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エクラのNEWSな宝石箱
このコーナーでは、エクラ編集部のスタッフが街中や日ごろの展示会で見つけた素敵なアイテム、ショップなどを半月毎にご紹介!ファッション、ビューティ、ジュエリー、インテリア、グルメetc.、各担当者の眼にご期待ください。
畳なわる線と色彩の森。 その狭間に宿る光を堪能して
松井守男絵画展 シャネルならではの作品展や、若い芸術家たちに発表や演奏の機会を与える「CHANEL Pygmalion Days」のプロジェクトで知られる、「シャネル・ネクサス・ホール」。今回は、そこで2月11日まで開催される「松井守男絵画展」のプレス・プレヴューへお邪魔しました。
 これまで松井守男さんの作品は日本で紹介される機会が少なかったので、「どんな人で、どんな絵を描く人なの?」という方も多いはず。しかし、事前情報を持たずに行ける展覧会こそ、作品と真正面から向き合えるいい機会でもあります。(※予習ナシで行きたい人は、以下はお読みになりませんよう。)
 会場に入ると、まず出迎えてくれるのは縦2m、幅5m近い大作群。広げられた壮大な織物を見るような気がするのは、作品に額縁もなければ、カンヴァスを張る木枠もないから。「これは絵です」と主張するものがないのはかえって新鮮。中央の作品はその性格を活かした反物状の展示方法で、これまた圧巻でした。
 「絵でない感じ」というのは、描かれているものにも共通します。線や単純な形を重ね積み上げ、画中の世界を深めていくのは、どこか意匠的でもある。これは着物になるかも、という発想をしたのは、きっと私だけではないはずです。
この巻かれたカンヴァスがすべて手描き。制作に当てられた膨大な時間と労力を想像して思わず嘆息。   ついつい部分に寄ってみたくなる美しさ。『カケジク』(1987年、油彩、カンヴァス)のアップ。
 
この巻かれたカンヴァスがすべて手描き。制作に当てられた膨大な時間と労力を想像して思わず嘆息。
 
ついつい部分に寄ってみたくなる美しさ。『カケジク』(1987年、油彩、カンヴァス)のアップ。
 具体的に何が描かれている、とはおそらく誰にも断定できないでしょう。そこにあるのは、多彩な部分からなるハーモニーのようなもの。ただ、部分を読み解いていけば、秋草風の曲線、切箔や野毛といったやまと絵にみる金銀箔のかたちなどがイメージの源流にあるのではと感じられました。カンヴァスを巻いて保存するような画材の捉え方も、掛軸や絵巻を思い出させ、とても日本的。画家のアイデンティティが主張しすぎることなく表れているようです。
 
カンヴァス1枚なので、横から見ると極薄。手前が、フランスで高い評価を受けるきっかけとなった『遺言』(1985年 215×470cm 油彩 カンヴァス)。
 
カンヴァス1枚なので、横から見ると極薄。手前が、フランスで高い評価を受けるきっかけとなった『遺言』(1985年 215×470cm 油彩 カンヴァス)。
 
 現在ではフランスで高く評価されている松井氏ですが、1967年にパリに渡った当初は挫折を味わい、その後の創作活動も成功とはいえませんでした。そんな彼を救ったのは、憧れの存在だったピカソの言葉。すでに晩年を迎えた老大家は若い画家の才能を認め、「ピカソになろうと思うな。ほかの誰にもなろうと思うな。松井守男になれ!」という助言を授けました。その言葉を胸に松井氏は徹底的に自身を見つめ、ひたすら描き続け、今日の栄光へ至ったといいます。作品から和のイメージを感じ取れるのは、そこで彼が日本の美を問い直し、それと一体となり得たからかもしれません。
 
冬の森のようにも見える『油墨画』(1985年 200×450cm 油彩 カンヴァス)。
 
冬の森のようにも見える『油墨画』(1985年 200×450cm 油彩 カンヴァス)。
 
 重ねられた線のすき間、かたちのすき間から、使われたどの色とも異なる光を放つ作品たち。それは、重ねるという単純で緻密な作業を作家が止めた瞬間の記録でもあります。作家がそこで見出したものに想いを馳せるもよし、印象主義的な画面の美に心洗われるもよし、楽しみ方はいろいろです。

 会期はあとわずか。ぜひ、足をお運びください。
 
カンヴァスを張った作品はミニサイズと意表をついたもの。作品名の『タブロービジュー』もかわいい。   最新作『書き初め』のごく一部分。愛の文字を見つけました。
 
カンヴァスを張った作品はミニサイズと意表をついたもの。作品名の『タブロービジュー』もかわいい。
 
最新作『書き初め』のごく一部分。愛の文字を見つけました。




※切箔(きりはく)
‥画面に、小さく切った金銀箔を貼り付けて装飾する技法。料紙装飾ややまと絵などで見られる。正方形のものが多い。
※野毛(のぎ)‥切箔の一種で、特に線状に細かく切ったものをいう。
バックナンバー
  vol.13   印象派から少し足を伸ばして、
古典と近代が出会うコローの世界へ。


  vol.12   食・癒・楽・学…
すべてが揃った癒しのホテル


  vol.11   俳諧と、絵画。
自在の人、与謝蕪村の代表作が一堂に。


  vol.10   ちょっとした工夫で、食時間が楽しく変わる
福井県発の「おいしいキッチンプロジェクト」


  vol.9   プロフェッショナル・ユースの
本物だけが放つ愛らしさがそこに。


vol.8 畳なわる線と色彩の森。
その狭間に宿る光を堪能して


vol.7 京都駅から徒歩2分。NEW OPENの店は
言うなれば、お座敷「串揚げ」アラモード。


vol.6 懐かしくも、奇天烈。「これでもか」の材質感。
建築ごと楽しめる、秋野不矩美術館訪問記。


vol.5 青の空間の中に自然を再構築する画家・セザンヌ。
4つのジャンルから、彼が探求した美の真髄に迫る。


vol.4 エクラで映画エッセイをご執筆いただく
作家・島田雅彦さんの新刊サイン会に潜入!


vol.3   華やかな「踊り」をイメージしたフレーバー。
夏季限定発売の名作ショコラが登場です。


vol.2   きりっとしたかたちの美しさと、使ってみたくなる優しさ。
器と家具から、めくるめく漆の世界が広がります。


vol.1   ヴィンテージな名品から、近年の限定&試作モデルまで!
ネット参加も可能な「オメガマニア」オークション