのは村野さんじゃないとイヤ。そこだけは譲れない、と思っているんです」

「アヤは、ホクトの部屋にいる赤ん坊に、自分を重ねて見ていると思う。赤ん坊は、力のない自分の象徴であり、生の象徴でもある。見るだけで、自分も“生きている”ということを思い出させる生命力を持っている。だからこそ彼女は、赤ん坊を嫌悪する。それは自分を嫌悪するのと同じことなんじゃないか……。
書きながら、こうじゃないか、ああじゃないかと考えるんですが、書いたときにはわからなくて、あとで読み返して気づくこともあります。なぜホクトがここにいるのか。レズの女の子・モコちゃんの存在はどういう意味を持っているのか。書きあがったものを読んでいるうちに、だんだん見えてくる。『アッシュベイビー』は『すばる』誌上で発表したのですが、新たに気づいたことを考えた上で手直ししたので、単行本のほうがわかりやすくなったと思います」


セックスの描写や、幼児性愛、レズ、自傷行為、獣姦。その激しい内容にびっくりするだけで読み終わってしまってはもったいない。その奥に、どんな意味がこめられているのか。「生と死」をキーワードに読んでみるのも、ひとつの方法かもしれない。

「読む人によって、どうしてこんなこと書くの? とか、ここはむだだ、と思う部分もあるかもしれません。でも、凝縮して気持ちをこめて書いているので、読み返せば読み返すほど、感じるところが違ったり、別の見方ができると思うんです。私自身がそうでしたから。何度も読み返してもらえたら、とてもうれしいです。装丁もかっこいいんですよ。帯の裏側も気にいってます」

金原さんもお気に入りの裏表紙側の帯は、まさに『アッシュベイビー』の世界。ぜひ手にとってみて!

インタビュー・文/石川敦子
写真/田巻照敏


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