
サン テグジュペリ・著/池澤夏樹・訳
単行本:1260円(税込)/文庫:400円(税込)
永遠の名作『星の王子さま』池澤夏樹新訳!砂漠に不時着した飛行士の前に、不思議な金髪の少年が現れ、次第に彼の事情も明らかになる。バラの花との諍いから住んでいた星を去った王子さまは、いくつもの星を巡った後、地球に降り立ったのだ。



多くの人に愛され続けてきた『星の王子さま』が、池澤夏樹さんの翻訳で生まれ変わった。池澤夏樹さんと、『星の王子さま』。池澤さんのファンにとっても、『星の王子さま』のファンにとっても、この出会いは、わくわくするような組み合わせではないだろうか。まずは池澤さんと『星の王子さま』の、初めての出会いについて聞いてみた。
「最初に読んだのは小学校3年生くらいだったと思います。岩波少年文庫の1冊でした。あの頃の僕は、どう読んだのかなぁ……。ストーリーの面白さを追っかけていく『宝島』のような物語じゃないですし。だけど最初の大きなヘビの話や、突然、王子さまが現れて『ヒツジの絵を描いて』というところとか、ぐんぐんひっぱりこまれますよね。星から星を巡る旅というファンタジーの形式、沙漠に不時着したパイロットというのも、男の子の興味をそそる。子供にも面白い部分がたくさんあったんだと思います」
「だけどその頃は、バラとの仲たがいのいきさつなんて、とても手が出ない。キツネが語る大事なメッセージも、まだ手が届かない。それでも強い魅力を感じて、その後も何度も読み返してきた本です。この本は、子供向けの児童文学であるとは言いきれないし、大人向けの本だとも限定できない。子供から入って、大人になるまで読みついでいく。そして何度読んでも、まだもうひとつ、つかみきれない。これからも全てはつかめないだろう。そんな奥行きがありますね」
「『星の王子さま』の深いメッセージのひとつは“大人というのはヘンだな”ということ。無垢な子供、イノセントな少年から見た、大人の姿のカリカチュアが描かれます。でも、そこはまだわかりやすいんです。その後のキツネの話になると、なかなか難しい。それが一番大事なところなんでしょうけどね。サン=テックス(*サンテグジュペリの愛称)に『人間の大地』という作品があります。これは大きな1冊のエッセイ集ですが、その中で一番言いたかったこと……センチメンタルな、人と人との仲……それが『星の王子さま』でもういちど言われたという気がします。それから『城砦』という、ほとんど予言の文学のような作品がありますが、そのにおいも少しあります。『星の王子さま』は、サン=テックスの文学全体のエッセンスだろうと思います」
「翻訳の話をすぐに受けた一番の理由は、この作品をていねいに読みたかった、ということです。精読するには、翻訳をするのが一番いいでしょう。翻訳というのは、読み取る過程と、読み取ったものを表現する課程の二段階がある。きちんと読まなければ、きちんと日本語にできません。フランス語の翻訳は初めてですが、真剣にやりましたよ。真剣にならなきゃいけないのはこういうときだと思って、もうバオバブの木が根をはるぐらいにしっかり(笑)」
取材・文/石川敦子