廣川まさき

PROFILE

廣川まさき(ひろかわ・まさき)

1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。会社員を経て、牧場の仕事に挑むことを決意。27歳のとき、ワーキングホリデービザを取得し、カナダ・バンクーバーから450キロほど東にある町、カムルーブスにある牧場で学び始める。将来の夢は「牧場経営」でもある。「ウーマン アローン」で、第2回開高健ノンフィクション賞受賞。

『ウーマン アローン』廣川 まさき
第2回 開高健ノンフィクション賞受賞作

『ウーマン アローン』

著者:廣川 まさき
定価:1,575円(税込)
ISBN:4-08-781320-7


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伝説の日本人の足跡を訪ねるため、女一人、初めてのカヌーを繰ってアラスカ・ユーコン川下りに挑んだ著者。様々な表情を見せる自然、人々との交流。それは楽しい学びの時でもあった。

第2回 開高健ノンフィクション賞 受賞! 

廣川まさきインタビュー〈第1回〉
3年間の牧場生活で、野性動物の実態と怖さとかわいさを知った
廣川さんは旅に出発する前、約3年間にわたりカナダとニュージーランドの牧場で働いていた。大自然と向き合ったカヌーの旅でも「すごく役立った」と語る牧場での体験。初めてカナダに渡ったのは2000年、廣川さんが27歳のときだ。
廣川まさきと羊
「動物が大好きなのに、動物に接する機会がほとんどなかったんです。私は富山出身で、基本的にまわりはみんな米農家。動物はほとんどいなかったので、小さいころからずっと牧場で働きたいと思っていました。
私がお世話になったのは、カナダのカムループスというところにある、ダイアナおばあちゃんとトレイシーという女性だけでやっている牧場。馬、牛、ひつじ、にわとり、豚などさまざまな動物がいたのですが、私は主に馬を世話していました。
馬や羊でも、温厚な性格の反面に、簡単に人を死なせることができるほどの力を持っているんです。草食動物だからといって危険がないわけじゃない。私も馬に体当たりされて、4時間ぐらい意識を失ったことがありましたし、羊だって小さいけど、頭突きしたら男の人のひざの関節を折ってしまうぐらいのパワーがある。彼らも自分の身を守らなくてはいけないから、本能的にそういう力を持っているんです。ですから、そんな彼らと付き合うには、まず、彼らの前で自分が優しくならなければならない。そういった動物たちとの向き合い方を学んだことは、とてもよい旅の準備になったと思います」
かわいがっている動物たちが殺されてしまうことには、いつになっても慣れません
牧場では、廣川さんが世話をしていた動物たちの“屠殺”にも直面した。
「スーパーで買えば、なんの感情もなく簡単にお肉を食べられるけど、だんだんそんなことはできなくなりました。だって、自分でかわいがっている子たちが殺されてしまうんです。慣れないですよ。本当に慣れない。でも、生きるためには食べていかなくてはいけない。そういう現実があって人は生きていくんだと、痛いほど感じました」
廣川さんは決してベジタリアンになろうなどとは思わないという。いつかは殺されてしまう動物たちに、精一杯の愛情を注ぐことを選んだ。
「北海道の牧場で働く知り合いに、家畜は経済動物だから愛情をかけるなんておかしい、と言われたことがあるんですが、私は全然共感できませんでした。
それにひきかえダイアナおばあちゃんは、自分が食べるはずの動物たちにちゃんと名前をつけるんです。ちゃんと世話をして、愛情を込めて、最終的には動物たちの魂を自分に取り入れる。そんなおばあちゃんの姿勢はすごくいいなと思えました。私も、最後はどんなに泣いてもつらくてもいいから、とことん動物たちと付き合おうと心に決めました」
動物を調教するのは簡単。動物の気持ちをわかって、接したい
動物を世話する上で、最も苦労したことは何だったのだろう?
廣川まさきと馬
動物と人との間には言語がないから、とても難しい。言葉ってとても便利なもので、便利すぎるために人間は言葉を使わないで何かを伝えあうことにとても鈍感。だから、かつて動物を殴って調教してきた時代が長くあったんです。でも、私はそんなことは絶対したくない。ちゃんと動物たちと向き合って、気持ちを理解して、してほしいことをしてあげたいと思います」
将来は、自分で牧場を持ちたいと考えているそう。
「動物たちって私にとって、家族とか友達みたいな感じ。小さいころから動物と一緒にいたいって、ずーっと思ってましたから。子供のころからの夢…って言ったらかっこいいですけど、ただあの頃から成長していないだけなのかもしれませんね(笑)」
撮影/神尾典行
取材・文/野々山幸

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