

石田衣良(いしだ・いら)
1960年東京都生まれ。成蹊大学卒。広告制作会社勤務後、コピーライターとして活躍。97年『池袋ウエストゲートパーク』でオール讀物推理小説新人賞、03年『4TEEN』で直木賞を受賞。主な著書に『スローグッドバイ』『娼年』『うつくしい子ども』など。 |
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石田衣良・作
集英社・刊
定価:1575円(税込)
ISBN:4-08-774689-5
遠く離れた恋人たちがひと月に一夜だけ過ごす、つかのまだけれど濃密な時間(表題作)。「愛なんてセックスを包んでいるただの包装紙」と考える遊び人の男が出合った恋(『スローガール』)─。「普通の人の普通の恋愛」の素晴らしさを、短編の名手が描きます。 |
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新刊『1ポンドの悲しみ』の主人公はほとんどが女性だ。男性作家の描く女性像、ときには違和感を感じることもあるけれど、石田さんの描く主人公たちにはすんなり共感できる。
「マリリン・モンローか女スパイみたいなのしか出てこない小説もありますけど、あれはないよねぇ(笑)。でも僕は、女の人のことがわからなくてもいいと思うんです。わからないままいっしょになって、いっしょに暮らしてたりするんですから。
小説も、その人といっしょに生きて、その人のことが『いいなぁ』と共感できれば書ける。本ってそういうものですよ。だってアメリカ人が書いた本だって、ロシア人が書いた本だって、おもしろいでしょう。誰かが火星を舞台に活躍する本だっておもしろく読めるもの。別な人になって別の場所にぱっと行ける、そういう力があるのが、楽しくていい本だと思うんです。人間って、そんなに変わらないんじゃないかな。男も女も、大人も子供も。人間の心は案外自由で、いろいろなものに入っていけると思うんですよ」
『スローグッドバイ』は20代の恋愛だった。今回の『1ポンドの悲しみ』は、30代の恋愛を描いている。ラストの『スターティング・オーバー』では、20代でいろいろな恋愛をした主人公が、今までの自分を変えて、新たな恋を始める予感で終わる。
「今、成人式は30歳だと思うんです。20歳なんてね、特に男の20歳なんて恋愛のことも世の中も何もわかってない。ゼロですよ。30代は、ようやく大人の恋ができるようになる年代。いくつか恋愛をして自分のことがわかってきて、そのパターンをこれからは変えよう、と思う人もいるだろうし、これからもずっとこういう恋愛をしていくんだ、と覚悟のできる人もいる。どちらにしても、自分自身の気持ちがちゃんとわかって素直になれるのが、大人のスタートだと思います。この本は、そういうことに少しずつ気づき始めてる、かわいい大人の恋愛集ですね」
「最近、みんなあまりにも恋愛をしなくなったような気がします。出会い系サイトが流行ったり、簡単にくっついたり離れたりは擦り切れるほどしてるのに、本当にきちんとおつきあいする、“恋愛”がなくなった。30代、40代で独身の人も多いでしょう。どうしてなんでしょうね。楽しいことがたくさんあって、ちょこっとした遊びはたくさんあって、生活には困らない。だから、本当はとても大事だったはずの欲求が、どんどん薄くなっているのかな。でも、ある程度の年齢になったら、ちゃんとした恋愛をしたほうがいいと思うんです。きちんとひとりの相手を選んでともに生きる……というのかな。そういうことを、ちょっとやんないとね」
「絶対安全な場所にいると、どんどん傷つくのがこわくなって、どんどん意気地がなくなるでしょう。ひとりで寂しいなぁ、何かきっかけがあればいいなぁと思いながら、ずっと待っている。男も女も、そういう人がたくさんいる。無理やり恋をする必要はないし、思いどおりに恋に落ちられるものではないけど、でも心って、動かないままでいると動かなくなってしまう。たまには運動が必要ですよ。心のストレッチというのかな。普段使わない筋肉って、どんどん固くなるでしょう。恋愛も心の筋肉みたいなところがある。みんな、ちょっと心を動かす努力をしたほうがいいと思うんです」
『1ポンドの悲しみ』には、いつのまにか固くなっていた心がほぐれていく瞬間がたくさんつまっている。最近、ちょっとそんな気持ちを忘れていたかな……と思うあなた。『1ポンドの悲しみ』を読んで、心のウォーミングアップをしてみては? |
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インタビュー・文/石川敦子
カメラ/関 俊也 |
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