『盲導犬クイールの一生』の著者による初の短編小説集、s-woman.netで10月に連載スタート! 石黒謙吾『奏でられた犬』スペシャルインタビュー
石黒謙吾(いしぐろ・けんご)
1961年金沢市生まれ。雑誌編集者を経て、書籍の執筆、編集を手がけるようになる。『盲導犬クイールの一生』(文藝春秋)、『パピーウォーカー』(全日出版)など犬(と人)に関わる作品の他、『ダジャレ ヌーヴォー』(扶桑社)『チャート式 図解でユカイ』(ゴマブックス)など、仕事の幅は非常に広い。『ザ・マン盆栽』(文春文庫プラス)をはじめ、編集を手がけた書籍も多数。
石黒謙吾スペシャルインタビュー
1 犬を通して見える、人の気持ちが書きたい
2 犬をふつうになでることができなかった

1 犬を通して見える、人の気持ちが書きたい

ドラマ、映画になり、韓国語版、台湾語版まで出版された『盲導犬クイールの一生』。この本を書いた石黒謙吾さんの初めての短編小説連載が、s-woman.netでスタートします。タイトルは『奏でられた犬』……。どうやら犬と音楽が関わっているようです。しかも、石黒さん自身が写真も撮る、というこの企画。公園での撮影現場におじゃまして、話を聞いてきました。

「えっと、最初は犬の話を考えていたんじゃないんです。自分がこれまで見聞きして“あ、いいな”と思っていた小さな話と、すごく好きで忘れられない音楽の記憶が、まずはあった。それをあわせて物語にしたらどうだろう? ということを考えたら、犬が出てくることでいろんな気持ちが表せるような気がして……。そこから『奏でられた犬』ってタイトルも出てきたんですね」

犬のことが書きたい、ってところからスタートしているんじゃないんですね。

「そう。『盲導犬クイールの一生』がベストセラーになって、かなりインタビューを受けたんですけど、“どうしてこれだけヒットしたんだと思いますか?”って聞かれると“ほとんど犬のことを書いていないからじゃないですか”と答えていたんです。もちろん写真には写っていて、クイールがどうした、ということは書いていますけど、それは最低限で。書いているのは、人の気持ち、人の話ですよね」

ちなみに第一話「裏口にいた犬」で登場する犬は柴犬。音楽は、パッフェルベルのカノンですね。そして主人公は、芸大受験を志して上京し、名曲喫茶で働く“僕”です。実は、かなり石黒さんの自伝的な作品だったりするのでは?

「パッフェルベルのカノンは、僕がまさに名曲喫茶のアルバイトで聴いた、思い出深い曲です。でも、事実のエッセンスを入れているのは2割ぐらいで。約8割は創作ですね。以前『パピーウォーカー』って本で、ドキュメンタリーにフィクションを2割ぐらい混ぜる、ということはやっているんですけど、今回はバランスがまったく違うので……。いや、本当にまったく分からなくて苦労しています(笑)。

今までノンフィクションの仕事はかなりやっているから、ベースがあるんです。例えていうと……。陶器を作るとして、慣れた仕事の場合は、もう粘土はあって、形の作り方も、うわぐすりのかけ方も分かっている。でも、フィクションは初めてで、もう粘土から作ってるみたいな感じですね。難しいです。もちろん、その粘土がこねあがってくる感じとか、本当に勉強になるし、面白いんですけどね」

取材・文/s-woman.net
撮影/大橋 愛

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