エクラのNEWSな宝石箱
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俳諧と、絵画。自在の人、与謝蕪村の代表作が一堂に。
『与謝蕪村ー翔けめぐる創意ー』展
 本誌が美術館特集ならば、宝石箱も負けずに美術館の情報を。 現在、滋賀県のMIHO MUSEUMで開催中の『与謝蕪村ー翔けめぐる創意ー』展。史上初といってよい規模で繰り広げられる、蕪村の大回顧展の模様をご紹介します。
「学問は」自画賛
 
「学問は」自画賛 (5/27〜6/8展示)
「学問は尻からぬけるほたるかな」という句とともに、書物を脇に居眠りする男の姿が。男は蕪村本人かも? 蛍は、「蛍雪の功」を踏まえての表現。
 
 与謝蕪村(1716〜1783)というと、「春の海ひねもすのたりのたり哉」や「菜の花や月は東に日は西に」などの句で知られる江戸時代の俳諧の巨匠。そんな彼が絵も描いていた、というのはご存知でしょうか。しかも、俳句と絵を組み合わせた「俳画」だけでなく、彼は中国的な美を目指した文人画まで手がけていました。詩的世界も、絵画世界も自由に横断してしまう蕪村。その創造の幅の広さを紹介するのが、今展のキモになっています。
 俳句で言えば、蕪村が俳句を学んだのは、芭蕉が亡くなって半世紀近く経とうとしていた頃。俳諧の芸術性が低下してきた中で、蕪村は芭蕉に私淑し、「芭蕉に帰れ」と俳壇革新にも尽力しました。芭蕉の足跡を描いた「奥の細道図」を屏風仕立て、巻子仕立ての両方で手がけており、俳諧師として、俳句を作る心構えや句会のきまりなどを記した「取句法」といった専門的なものから、自作の俳句に絵をつけた洒脱な俳画を数多く残しました。


 俳画のほかに、彼は絵師として文人画も描いています。文人画とは、中国で明から清の時代にかけて発展した、職業画家ではない知識人が自身の楽しみのために描いた絵。つまり、上手さよりも、アマチュア精神に価値を見出すタイプの絵画です。柔らかいタッチの点描や短い線を重ねるように描かれることが多く、狩野派のようなかっちりした輪郭線による絵画と異なり、もわっとした情感が特徴的。いかにも趣味人らしい、のどかな空気をたたえています。
放下鉾下水引   軸や色紙だけでなく、屏風も多数出品されている。初期の作品と晩年の作品ではタッチも違って興味深い。
 

放下鉾下水引 (通期展示)
祇園祭の放下鉾の山車の下部にかける水引で、下絵は蕪村によるもの。豪華な刺繍で、琴棋書画と山水といった中国的モチーフを4面にわけて描く。

  軸や色紙だけでなく、屏風も多数出品されている。初期の作品と晩年の作品ではタッチも違って興味深い。
 
 
 日本の画家たちはそんな画風を取り入れつつ、自ら咀嚼して和様化させていきました。蕪村もそのうちの一人であり、俳人らしく、日本的な情景や季節感まで含めた時間の移ろいを描き出しています。『夜色楼台図』や『富嶽列松図』はその典型例といえるでしょう。『夜色楼台図』は京都東山の実景がイメージソースとなっていると考えられますが、この絵の部分を夜の青で切り取れば、東山魁夷の『年暮る』(山種美術館蔵)の世界に通じていくよう。蕪村は、雪や雨による自然の表情、わずかな光が演出する夜景の美しさを、感覚的に掴んでいます。
 
夜色楼台図 重文
 
夜色楼台図 重文 (4/29〜5/6、6/3〜6/8展示)
横長の画面下に沈む町並みを、深々とした冬の夜気が覆う。家々の灯りに差した代赭が、自然とともに暮らす人々の存在を温かく伝えている。
 
富嶽列松図 重文 愛知県美術館
 
富嶽列松図 重文 愛知県美術館(木村定三コレクション) 
(5/13〜5/25、5/27〜6/8展示)
塗り残しによる富士図。これも雪景色か、あるいは月夜の景色か。トリミングされて上部分だけが現れた松の群れは、霊山を礼賛する人のよう。
 
 一方で、彼が純然たる中国的世界に挑んだ作品もあります。それが、本邦初公開となる、銀地の六曲一双の『山水図屏風』。絵のクオリティも保存状態も驚くほどよく、よくぞこんなものが今まで残っていたものだと思わされます。画面を見てみると、俳画に見られるような軽妙な線ではなく、一筆一筆が熱っぽい。蕪村の造形への厳しさが伝わってくるようです。丸っこい山並みにも膨張するような勢いが感じられ、亡くなる前年の作とは思えないほどの充実ぶり。その迫力をぜひ会場で体感してみてください。
 蕪村の創意の全貌を紹介する、壮大な展覧会。いままで持っていた蕪村のイメージを塗り替えるような体験が、そこに待っています。
 
山水図屏風 右隻
 
山水図屏風 右隻 (通期展示)
 
山水図屏風 左隻
 
山水図屏風 左隻 (通期展示)
クールな印象の銀地に文人画という発想がユニークな、新発見の屏風。雄渾でリズミカルな筆運びが生んだ景観には生命力が満ちている。
 
『山水図屏風』の解説をされる辻館長。
 
『山水図屏風』の解説をされる辻館長。数年前にこの屏風を実見したことが、蕪村単独の展覧会を開くきっかけになったそう。
 
※ かなりの作品を網羅しているため、展示替えがあります。
こちらであらかじめ展示期間を確認しておくことをおすすめします。
http://miho.jp/japanese/collect/archives/2008/yosalist.htm
バックナンバー
  vol.11   俳諧と、絵画。
自在の人、与謝蕪村の代表作が一堂に。


  vol.10   ちょっとした工夫で、食時間が楽しく変わる
福井県発の「おいしいキッチンプロジェクト」


  vol.9   プロフェッショナル・ユースの
本物だけが放つ愛らしさがそこに。


vol.8 畳なわる線と色彩の森。
その狭間に宿る光を堪能して


vol.7 京都駅から徒歩2分。NEW OPENの店は
言うなれば、お座敷「串揚げ」アラモード。


vol.6 懐かしくも、奇天烈。「これでもか」の材質感。
建築ごと楽しめる、秋野不矩美術館訪問記。


vol.5 青の空間の中に自然を再構築する画家・セザンヌ。
4つのジャンルから、彼が探求した美の真髄に迫る。


vol.4 エクラで映画エッセイをご執筆いただく
作家・島田雅彦さんの新刊サイン会に潜入!


vol.3   華やかな「踊り」をイメージしたフレーバー。
夏季限定発売の名作ショコラが登場です。


vol.2   きりっとしたかたちの美しさと、使ってみたくなる優しさ。
器と家具から、めくるめく漆の世界が広がります。


vol.1   ヴィンテージな名品から、近年の限定&試作モデルまで!
ネット参加も可能な「オメガマニア」オークション


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