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エクラのNEWSな宝石箱
このコーナーでは、エクラ編集部のスタッフが街中や日ごろの展示会で見つけた素敵なアイテム、ショップなどを半月毎にご紹介!ファッション、ビューティ、ジュエリー、インテリア、グルメetc.、各担当者の眼にご期待ください。
懐かしくも、奇天烈。「これでもか」の材質感。 建築ごと楽しめる、秋野不矩美術館訪問記。
今回の宝石箱は、『エクラ』12月号の連載「この一点への旅」で取り上げている浜松市秋野不矩美術館の、建物にクローズ・アップ。連載ページでは掲載できなかった、魅力あふれるディテールの数々をこちらでご紹介!
 縄文建築団。
 藤森照信氏を中心に、赤瀬川原平氏、南伸坊氏らを交えて結成された「素人」建築家集団の名前には、どこか童心をくすぐる響きがありますが、彼らの仕事が生み出す建築物にも、悪戯っぽい愛嬌があふれています。
 実際に現地へ行ってみて、ずいぶん近いのにまず驚きましたが、アプローチをのぼりながら、徐々に見える美術館の威容にもびっくり。土、木、石という自然素材の色の優しさで周囲になじんでいるものの、丘の上にある山賊の要塞のようで存在感がすごい。木製の雨樋も秘密基地の大砲のように、外に突き出してます。これは、建て始めた後で縦につける樋から設計を変えたもので、コルビュジエのロンシャンの礼拝堂にある木製の樋にヒントを得ているとのこと。雨の日は壮観だと思います。
外観:小高い山の上にある美術館は、要塞のよう。
小高い山の上にある美術館は、要塞のよう。プリミティヴなようで、実は三角と四角が組み合わさった直線的なフォルム。それと手仕事のニュアンスが調和した独特の外観。松皮菱のような屋根がかわいい。アプローチの手すりも、縄文建築団によるざっくり仕上げ。
アプローチ:アプローチの手すりも、縄文建築団によるざっくり仕上げ
屋根:松皮菱のような屋根がかわいい
 ザクっと削られた分厚い扉から入ると、中は少し暗めの玄関ホール。建築団のメンバーがチェーンソーで削ってさらにバーナーで焼いたという杉の柱と梁が、空間を引き締めていて美しい。でも、イギリスの古民家みたいでいいなぁ、とベンチに腰掛けて油断してはいけません。手前の図録を手にとって、その下から出てくるテーブルを見ると、とても乱暴。驚きます。丸太をノミで割って板を作る、「打ち割り」という古い技法を試したものだそうです。
扉:分厚い一枚板の入り口は、自動ドア
分厚い一枚板の入り口は、自動ドア。山下先生お気に入りの懐かしいテイストの電燈が上についています。二階まで吹き抜けのホールには、天井横にある三角の窓から光が入ります。廊下などの床はモルタルの上に、藁を混ぜた土。初めてなのに、懐かしさとともに迎えてくれます。
テーブル
ホール:二階まで吹き抜けのホールには、天井横にある三角の窓から光が入ります
 展示室へは、靴を脱いでから上がります。これは、秋野作品の「清浄さを味わうには、見る人は裸になるのが一番だが、そうもいかないから、せめて裸足にしたい」(『新建築』1998年6月号より)という藤森氏のこだわりによるもの。靴のまま回る普通の美術館よりも、ずっとリラックスして絵を見ることができました。
 長細い第一展示室(ギャラリー)はゴザ敷きで、足がひんやり気持ちいい。作品に使われている黄土、床の籐、僅かに入る自然光が一緒になって、白い空間を淡く黄色に染めています。
 そこを抜けて入る正方形の第二展示室は、白一色。壁と床の境目が曖昧なので、不思議な感覚を覚えるはず。低めに掛けられた作品が「ま、ま、座って」と誘いかけます。天井から光が柔らかく差し込み、マケドニアから運んだという床の白大理石がそれを柔らかく反射しています。大理石のかいたような縁の部分が、またいい味わいなんですね。
第一展示室(ギャラリー)には、初期〜中期の作品を中心に比較的小さめの作品(日本画としては大きいです)が並ぶ。
第一展示室(ギャラリー)には、初期〜中期の作品を中心に比較的小さめの作品(日本画としては大きいです)が並ぶ。ほどよく柔らかい照明で、絵が見やすい。第二展示室は、大作を中心にした世界。真ん中に脳ミソをかたどったようなヘソがありました。
ほどよく柔らかい照明で、絵が見やすい。 真ん中に脳ミソをかたどったようなヘソがありました。
 最後に、玄関ホールに戻ってテラスへ。「絶景!」というほどの眺めではありませんが、縄文建築団が仕上げた手すりに寄りかかって、ぼーっとするのも一興。
 美術館には飲食のための施設がないため、お昼の見当をつけておいたほうがよいでしょう。ゆっくり見ていると半日くらいはあっという間に過ぎてしまう、本当に落ち着ける美術館でした。みなさんも、ぜひ一度訪ねてみてください。
ホールから出られるテラスは土壁に囲まれた空間
ホールから出られるテラスは土壁に囲まれた空間。夕方までいると、きっといい景色なんだろうなぁと思いました。トイレのある廊下は漆喰の白い壁で柱がなく、生き物のお腹の中にいるよう。南伸坊氏の版画によるトイレのマークがかわいらしい。
トイレのある廊下は漆喰の白い壁で柱がなく、生き物のお腹の中にいるよう。南伸坊氏の版画によるトイレのマークがかわいらしい
 
古いガラス
 
バックナンバー
  vol.14   “辺境”で生まれた前衛。
ロシア・アヴァンギャルドがやって来た。


  vol.13   印象派から少し足を伸ばして、
古典と近代が出会うコローの世界へ。


  vol.12   食・癒・楽・学…
すべてが揃った癒しのホテル


  vol.11   俳諧と、絵画。
自在の人、与謝蕪村の代表作が一堂に。


  vol.10   ちょっとした工夫で、食時間が楽しく変わる
福井県発の「おいしいキッチンプロジェクト」


  vol.9   プロフェッショナル・ユースの
本物だけが放つ愛らしさがそこに。


vol.8 畳なわる線と色彩の森。
その狭間に宿る光を堪能して


vol.7 京都駅から徒歩2分。NEW OPENの店は
言うなれば、お座敷「串揚げ」アラモード。


vol.6 懐かしくも、奇天烈。「これでもか」の材質感。
建築ごと楽しめる、秋野不矩美術館訪問記。


vol.5 青の空間の中に自然を再構築する画家・セザンヌ。
4つのジャンルから、彼が探求した美の真髄に迫る。


vol.4 エクラで映画エッセイをご執筆いただく
作家・島田雅彦さんの新刊サイン会に潜入!


vol.3   華やかな「踊り」をイメージしたフレーバー。
夏季限定発売の名作ショコラが登場です。


vol.2   きりっとしたかたちの美しさと、使ってみたくなる優しさ。
器と家具から、めくるめく漆の世界が広がります。


vol.1   ヴィンテージな名品から、近年の限定&試作モデルまで!
ネット参加も可能な「オメガマニア」オークション