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『愛がいない部屋』 石田衣良 スペシャルインタビュー
Profile
1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。広告制作会社を経て、フリーのコピーライターをしながら小説を書く。1997年、『池袋ウエストゲートパーク』でオール讀物推理小説新人賞受賞。2003年、『4TEEN』で第129回直木賞受賞。
石田衣良 スペシャルインタビュー
1 明るいパステル調から、ビターなトーンへ
2 雑音だらけの世の中で幸せを見失う
3 いろいろあるけど今日はお天気
『愛がいない部屋』

集英社・刊
¥1575(税込)
ご購入はこちら


石田衣良 著作リストはこちら

2 雑音だらけの世の中で幸せを見失う

『愛がいない部屋』の中には、ひきこもりの青年や、DVの被害にあっている妻など、社会的な話題になっているケースも登場する。「人生はだんだん複雑になってしまいましたねぇ」とため息をつく石田さん。それは現代の特徴なのだろうか?

「そうでしょうね。今、刹那的な欲望を満たす方法は、たくさんあるでしょう。みんなの小さな欲望にひとつひとつ対応するいい商品、いいサービスがあふれている。でも心の真ん中には、すごく空虚なものがある。本当は僕たちが求めているのは、形よりも、もう少し内面的な充足感なんですよね。ところが、それを得るのはなかなか難しい。アロマキャンドルはすぐに買えるけど、本当に幸せなひと晩はなかなか手に入らない。それを得るためには、自分の気持ちをちゃんとつかむことが必要だと思うんです。自分は本当は何が好きなのか、何を幸せに感じるのか。自分の心に聞いてみないとね。そんなに難しいことじゃないはずなんだけど、いろいろな楽しみがあるから、その雑音で見えなくなってしまうのかな。一度、雑音をシャットアウトすることも大事かもしれませんね」

「とてもきれいで、いい大学を出て、仕事もちゃんとしてて、彼にプロポーズされてイエスと言ったんだけど“人を好きになる”という感覚がどうしてもわからない……最近、そんな女性が多いそうです。気持ちと頭が切れてしまって、つながらない。むなしさを抱えたまま生きている。もしかしたら、昔もそうだったのかもしれませんけどね。好きでも嫌いでもない、親の決めた人と結婚して、たまたま好きになれた場合もあるけど、一生嫌いだったという人もいるんでしょう。今は自分でいろいろな選択ができるけど、その選択に失敗する人もいる。そういう意味では、今も昔も幸福の分量はあんまり変わらないのかな」

「この間、大学の先生に聞いてびっくりしたのですが、最近、ボーイフレンドになぐられる女の子がとても多いというんです。……暗澹としました。結局、コミュニケーション能力がないから、すぐに手が出るんでしょうね。だってねぇ、35歳の男性の半分が結婚してないっていうんですよ。もうちょっと若いときにきっかけを作っておけばなぁ、と思うんです。年をとるほど、生身の女の人とつきあって、暮らしのパターンを変えるのはめんどうだし、難しくなるでしょう。そうすると、六本木ヒルズパターンになりますよね。モテる男だけがはてしなくモテて、ダメな男は一生ダメという。でも、お金さえあればモテる、というのもむなしいと思う。だって“金さえあればモテる”と豪語している人は、お金のなかったときにはモテなかったということでしょう。モテなかったときに傷ついたりしているわけで、金持ちになってその悔しさを晴らそうと、復讐のために女の人とつきあう人は決して幸せにはなれないですよ」

悔しさ、コンプレックス、寂しさ、不安……幸せをジャマする心の雑音はたくさんある。もっとシンプルになれたらいいのだけれど。

インタビュー・文/石川敦子
撮影/瑳山ゆり

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