



とっても個人的な話ですが、バーバラは、ウィリアム・モリスという名前が好きです。特に特徴のない姓と名の組み合わせだけれど、ちょうどいい長さで、落ち着いた音が集まっていて。破裂音がやかましいバーバラには羨ましい限りなのです。
さて、そんなモリスが先導したアーツ・アンド・クラフツ運動とは、平たく言えば産業革命を経て衰退の一途を辿った手工芸の復権を目指したもの。ヴィクトリア朝の時代にはすでに大量生産された工業製品が流布し、民衆レベルまで広くこれを享受します。しかし、それはあくまでも“安かろう悪かろう”な品々。結果的には、質が低く、美しくない製品が世の中にはびこることとなり、また、機械の普及によって職人はただの労働力とみなされることとなります。手工芸復興への思いと、生活と芸術とを結びつけるモリスの思想は、こうした状況からの大きな揺り戻しとして形づくられたわけです。
彼の思想の背景には、まず中世がありました。職人たちがいきいきと自らの仕事をこなし、そこで生まれた質の高い製品がそれを享受する人の生活に美と潤いを与える。このサイクルを当時のイギリスでも実現できないものか、というのが、モリスが生涯にわたって取り組むべき課題でありました。
モリス商会のテキスタイルや家具などのイメージ展示。額に入っているのは、シルクでポピーを刺繍したリネン。 Crab Tree Farm,Illinois
『受胎告知』(部分) ウィリアム・モリス 1862年 セピア・鉛筆 William Morris Gallery
線が生々しいステンドグラスの下絵。悩める美少女風のマリア様は、神格化されていない分、リアルと言えばリアル。

『果物(または柘榴)』(部分) ウィリアム・モリス 1866年 木版・色刷り Haslam and Whiteway Ltd.
地と同系色で植物文が刷られていたり、よく見ると様々な果物の折枝のリピートだったりと芸が細かい。

『むぎなでしこ』(部分) ウィリアム・モリス 1883年 木版刷り・木綿 Crab Tree Farm,Illinois
内装用のファブリックとして作られたもの。シンプルな手の込み方ではなく、壮麗な印象のある文様構成。
『主の賛歌』 ハーバート・パーシー・ホーン 1884年頃 木版刷り・綿ベルベット William Morris Gallery
ユーモラスなポーズでトランペットを吹く天使の繰り返しが面白い。茨の朱が画面に落ち着きを与えている。
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『ぶどうの木』 リンジー・フィリップ・バターフィールド 1896年頃 プリント・シルク Crab Tree Farm,Illinois |
アーツ・アンド・クラフツの金工作品。モダンな造形だが金属の板を延ばして作られていることが伝わってくるところに、手仕事を感じる。デザインを手がけたチャールズ・フランシス・アンズリー・ヴォイジーは建築家。 Crab Tree Farm,Illinois |
『ペルシャ風の壺と花』 ウィリアム・ド・モーガン 1890年頃 タイル・パネル The De Morgan Foundation |

『ベッドルームの椅子』 チャールズ・レニー・マッキントッシュ 1902年頃 オーク材黒檀風仕上げ Crab Tree Farm,Illinois
岡本太郎より半世紀は早い、“座ることを拒否する椅子”。耐人強度不十分らしいが、芸術品としては一級品。
また、アメリカでのアーツ・アンド・クラフツの展開として、工芸による女性の職業進出といった社会的なイデオロギーと結びついたところも特筆すべき点です。多くの女性がとりわけ陶芸の分野に進出していったため、作品は繊細な仕上がりのものが中心。板谷波山の作品に似たものもあって、バーバラはしばし陶然としてしまいました。
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『卓上ランプ』 グスタフ・スティックリー 1902年 オーク材・銅・スラグガラス Crab Tree Farm,Illinois |
『D.マーティン家のドア』 フランク・ロイド・ライト 1904年頃 鉛ガラス・釉薬 Private Collection |
『壺』ジョージ・プレンティス・ケンドリック 1900年頃 彩色陶器 Crab Tree Farm,Illinois |
さて、こうした生活工芸の展覧会を見ると、ちょっと自分の暮らしに取り入れてみたくなるもの。ミュージアムショップでは、モリスの意匠をプリントしたハンカチが人気だとか。バーバラは、当時の裂を集めて仕服ができないものかと思案してみました。トランペットを吹く天使の布が欲しいけれど、高いのかな……。
『アーツ・アンド・クラフツ
<イギリス・アメリカ>』
パナソニック電工 汐留ミュージアム
会期:〜’09年1月18日(日)
開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
休館日:月曜(ただし1月12日は開館)、12/27〜1/5
観覧料/当日一般:500円
所在地:東京都港区東新橋1-5-1
パナソニック電工本社ビル4階
問い合わせ先:03-5777-8600(ハローダイヤル)
http://panasonic-denko.co.jp/corp/museum/
展覧会オリジナルのハンカチ(1枚1,200円)。きれいに洗った手を、美しいハンカチで拭く。これこそ生活工芸の極み?















