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エクラのNEWSな宝石箱
このコーナーでは、エクラ編集部のスタッフが街中や日ごろの展示会で見つけた素敵なアイテム、ショップなどを半月毎にご紹介!ファッション、ビューティ、ジュエリー、インテリア、グルメetc.、各担当者の眼にご期待ください。
印象派から少し足を伸ばして、 古典と近代が出会うコローの世界へ。
 
印象派から少し足を伸ばして、 古典と近代が出会うコローの世界へ。 
 
 今回は、国立西洋美術館で開催中の「コロー 光と追憶の変奏曲」展のプレス・プレビューへお邪魔しました。画家の略歴とともに、展覧会の模様をご紹介します。

 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー(1796〜1875)は、クールベとともに近代的なリアリズムを追求し、「印象派のさきがけ」としてよく語られますが、冒涜とも言われかねないほどアカデミズムに挑戦的だったクールベに比べると、コローはより古典的で温雅なテーマを描いた画家でした。
 
「ヴェネツィア、広場と円柱」 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 1828年頃 ルーヴル美術館蔵
 
「ヴェネツィア、広場と円柱」 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 1828年以降 ルーヴル美術館蔵 (C) Photo: RMN/ René -Gabriel Ojéda/ distributed by DNPAC
 古典に学んだというのは、彼の画歴を見るだけでもよくわかります。当時、ヨーローッパの上層階級の青年は古典世界の美と文化の宝庫としてのイタリアへ赴いていましたが、コローもまた若くしてイタリアへ絵の勉強のために留学しています。
 そこで彼が残しているのは、速筆で描いた油彩によるスケッチでした。実際の風景を、そこにいながらにしてキャンバスに描きとどめる。その手法は、簡単なスケッチを元にアトリエで再構成するという古典画から歩み出たものであり、この点で印象派のさきがけということができるのでしょう。
 
パステルを細かく砕いたような穏やかな緑と青がきれい。
 
 
パステルを細かく砕いたような穏やかな緑と青がきれい。
 また、写実に頼るだけではなく、ある景色が持つ詩情という「印象」を重視したのも、コロー画の特徴です。滴るようなひわ色の草木は粉っぽいほどのふんわりとしたタッチで描かれ、全体に煙るような、靄がかかった風景画が多く見られます。誰しも覚えがある木漏れ日の心地よさ、森の中のひんやりした空気、草の中を走りぬけるそよ風。そうした身近な感覚を、古典絵画に学んだ安定した構図のなかに封じ込めたコローの作品は、アカデミックな絵画を愛好する人々からも、先進的な絵画を目指す人々からも好まれたといいます。ウフィツィ美術館の所蔵品やピカソ旧蔵の作品は、まさにその象徴。今展では、梢越しに風景を描く等、コロー独特の風景画の構図が印象派の画家たちに脈々と受け継がれたことも紹介しています。
「ヴィル=ダヴレーのカバスュ邸」 1835-40年 村内美術館
 

「ヴィル=ダヴレーのカバスュ邸」 1835-40年 村内美術館

 
 
 風景画に傑作を多く残したコローは、人物画にも秀でました。親しい人々を描いた肖像画には、画家とモデルの人間関係まで描かれているようですが、今展で注目して欲しいのは、「青い服の婦人」と「真珠の女」です。
 肖像と言えば、当時はぼちぼち写真が普及してきた時代。「真珠の女」は、コントラストを抑えた柔らかい階調が「ひょっとして当時台頭してきた写真への挑戦なのでは?」と思えるほどに、静寂を感じさせるトーンで仕上げられています。彼はしばしば民族衣装を着せた女性像を描いていますが、そのなかでも最も神秘的な作品です。
 
「真珠の女」 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 1858-68年 ルーヴル美術館蔵   「真珠の女」 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 1858-68年 ルーヴル美術館蔵
 

「真珠の女」 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 1858-68年 ルーヴル美術館蔵 (C) Photo:RMN/distributed by DNPAC

  遠くから見ると明治時代の手彩色の写真みたい?
 
「青い服の婦人」 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 1874年 ルーヴル美術館蔵
 
「青い服の婦人」 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 1874年 ルーヴル美術館蔵 (C) Photo: RMN/ Hervé Lewandowski/ distributed by DNPAC
 かたや当世風のリアリズムを追求したのが、「青い服の婦人」。美しいドレスを纏った女性美をそのままに捉え、若々しさのなかに潜む品格まで描いています。コローの画室と思しきくすんだ色の空間に目の覚めるような青が印象的な一枚です。

 モネやゴッホのような印象派の画家ほど劇的な画風の変化や革新性はないものの、格調高く、実直で親密なコローの絵画。その世界を一望できる絶好の機会を、お見逃しないよう。
バックナンバー
  vol.14   “辺境”で生まれた前衛。
ロシア・アヴァンギャルドがやって来た。


  vol.13   印象派から少し足を伸ばして、
古典と近代が出会うコローの世界へ。


  vol.12   食・癒・楽・学…
すべてが揃った癒しのホテル


  vol.11   俳諧と、絵画。
自在の人、与謝蕪村の代表作が一堂に。


  vol.10   ちょっとした工夫で、食時間が楽しく変わる
福井県発の「おいしいキッチンプロジェクト」


  vol.9   プロフェッショナル・ユースの
本物だけが放つ愛らしさがそこに。


vol.8 畳なわる線と色彩の森。
その狭間に宿る光を堪能して


vol.7 京都駅から徒歩2分。NEW OPENの店は
言うなれば、お座敷「串揚げ」アラモード。


vol.6 懐かしくも、奇天烈。「これでもか」の材質感。
建築ごと楽しめる、秋野不矩美術館訪問記。


vol.5 青の空間の中に自然を再構築する画家・セザンヌ。
4つのジャンルから、彼が探求した美の真髄に迫る。


vol.4 エクラで映画エッセイをご執筆いただく
作家・島田雅彦さんの新刊サイン会に潜入!


vol.3   華やかな「踊り」をイメージしたフレーバー。
夏季限定発売の名作ショコラが登場です。


vol.2   きりっとしたかたちの美しさと、使ってみたくなる優しさ。
器と家具から、めくるめく漆の世界が広がります。


vol.1   ヴィンテージな名品から、近年の限定&試作モデルまで!
ネット参加も可能な「オメガマニア」オークション