1971年生まれ。『オーデュボンの祈り』でデビュー。『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞を受賞。著書に『重力ピエロ』『グラスホッパー』『死神の精度』『魔王』『砂漠』などがある。『陽気なギャングが地球を回す』が映画化され、5月より全国ロードショー公開。
――映画でも小説でも、パニックものには“スーパーヒーロー”が出てくることが多いですよね。
「ブルース・ウィリスみたいな(笑)。確かにいないですね」
――そういう人が全然出て来なくて、正義の味方としては、スーパーマーケットのおじさんが“キャプテン・スーパーマーケット”として登場するくらい。
「あれはもう、大事な人ですよね。役に立つか立たないかは分かりませんが。
『死神の精度』では、人の生死を決める超越的な存在である“死神”を出してきて、そこに関わるいくつかの人間の物語を書いたんです。でも、今回のベースは普通の町で、そこでいろんなことが起きる。軸になるのは舞台なんですよね。この場所に、どんな人が出てきても、何もできないんです。
結局、何もできない。これは僕の根底に、死は立ち向かうものじゃないということがあるからですね。だから、どんなヒーローが出てきても、みんな助からないとは思うんです。ああ、ブルース・ウィリスみたいな人が出てきて、結局何もできない、という話も面白かったかもしれないですね」
――「死は立ち向かうものじゃない」というのは、いいですね。
「そこにギャップを感じる方もいらっしゃるとは思うんですが……。さっきの『死神の精度』の時も、やっぱり人間が死神に勝つほうがいいのでは、という感想を聞いたこともあるんですよね。でも、僕はやっぱり、死というのは負けじゃないと思っているんです。いずれみんな死ぬんだし、というのがやっぱり根底にあって。死と戦わなくてはいけないのか? じゃあ死んだ人は負けた人になっちゃうじゃないか、と。分からないなりに、いろいろ考えてしまって。今はとりあえず、立ち向かうものではない、と思っているんですよね」
――なるほど立ち向かう相手がいないから、スーパーヒーローが出てこないんですね。
一方で『冬眠のガール』では父親が残した本を読み続ける女の子、『鋼鉄のウール』ではトレーニングを黙々と続けるキックボクサーとコーチ、といったように、地球が終わるという時に一見無意味に思えることをし続ける人たちが出てきます。でも、この人たちがとても素敵に見えるんですね。これはなんなんだろう?って。
「そう思ってもらえると嬉しいですね。
『冬眠のガール』は、まず“冬眠”“こもって何をする?”ということから発想しているんですが、そこで“読書”というすごく普通のことをやるところは好きです。
実は田口美智という子は、“僕がかわいいと思う女の子を描こう”と思って書きはじめたんです。それで、僕がかわいいと思うのって何なんだろう? って考えた時に、おごらないし、くさらない、ってことなんですね。男の人でもそうなんですけど。
そうして“何かを人のせいにしない”とか“自分が嫌なことを他人にしない”とかポリシーを考えて書いていったら、結果的にすごくヘンな女の子になっちゃったんですけど(笑)。お父さんやお母さんが死んじゃったけど、そのことを愚痴らないし、その不幸をひっぱったりもしない。そういうのって、大事なことかなと。こういう女の子がいたら、すごく応援したくなるんじゃないかな、と。ならないですかね(笑)」
撮影/大橋愛 取材・文/s-woman.net編集部