伊坂幸太郎スペシャルインタビュー 1 自分だけは、死なないんじゃないか 2 「消費税とか、ぴんとこねぇ」…… 3 死んだら負け、なんだろうか? 4 失礼だけど、本当に失礼だけど……
「終末のフール」 「終末のフール」

伊坂幸太郎・著/集英社・刊
\1470

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プロフィール いさか・こうたろう

1971年生まれ。『オーデュボンの祈り』でデビュー。『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞を受賞。著書に『重力ピエロ』『グラスホッパー』『死神の精度』『魔王』『砂漠』などがある。『陽気なギャングが地球を回す』が映画化され、5月より全国ロードショー公開。

伊坂幸太郎「終末のフール」インタビュー 1

2 「消費税とか、ぴんとこねぇ」

――伊坂さんの作品を読んでいると、「音楽的だな」と感じることがあります。最初に出てきたエピソードや物事が、後で違う形で出てくる。「あ、ここであのAメロの変奏パターンが出てきた」とか「Bメロが違う形でかえってきた」とか。楽譜みたいには整理できないと思うんですけど、その呼応の仕方が、すごくリズミカルで心地いいな、と思うんですよね。

「それほど意識してはいないんですけど……。ただ、音楽ってフレーズを繰り返すじゃないですか。それはすごく大事なことだという意識はあるんですよね。“大事なことは繰り返すんだ”ってことはいつも考えているんです。

本当に音楽ってそうなんですよね。微妙にずれながら繰り返されていくのが理想だって気がします」

――各短編のタイトルが「終末のフール」「太陽のシール」「籠城のビール」「冬眠のガール」「鋼鉄のウール」「天体のヨール」「演劇のオール」「深海のポール」と、“××の○ール”で統一されているのも、歌詞のサビを連想させますね。

「やっぱり同じつけるなら、字画をそろえたほうが気持ちいいかな、と思うんですけど、冷静になって見ると、理詰めで、小ざかしいなあ、とも思っちゃいます(苦笑)」

――この中に「天体のヨール」が入ってくることで、いいバランスになっていると思うんです。これ、何かな? と思って読み始めると……(*以下、ネタバレなので略)。

「連載中、担当者が“アール”“イール”“ウール”…と50音でぜんぶ持ってきた時があったんですよ。それで『じゃあ、次、どれにしましょうか?』って言われた時に、絶対に単語になってないやつを選ぼうと思って。『じゃあ、ヤールとかヨールとかをやってみましょうか』って。『ヨールって何ですか?』『まぁ、×とかでいいんじゃないですか?』(*再びネタバレなので略)と」

――調べてみると、「ヨール」って船舶系の専門用語で、2本マスト(yawl)って意味があったりするみたいですね。

「そうなんですか」

――だから「星に行く船」のイメージにかけているんじゃないか、なんて話も……。

「いや、それ、かけています。とりあえず、そう言っておきます(笑)。

関係ないですが、こうやって、取材中に『あ、それいいな』って思うことありますよね(笑)。実は『籠城のビール』に暁子って娘が出てくるんですが、三島由紀夫の『美しい星』という作品に同名のヒロインが出てくるんですね。僕は『美しい星』は読んでいるんですけど、その名前のことまでは覚えていなくて。このあいだインタビューで『そこからとったんですか?』と聞かれて『それです』って。そういうことにさせてください、って(笑)」

――すごく力が入って理知的に見えつつ、どこか抜けてるというのがいいですね。

「それは大事ですね。やっぱりバカバカしいことが好きなので。

このあいだ井上ひさしさんがこんなことをおっしゃっていたんです。外国の詩人の言葉らしいんですが、『人間って、生きていると嫌なことばかりだ』って。いつのまにか病気になっていたりもするし、悩みは放っておいても生まれてくる。『だから、人間が唯一、自ら作り出さなきゃいけないのは笑いなんだ』と。井上さんは、それをすごく大事にされているんですって。

僕もその言葉にはすごく共感したんです。考えさせる小説も確かにあるけど、生きているだけで考えちゃうことは多いんだし。本当に馬鹿馬鹿しくてクスって笑えたりするものって、実は一生懸命に作る価値があるんじゃないのかなって。

おかしいと言えば、ちょっと話がそれるんですが、確定申告に行ったんですよね。相談したいことがあって順番を待っていたんですが、年輩の方もかなりきていて“ゼロから全部やってもらおう”みたいな人も多いんですね。『おれ、わかんねえからやってもらうんだよ』とか言っていて」

――レシートごそっとまとめて出してきたり(笑)。

「そうそう。それで、税理士の人が僕なんかに『ちょっと待っててくださいね』と気を遣いながら、『どうですか、どうですか』って焦って、聞いてまわってるんですが、僕の隣のおじいさんなんかは『よく分からねんだよなあ』とかのんびりしちゃってるんですよ。『今日は消費税で来たんですか? 所得税で来たんですか?』と聞かれて『いや、消費税とかぴんと来ねえんだよな』とか答えてて(笑)。

『ぴんと来ない』って、すでに、それって理由じゃないですよね。意味が分からなくて、いいなあ、と思っちゃいました。さすがに、税理士さんもどこから組んでいいのか分からなかったみたいで。『利益が去年よりも上がっていますか、下がっていますか』って聞いても、『上がったかな〜、下がったかな〜覚えてねえよ』とか(笑)。別にとぼけているわけじゃなくて、おじいちゃんには時間があるから、一日かかってもいいんですよ。税理士さんは本当にもう……。何だかそれが可笑しくて、隣でいて、楽しかったです」

――すみません。今の話、どこからつながったのか、ぴんとこないんですが?(笑)

「いや、『笑い』の話でした(笑)。こうしたことがあると、すごく幸せな気持ちになりますよね。これだ! みたいな」

撮影/大橋愛 取材・文/s-woman.net編集部

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