
次々と作品を発表している石田さんだが、同時にテレビ番組への出演、作詞など、その活動の幅広さにも驚かされる。
「のびのびとやってます。放し飼い的なポジションでしょうか(笑)。広ーいところでエサをとっといで、と放されて走り回っているような。でも昔の作家はみんなどんどん世の中に出ていたと思うんですよ。今は、それこそひきこもっているような人もいるけど、若い作家の方にももっと出てきてほしいですね」
とはいえ、忙し過ぎるのも考えもの。たまには「ひきこもりたい」と思うこともあるのでは?
「今回の短編集の中の『本のある部屋』なんて理想ですよ。マンションの一室で女の子が本を読んでくれる、セックスのない愛人関係。他に何もない、本だけある部屋……あんな部屋があったらいいなぁ(笑)。そんな贅沢、してみたくないですか? 隠れ家願望? うん、それはすごくありますね。誰にもつかまらない、編集者にはもちろん(笑)、できれば家族にも秘密の部屋を持って、そこに行くときは着る洋服なんかも変えてしまってね。近くの飲み屋に行くときは名前も変えて。そうだな、昔の作家みたいな、ちょっと難しい人になってみたいですね。内田百
みたいな、いつも“困ったなぁ”みたいな顔をしている人とか(笑)」
石田さんは、7歳のときから作家になりたいと思っていたそう。自分の心が見えなくなって迷っている人が多い現代だけど、石田さんは自分が何を好きか、何を求めているのか、子供の頃からはっきり見えていたようだ。
「運動選手になりたいとは思わなかったし、橋をかける、ビルを作るという実業系にも興味はありませんでした。役人とか、りっぱな職業も好きじゃなかった。あまり世の中の役に立たないような仕事で暮らしていきたいと、ずっと思っていましたね。子供の頃の気持ちをうまく保存したまま大人になれたのは、ラッキーな人生だったと思います」
ひと昔前よりずっと自由で、それぞれの幸せを追求することができる今。だからといって決して、誰もが幸せになれるわけではない。『愛がいない部屋』に集められた、さまざまな悲しみ。静かな時間に雑音を消して読むことで、あなたも自分の中の空虚感に気づくかもしれない。それが、本当に満ちたりた時間に向かう第一歩かも。そして石田さんの作品には、いつもどこかにひと筋、まっとうな希望がある。
「いろいろあるけど、でも生きてれば丸もうけじゃないか? ってね(笑)。お天気がいいだけで、幸せだったりすることがありますよね、今日みたいに。いいよねぇ、このテラス。空にぬけるテラスなんて、気持ちいいなぁ(笑)」
インタビュー・文/石川敦子